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サブスク音楽配信が若者に人気、CDとは様変わりの便利さ・手軽さとは

2019年10月22日 06時00分更新

文● 松嶋千春(ダイヤモンド・オンライン

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Apple Music、LINE MUSIC、Spotifyなど、月額定額制の音楽配信サービスが日本に登場して10年足らず。音源を手に入れるためにCDショップに足しげく通っていた時代と、すべてスマートフォンで完結してしまう今とでは、音楽の楽しみ方はだいぶ様変わりした。カセット、CD、MD、MP3プレーヤー、iPodを駆け抜けて現在のサブスクに至るまで、今昔プレイリストの変化を振り返ってみよう。(清談社 松嶋千春)

音楽は“所有”するものから
“共有”するものへ

スマホで音楽を聞く女性
昨年から、椎名林檎やミスチル、宇多田ヒカル、ユーミンなど、大物アーティストも次々とサブスク解禁となっている Photo:PIXTA

 CDをレンタルし、カセットやMDに移す時代を経て、iTunesでプレイリストをつくり、iPodに移して持ち運ぶ時代へ。さらにスマートフォンへ機種変更し、月額定額制(サブスクリプション、以下サブスク)の音楽ストリーミングサービスに加入する時代に――。この20~30年間で音楽を視聴するツール、とりわけ持ち運ぶためのツールは目まぐるしく変化してきた。

 Spotifyの音楽プレイリスト共有プラットフォーム「DIGLE(ディグル)」を提供する株式会社CotoLab.(コトラボ)代表の西村謙大さんも、そのような音楽体験をしてきた世代のひとりだ。ツールとともに、音楽の聴かれ方はどう変わってきたのだろうか。

「従来はカセット、CD、MDなど、音楽をモノとして所有していました。MP3プレーヤーが登場してからも、1曲数百円でダウンロードしたり、CDをレンタルしたり買ったりして音源を入れる必要があったので、まだまだ自分のコレクションの範囲内で音楽を聴く側面が強かった。好きなアーティストや曲はじっくり聴くけれど、それ以外のアーティストや楽曲に触れる機会は少なかったと思います」(西村さん、以下同)

 サブスクのストリーミングサービスの登場によって聴ける楽曲の数も幅も広がり、新しい楽曲や興味のなかった音楽に触れる機会が従来よりも圧倒的に増えたという。

「サブスクでひとつ特徴的なのは、プレイリストの文化じゃないでしょうか。カセットやMDだと1回曲を入れると並び替えが難しかったけれど、サブスクなら曲の入れ替えをすぐにできるし、新しい曲が出たらどんどん追加もできる。このように自由度が上がったことによって、発信もしやすくなり、プレイリストを通じて色んな文脈で音楽を届けられるようになったのかなと思います」

20代後半~30代前半が
音楽に課金するコアゾーン

 ICT総研が2019年5月に発表した「2019年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査」によると、2018年におけるCDなどのオーディオレコード市場が1576億円で前年比9%の減少であったのに対し、音楽配信市場は645億円で前年比13%増。定額制音楽配信サービスの利用者数は、無料・有料を合わせると1980万人に上る。その一方で、同社のウェブアンケート調査では定額制音楽配信サービスの利用率は27%弱という数字が出た。

「そもそも、音楽自体が若年層のコミュニケーションのなかにあるものなので、中高年への普及状況はまだまだといったところ。現状、音楽を聴く習慣があり、かつ課金する経済的余裕もある20代後半から30代前半がサブスクユーザーのコアゾーンというイメージです。もっと若い年代は、違法なものを含め無料プランで聴いているケースが多いのではないでしょうか」

 音楽配信をメインに据えるサービスのなかで、国内利用者数が多いのはApple Music、LINE MUSIC、Spotifyだ。西村さんは、それぞれのサービスの特徴を次のように分析する。

・Apple Music:iPhoneユーザーが日本では圧倒的に多いため、iTunes(ダウンロードサイト)からの流れで「好きなコンテンツを所有する」感覚が強い。ほかのサービスと比べて年齢層が幅広い。

・LINE MUSIC:10~20代の若年層が中心で、学生向けの安価なプランがある。LINEのプロフィール欄にBGMを載せたり、トーク画面で音楽をシェアすることもでき、若者のコミュニケーションに溶け込んでいる。

