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口コミ低評価をつけたら名誉毀損!?ネット書き込みのNGラインとは

2019年10月15日 06時00分更新

文● 岡田光雄(ダイヤモンド・オンライン

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「食べログ」「価格.com」「アットコスメ」「アマゾン」「Googleマップ」等々。口コミ投稿サービスは乱立状態にあり、商品・サービス購入時には参考にしているという人も多いだろう。しかし、こうした口コミサイトでは、低評価をつけることで店や企業から法的措置を取られるリスクもあるようだ。ネガティブな口コミは名誉毀損に当たるのか、新都心法律事務所の野島梨恵弁護士に話を聞いた。(清談社 岡田光雄)

意味不明な通知書で
相手がビビるとでも思ったか

口コミのイメージ
口コミで辛口評価をつけることは問題ないが、匿名をいいことに侮辱するような言葉遣いをすればリスクがある Photo:PIXTA

 もし、口コミサイトに「☆」1つの低評価をつけただけの理由で、弁護士を通じて内容証明が届いたら、皆さんならどうするだろう。

 今年7月、ランジェリーブランド「feast」などを手がけるデザイナーのハヤカワ五味さんが、Googleマップで自身が通う歯医者に低評価の口コミを投稿したところ、その5日後、ハヤカワさんは歯医者から弁護士を通じて内容証明を送りつけられ、削除を要請されたことが明るみに出た。

 ハヤカワさんが歯医者に低評価をつけた理由は、かぶせ物の下に虫歯があるなどと言われ約17万円も支払った上、その後も高額な自費治療を執拗に勧められたからだという。

 歯医者側の弁護士からハヤカワさんに送られた通知書の一文には、「星1つの評価それ自体も通知人(この場合は歯医者)の社会的評価を低下させる。名誉権の侵害である」という記載もあったとされている。

「私も通知書の文面を読みましたが、星1つの評価が社会的評価を低下させ、名誉権の侵害であるというのは、正直、ちょっと無理がある言い分だと思います。それが認められてしまったら、口コミサイト自体が違法ということになってしまいますからね。おそらくは弁護士から通知書などを送れば、相手がビビってすぐ削除に応じると思ったんでしょう…」(野島弁護士、以下同)

 ハヤカワさんのようにネット上で影響力のある人物に対し、歯医者側は弁護士を通じて無理のある主張を展開したことが災いし、これだけの大事になってしまったようである。

名誉毀損の要件は3つ
ただし公益目的ならOK

 野島弁護士によれば、自店のネガティブな口コミの削除依頼や法的措置などの相談で、弁護士事務所を訪ねてくる店主は意外に多いという。

「5ちゃんねるなどにネガティブな情報を書き込まれても、サイト運営側は書き込んだ人の情報を開示することには否定的です。警察もなかなか動いてくれないため、相談に来る方は多いです。ただ、話を聞いてみると、それらの口コミは名誉毀損に該当しないケースがほとんど。なので、そういう場合は『ちゃんと仕事していれば良い口コミも増えると思いますから、地道に待つのが一番です』とご回答することが多いですね」

 では、そもそも名誉毀損はどんな要件で成立するのだろうか。

「名誉毀損は『公然と』『事実を摘示し』『名誉を毀損する』の3つがそろって初めて成立します。ただし、たとえこの3つが満たされても、公益目的の書き込みであり、かつその書き込みが真実である場合には、名誉毀損には当たりません」

 名誉毀損が成立するには、不特定多数に対して発信され、事実に基づいていることが条件になる。たとえば、SNSなどで情報を発信する行為は不特定多数に向けてということになるが、「この飲食店はまずい」「この歯医者の治療費は高い」という批評は、事実というより“感想”であるため、名誉毀損には当たらない可能性が高いという。

 あるいは、これらの情報を第二の被害者を生まないための公益目的で発信しているのだとすれば、やはりそれも名誉毀損には当たらないというわけだ。

 しかも、名誉毀損による慰謝料の相場は決して高くはないという。

「名誉毀損が成立したとしても、個人に対してなら高くてもせいぜい50万円、事業絡みの案件でも100万円ぐらい。よく店舗側が『口コミのせいで売り上げが下がったので、その減少分を損害賠償請求する』などと主張するケースもありますが、立証が難しいため裁判所もなかなか認めてはくれないでしょう」

 このように、口コミを理由に名誉毀損が成立し、高額な慰謝料を取られるケースはまれだ。しかし、投稿内容によっては、書き込んだ人間の責任が問われるケースもあるという。

「アンポンタン」はアウト
匿名にもリテラシーは必須

 サイト管理者・運営者が、口コミの削除や発信者情報開示の要請に応じることが少ないのは前述の通りだが、こと「犯罪」を誘発する恐れのある文面となれば、そうもいかない。

「『お前の9歳の娘が○○小学校に通っているのは知っているぞ、気をつけろ』『殺すぞ、死ね』のような書き込みなら、割とすぐにサイト側も削除してくれる傾向にあります。ここまでくると脅迫罪が成立し、民事だけではなく刑事罰に問われる可能性も出てきますね」

 こんな事例もある。2013年、東京地裁はネット掲示板に「社長ってあのアンポンタンでしょ。自分の会社で何を作れるかも知らないしどんなレベルかも知らない」と投稿した発信者の情報開示を、サイト側に求めた。

「『アンポンタン』という言葉はただの侮辱であり、社長の社会的評価を低下させるし、公益目的の書き込みでもありません。また、おそらくは原告が社長だったということも判決に影響しているのでしょう。その投稿によって、社会に広く経営上問題のある会社という印象を与えてしまいかねませんからね」

 野島弁護士によれば、仮にこれが「せんえつながら、あの社長様は、自社で開発されている製品すらあまりご存じないようで、少々能力に疑問があります」という問題提起の投稿であったなら、判決は違った可能性もあるという。

 特定の人物を「アンポンタン」「バカ」「アホ」などと侮辱する投稿は、割に合わない結果をもたらすリスクもあるのだ。

「口コミを書くにあたっては、『うそ』と『侮辱』はいけません。匿名だからネット上で何を言ってもいいというわけではなく、倫理観やリテラシーを持つことが大切です。ただし、口コミに感想を書くのはまったく問題ありません。法曹界においても、裁判所は弁護士会に、『裁判官人事評価情報』という裁判官の口コミ回覧板を回してきて、我々弁護士が、裁判官に対して『熱心にやってくれている』『全然やる気がない』などを評価しているぐらいですからね」

 特段に害意のない感想や☆1つつけるぐらいであれば、法的措置を取られる可能性は低い。ただし、匿名での書き込みには“悪ノリ”や“憂さ晴らし”のような投稿もしばしば見られる。自分を律することも忘れてはならないのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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