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ソニーが6年ぶり出展のCEATECで「医療事業」をアピールした理由

2019年10月17日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,土本匡孝(ダイヤモンド・オンライン

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ソニーの医療事業を説明するメディカルビジネスグループの大高謙司グループ長(左端) Photo by Masataka Tsuchimoto

自動運転など、各社が華やかな技術を披露した国内最大級の家電・IT(情報技術)の見本市「CEATEC(シーテック、15~18日)」。ソニーが6年ぶりの出展でアピールしたのは、ソニーの中ではマイナーな医療事業だった。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

医療の世界でも感動を巻き起こす

 今年のCEATEC(シーテック)の開催テーマは「つながる社会、共創する未来」。ソニーは6年ぶりの出展、さらに内容が医療事業だった理由について、「テーマがマッチし、チャンスを頂けた」(勝本徹執行役専務)と殊勝なコメントを出したが、ゲーム、音楽、映画、カメラなどに押されて普段目立たない医療事業を効果的にアピールしたい“下心”もあったに違いない。

 メディカルビジネスグループの大高謙司グループ長は15日、ブース前に集まった報道陣を前に、「全ての医療技術を展示するのはソニーとして初めて。我々の技術を使って医療の世界でも大きな感動を巻き起こせれば」と、胸を張った。

 強調したのは、医療事業におけるソニーの要素技術の活用だ。

 具体的にはイメージセンシング技術、3D技術、色域拡大技術、伝送技術、光学解析技術などを医療事業でも活用。世界最多44色以上の超多色細胞解析ができる新製品などが展示された。

 ソニーが医療事業へ本格的に参入したのは、社内にメディカルビジネスグループが誕生した2012年。前後するが10年にライフサイエンス分野の米ベンチャー、アイサイトを買収。13年には消化器内視鏡で世界1位のオリンパスと共同出資会社「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ(SOMED)」(資本構成ソニー51%、オリンパス49%)を設立し、外科手術用内視鏡システム、手術用顕微鏡システムを上市した。

 ソニーの医療事業は現在、メディカルイメージング領域とライフサイエンス領域の2本柱。前者の売上高の半分ほどが医療機器(海外のみ承認の物を含む)。後者は製薬会社などの研究開発現場で使われる機器を展開し、こちらも将来は臨床の現場で使われる医療機器に化けていく可能性を秘める。

 ソニーが本格参入当初に宣言していた「医療事業で20年に2000億円」という売上高目標は、17年に撤回した。大高グループ長は「読みが正直甘かった」と振り返り、「(ソニーが得意とする)エンターテインメント分野とは違い、医療は現場の切実なアンメットニーズに対応する製品を作らないといけない。製造プロセスに時間がかかった」と解説する。

 ソニーが再設定した目標は非公表だが、18年度に医療事業が初めて黒字に転換するなど、順調に成長しているという。

世界を見れば激動の医療機器業界

 世界の大手医療機器メーカーは、この10年ほどで業界再編が一気に進んでいる。

 UBS証券の小池幸弘アナリストによると、合併の事業シナジーがほとんどないことが特徴で、それでも再編が進む背景には、世界最大市場である米国で販路に変化が起きていることにある。

 これまでの商談は主にメーカーと病院が個別に行っていたが、病院側が連合体を組むことが増えて、価格交渉などがシビアに。メーカー側は合併による製品の品ぞろえで、「デパートメントショップ化」を図り、対抗しているという。

 業界再編の流れに、現在国内大手のオリンパス、テルモ、HOYA、キヤノンなどが呑まれる可能性はどうか。

 小池アナリストは「5年ぐらいはないのでは。言い換えれば5年ぐらいしか猶予はない」とみる。国内勢はニッチな領域、あるいは診断系に強いため、欧米勢と比べて安定した売上高成長をしてきたが、「ハードだけでは技術革新の余地はそれほど残されておらず、ソフトを含めた複合的な提案力がますます重要となる」と小池アナリストは指摘する。

 国内大手医療機器メーカーと比べ、医療事業への本格参入から日が浅いソニーは、「10年後を見込んだ仕込み中」(吉田憲一郎社長兼CEO〈最高経営責任者〉)。だが首尾よく成長して国内大手の一角と位置付けられたとしても、その頃には業界再編の波が国内にも押し寄せている恐れがある。

 ソニー関係者は、「医療事業に活用されている要素技術はソニー本体と不可分なので売却は考えにくい」と言う。むしろ、ソニーの医療事業が他社を呑みこんでいく可能性を示唆する。

 ゲーム、音楽、半導体など、好調な事業が生み出す潤沢なキャッシュフローがソニーにはある。5年後の国内医療機器業界で、ソニーが台風の目になっているかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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