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五輪マラソン札幌移転の議論から外された小池知事に共感が集まらない理由

2019年10月19日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

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小池知事が“暑さ対策”として今年5月に打ち出した「頭に被る日傘」。自分で被っていれば、都民の反応も違っていたかもしれない 写真:朝日新聞社/時事

私が最後に知らされた――。東京都の小池百合子知事は、東京オリンピック・パラリンピックのマラソンと競歩の会場を札幌にする国際五輪委員会(IOC)の方針変更について怒りが収まらない様子だ。しかし、かつて小池知事はIOCのバッハ会長との親密ぶりを強調していた。独特の“暑さ対策”で果たして準備は十分だったのか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

暑さで選手の棄権が続出した
ドーハの世界陸上がIOC方針転換の引き金

 頭にかぶる日傘――。今年5月、東京都の小池百合子知事が東京オリンピック・パラリンピックの「暑さ対策」の一環として打ち出したものだ。その“斬新”なデザインに、インターネット上で盛り上がったのは記憶に新しい。

 他にも、懸案事項である暑さ対策について小池知事はこれまで、「街路樹を刈り込まないとか、カチ割り氷を首に巻くとか、アナログなことが実は最も効果がある」などと主張してきた。小池知事は本心から、これらの対策が猛暑の東京で効果を発揮すると信じていたのだろうか。

 五輪の目玉種目である男女のマラソンと競歩の開催地を東京から札幌に移すと、国際五輪委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が10月16日に唐突に明らかにした。これに対して小池知事は、「私は最後に知らされた」と怒りが収まらない様子だ。

 10月18日の定例記者会見では、小池知事は自身がIOCの方針を知らされた詳細を説明した。それによれば、15日に五輪組織委員会の武藤敏郎事務総長が小池知事の下を訪れ、IOCが方針変更を決めた経緯を説明。9~10月にカタールのドーハで開催された世界陸上で、暑さにより多数の選手が棄権したことがIOCの方針転換の引き金になったという。そして、札幌開催の方針は小池氏に知らされる前の週に、組織委会長の森喜朗元首相や橋本聖子五輪担当大臣、そして北海道側の関係者や「特定の都議会議員」(小池知事)にも知らされていた。

 小池知事は18日の会見で、「ホストシティ(の知事が知らされるの)が最後というのは、都民にとってどうなのか」「組織委や国、自治体や商店街まで暑さ対策に走り回ってきた」「選手やチケット当選者はどうなるのか」などとまくし立てた。

 東京での競技を心待ちにしている選手や、予定されていたマラソンコースの周辺住民、チケット当選者が残念な思いをするのは至極当然で、理解できる。ただ、小池知事自身が選手や都民などと同じ立場で怒りを表明することについて、共感を得られるとは考えづらい。

 なぜ自身がIOCの意向を最後に知らされることになったのか。小池知事は過去の言動を今一度冷静に振り返るべきではないか。

「バッハ会長と手紙や電話でやり取り」
親密ぶりをアピールしていたはずが…

 16年、都知事選で大勝した直後の小池知事は、ボート競技の宮城県への移転など五輪会場の計画見直しを唐突にぶち上げた。同年10月には、バッハ会長と“トップ会談”し、多数の報道陣がひしめき合う中、流暢な英語を駆使して丁々発止でやり合う様を国内外に見せつけた。

 その後も記者会見で、「バッハ会長からお手紙をいただき、また私自身も会長と電話でお話をした」などと述べ、個人的な関係を築いているかのように強調。小池知事の見直し案は結局頓挫したが、その後の記者会見で、「(出張中の)パリでバッハ会長とお会いしている」と述べるなど“親密ぶり”を強調してきた。

 緊密に連携を取り合う関係性が本当にできていれば、今回の会場変更という重要な連絡が後回しにされることはないはずだ。

 そしてこの間、小池氏が披露してきた“暑さ対策”は、マラソンコース予定地のアスファルトの遮熱性舗装やミスト噴霧の他、冒頭の「頭にかぶる日傘」や「カチ割り氷」だった。しかし、東京の猛暑を経験している都民にすれば、いくら特殊なトレーニングを積んだ選手だとしても、これらの暑さ対策が有効かどうかは容易に想像がつく。

 小池知事は18日の会見で、「アスリートファーストは重要」と繰り返した。ただ会見での発言の大半は、自身への連絡が最後だったことへの不満や、「これまで暑さ対策にはIOCのメディカルコミッティーの助言を受けてきた」など、IOCや組織委を手続き論で難詰することに費やされた。

「北方領土」発言でロシア大使館が反発
札幌開催は既成事実化する公算が大きい

 加えて問題なのは、17日の連合東京の定期大会の挨拶で、「どうせなら(マラソンと競歩を)北方領土でやればいい」などと放言したことだ。

 さすがにこの発言に対しては、在日ロシア大使館がフェイスブックで、「日本国内には寒冷な気候の土地がたくさんあるのは知っていますが、南クリル諸島(ロシア側の北方領土の呼称)はその中には含まれません。スポーツは統合ためのものであり、敵対な発言の話題であってはならないのです(編集部注:原文ママ)」などと批判した。小池知事の主張の是非はともかく、無用の反発を引き起こしたという点で、国会議員時代に安全保障をライフワークとしてきた小池知事とは思えない発言である。

 札幌でのマラソンと競歩の開催については、「すでに電通が準備に向けて動いている」(組織委関係者)。組織委の森会長が容認しており、小池知事以外に大きな反発もないことから、このまま既成事実化していく可能性が高い。

 五輪の本番まで10ヵ月程度しか残されていないが、他にもトライアスロン会場である東京・お台場の海水の汚水や大腸菌の問題をはじめ、今後も課題が噴出する可能性は高い。都だけでなく組織委の機能不全ぶりを指摘する声もある。

 だが、まずは開催都市のトップが冷静に自身の言動を顧みて、大会成功に集中することを大多数の国民が望んでいるはずだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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