・Spotify:世界最大の音楽ストリーミングサービスで、無料プランあり。国内のメインのユーザー層は30歳前後で音楽好きな人が多く、新しい楽曲や通なインディーズ楽曲などを、プレイリストを通じて共有する文化が色濃い。

「このほかにも、プレイリストに注力したAWAや、楽曲のMVを広告なしでシームレスに視聴できるYouTube Musicにも注目が集まっています。後者は、B’zや米津玄師などのサブスク解禁されていないアーティストの楽曲も聴けますし、動画を切って音だけを流すこともできる使い勝手の良さが受けています」

テレビ番組の影響はいまだ健在
ネット番組も追い上げる

「うたばん」(TBS系)や「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」(フジテレビ系)などのゴールデンタイムの歌番組が続々と終了し、音楽の情報源としてのテレビの役割は終わったかに見える。しかし、インターネット等の情報網が発達した今でも、マスメディアの影響は大きいそうだ。

「うちのサイトでも、『Music Station』(テレビ朝日系)に出演した後にアーティストのプレイリストや記事へのアクセスが如実に伸びます。歌番組をリアルタイムで視聴しなくても、SNS等でアーティストや楽曲の情報が拡散されて、『この曲聴いてみよう』という後押しになっています。たとえば好きな媒体や憧れの芸能人、YouTubeの関連動画などを通じて、直接的に検索せずとも音楽の情報が入ってくるようになりました」

 西村さんが最近注目しているのは、映像配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」関連のプレイリスト。恋愛バラエティー番組「テラスハウス」や、山田孝之主演ドラマ「全裸監督」のプレイリストがおもしろいという。

「『テラスハウス』ではキュレーターが厳選した最新インディーズシーンの楽曲が多く流れ、『全裸監督』はとがった洋楽から80年代の邦楽まで幅広く採用しています。以前はオリジナル・サウンドトラックのようにパッケージ化されていないと探しだすのは大変でしたが、番組を見ていて『あ、この曲いいな』と思ったらプレイリストですぐに聴くことができるので取りこぼしもなく、新しい音楽と出合うきっかけになっていますね」

決め打ちのコンテンツ消費から
気分で聴くコンテキスト消費へ

 昨年から、椎名林檎、ミスチル、宇多田ヒカル、ユーミンなどの大物アーティストが続々とサブスク解禁となり、直近では、8月30日より星野源の全楽曲が配信開始された。これまで「CDが売れなくなる」という懸念があったが、あいみょんなどのサブスクをメインマーケットとしたアーティストがブレイクしたことで認知が変わり、解禁への動きが加速した。

「ミスチルが解禁したときには、幅広い年齢層から反響がありました。ある程度年齢を重ねると、手元に音源がなくても『あの頃』の曲を聴きたくなるときがあるじゃないですか。職場の人とカラオケに行く際にも、各年代の楽曲を勉強するのにサブスクが役に立ちます。当時の現役世代も、今の若い人も、時代を超えて昔の名曲を聴けるようになりました」

 世界中の楽曲へのアクセスが可能になったことで、多種多様なプレイリストが登場。それに伴い、この曲・アーティストが好きだから聴く「コンテンツ消費」だけでなく、特定のテーマやバックグラウンドを持ったプレイリストを聴く「コンテキスト消費」が増えていると西村さんは指摘する。

「ランニングや筋トレで気分を上げるプレイリスト、仕事がはかどるプレイリストなど、場面によって自分の心を音楽でコントロールするような目的を持った聴き方が充実してきました。スマートスピーカーとも連動し、シーンを演出したり心地良くするために、曲そのものにとらわれない使われ方も進んでいます」

 落語や英語学習音源など、音楽以外のコンテンツにまで広がりを見せるサブスク。選ぶのに疲れたら、人のおすすめに頼るのもいい。懐かしい音楽も最新曲もミックスして、「あの頃」からアップデートした「今」の気分にぴったりなプレイリストを自由に楽しめる時代が来ているのだ。

〈関連リンク〉
プレイリスト&カルチャーメディア DIGLE MAGAZINE


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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