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セブン&アイに逆風、過去最高益でも先行きは決して明るくない理由

2019年10月17日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

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セブン-イレブン
Photo:Diamond

過去最高益を更新しながら、これほど苦渋に満ちた決算発表があっただろうか。セブン&アイ・ホールディングス(HD)の2020年2月期中間決算。イトーヨーカ堂とそごう・西武で大胆なリストラ策を示したが、国内最大手のコンビニ事業でも苦難は続く。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

セブン&アイ・HDの決算は過去最高益を更新したが、井阪隆一社長の表情はさえなかった
セブン&アイ・HDの決算は過去最高益を更新したが、井阪隆一社長の表情はさえなかった Photo by Satoru Okada

「まず、イトーヨーカ堂についてであります」──。24時間営業を巡る加盟店との対立や、独自のキャッシュレスサービス「セブンペイ」の失敗など、逆風がやまないセブン&アイ・HD。10 月10日の2020年2月期中間決算会見の冒頭で井阪隆一社長が触れたのは、傘下で国内コンビニエンスストア業界の王者セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)ではなく、祖業でありながら不採算に苦しむイトーヨーカ堂のリストラ策だった。

 セブン&アイ・HDの連結業績は好調だった。営業収益は前年同期比0.9%減の3兆3132億円と減収ながらも、営業利益は2051億円、純利益は1106億円と過去最高を更新した。

 それでも、ヨーカ堂について全社員の2割に当たる1700人を削減する方針を語る井阪社長の表情はさえなかった。

 井阪氏がHD社長就任後の16年10月に中期経営計画「100日プラン」を公表して以降、182あったヨーカ堂の店舗数は158に減った。ところが、販管費、とりわけ人件費の削減はほとんど進んでいない。

 ヨーカ堂創業者の伊藤雅俊HD名誉会長は、最近も業界団体の会合に車椅子に乗って顔を出すなど健在であり、次男の伊藤順朗氏もHDナンバー3の取締役常務執行役員経営推進本部長の座にあるなど存在感を示す。こうした創業家の威光に加え、ヨーカ堂の労働組合が従来、リストラに強硬に反対してきた経緯があるのだ。

 井阪社長は1700人の削減について、「雇用の“移転”を考えている。食品専門店などの成長戦略に加わってもらう」と一定の配慮を見せつつ、「転身支援制度を活用していただく」とも述べ、退職を促す可能性を示唆した。

 長年の課題にようやくメスを入れる姿勢を鮮明にしたわけだが、1700人の削減効果について、説明資料に具体的な金額の記載はなかった。井阪社長は「労使協議はこれからなので」と言及を避けている。方針通りにリストラが進む保証はなく、その効果も見通せない。

 ヨーカ堂とは対照的に、不採算である百貨店のそごう・西武については社員1300人を削減し、86億円のコストを圧縮すると明快に数字を挙げて説明した。

 さらに西武百貨店の岡崎(愛知県岡崎市)、大津(大津市)、そごうの西神(神戸市)、徳島(徳島市)、川口(埼玉県川口市)の5店を閉店。西武の秋田(秋田市)、福井(福井市)の2店の店舗面積を縮小することも併せて発表した。

 百貨店はヨーカ堂と異なり、これまで希望退職や、地方や郊外の店舗の閉店、譲渡により、人件費や地代家賃を含む販管費を減らしてきた。

 問題は、それでも業績が改善しないことだ。

 19年2月期は通期で32億円の営業利益を確保したものの、20年2月期第1四半期(19年3~5月)は3億7000万円、第2四半期累計(同3~8月)では10億7800万円の営業赤字に陥っているのだ。

 百貨店の主力である衣料品は粗利率が一年を通じて一定である上、秋冬はクリスマス商戦や初売りで販管費がかさむため、「春夏で赤字を出せば、9月以降の利益の回復は難しい」(アパレル業界関係者)とみられている。

 10日の決算発表では、そごう・西武の通期の営業利益予想について、前期を上回る42億円のまま据え置いているが、足元の状況を見れば厳しいだろう。

セブン加盟店には100億円“支援”も
これで済むかは不明

 一方、主力のSEJは、客足が伸びず既存店売上高が前年を下回るなどしたため、加盟店からのロイヤルティー収入に当たる営業総収入は微増。広告宣伝費など販管費を抑えることで営業利益を確保した。米国でのコンビニ事業は増収増益だった。

 ただ稼ぎ頭のSEJに、来期以降の減益要因が発表された。加盟店の負担を軽減すべきとの世論や政府の意向を意識したのであろう、加盟店が本部に支払うロイヤルティーの一部軽減を含む新たな制度を提示したのだ。

 24時間営業をしていて売り上げが少なく、1ヵ月当たりの粗利益が550万円以下の加盟店は、従来の24時間営業をしている加盟店向けのロイヤルティー料率2%減額などに代えて、ロイヤルティーを月20万円減額するという。対象となるのは全国で7000店程度。適用開始は20年3月からで、本部の負担は通年で100億円増加する見通しだ。

 これを補うため、年内に約1000店の不採算店舗の閉鎖や移転に着手するほか、人員の見直しなど本部コストの削減にも取り組むとしている。

 ただし人件費が高騰し続ける状況を考えれば、今後さらなる加盟店支援が求められる可能性がある。小売業界では異例の高収益を維持してきたセブン&アイ・HDだが、その先行きは決して明るくない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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