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スコットランド戦で注目!日本を愛する外国人出身選手の素顔

2019年10月13日 06時00分更新

文● 藤江直人(ダイヤモンド・オンライン

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リーチ・マイケル,トンプソン・ルーク
スコットランド戦に備えてトレーニングを行うリーチマイケル(左)とトンプソン・ルーク(右) Photo:AFP=JIJI

日本代表がワールドカップ史上で初めてのベスト8進出をかける、スコットランド代表との予選プールA最終戦が13日19時45分、横浜国際総合競技場で運命のキックオフを迎える。引き分け以上で自動的に、敗れても4トライ以上をあげて、なおかつ7点差以内に抑えてボーナスポイント2点を獲得すればプールAの2位以内が決まる一方で、台風19号の影響で試合開催の可否が当日の午前中に最終的に決まることになった。さまざまな思いが交錯する中で、難敵を撃破して1位で突破する青写真を成就させるための日本代表のキーマンたちを追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

運命のスコットランド戦
リーチマイケルがゲームキャプテン復帰

 天国と地獄とを隔てる運命の大一番へ。9度目のワールドカップ挑戦にして初めての決勝トーナメント進出がかかる、13日のスコットランド代表との予選プールA最終戦(横浜国際総合競技場)に臨む先発メンバー15人の顔ぶれとともに、日本代表の戦い方も定まった。

 決戦2日前の11日に都内で会見した、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチから名前を読み上げられた15人は、38-19のダブルスコアで勝利した5日のサモア代表戦から4人が入れ替わっている。

 ・フッカー  坂手淳史→堀江翔太
 ・左ロック  ヴィンピー・ファンデルヴァルド→トンプソン・ルーク
 ・左ウイング レメキ・ロマノ・ラヴァ→福岡堅樹
 ・フルバック 山中亮平→ウィリアム・トゥポウ

 途中出場から2試合連続でトライを決めていたウイング福岡が今大会初先発。4トライをあげてランキングのトップに並ぶウイング松島孝太朗と初めてそろい踏みを果たし、蓄積疲労もあって一時は欠場する可能性が報じられたナンバー8の姫野和樹も、4試合連続で先発に名前を連ねた。

 万全なコンディションに戻った、フランカーのリーチマイケルもゲームキャプテンに復帰。現時点におけるベストの布陣が顔をそろえた中で、悲願のベスト8への扉をこじ開けるためのキーマンは誰になるのか。日本の前にまずは対峙するスコットランドの特長を説明しておきたい。

スコットランドの要警戒選手は
34歳ベテランのグレイグ・レイドロー

 基本に忠実でフィジカルも強く、地道な仕事を献身的に繰り返すフォワード陣。スピードあふれる展開力と、巧みなパス回しを武器とするバックス陣。老獪なパスを駆使したゲームメイクで両者を結びつけるのが、日本戦前日に34歳になったベテラン、スクラムハーフのグレイグ・レイドローだ。

 プレースキッカーも務めるレイドローには、4年前の前回大会で煮え湯を飲まされている。予選プール初戦で南アフリカ代表を34-32で撃破する世紀の大金星を挙げた日本は、続く第2戦でスコットランドに10-45と大敗している。この一戦で20得点をあげたのがレイドローだった。

 中7日と休養十分な日本に対し、スコットランドは61-0で快勝したロシア代表戦から中3日。しかし、レイドローをはじめ、ロックのジョニー・グレイ、スタンドオフのフィン・ラッセル、フルバックのスチュアート・ホッグらの主軸選手はロシア戦を欠場。日本戦へ万全な状態を整えている。

 経験豊富な猛者たちの中でも、最も厄介なレイドローを封じ込め、スコットランドのオフェンスを寸断するにはどうすればいいのか。答えはひとつ。日本のフォワード陣、特に第3列を担う左右のフランカーとナンバー8を切り込み隊長として、レイドローにプレッシャーをかけ続けるしかない。

 フランカーとは軍事用語で「側兵」や「側面部隊」を指す。スクラムの最後列で左右に陣取りながらオフェンスでもディフェンスでも、すぐにスクラムから離れて地上戦を展開する仕事人だ。タックルを含めたコンタクトプレーも多く、屈強さとスタミナ、機動力とあらゆる能力が求められる。

 フランカーの背中に続けと長身の選手が担うロック、スクラムの最前列を担うプロップやフッカーがレイドローのプレーに狂いを生じさせられるか。ジョセフヘッドコーチはフランカーにリーチと、アイルランド戦とサモア戦でゲームキャプテンを務めたピーター・ラブスカフニを指名した。

 そして、ロックには身長196cmのトンプソンと同195cmのジェームズ・ムーアがそびえ立つ。右プロップには具智元、バックス陣の中でフランカーに近い役割が求められるセンターの一角にはラファエレ・ティモシー、最後尾で番人を担うフルバックには開幕戦以来の出番となるトゥポウがスコットランドを迎撃する。

外国出身選手はW杯最多の15人
韓国、ニュージーランドなどさまざま

 今大会で先発する日本の外国出身選手は、ロシア戦の8人を最多として、アイルランド戦以降は7人を数えている。招集された31人のメンバーの顔ぶれを見渡しても、外国出身選手は日本が挑んだ歴代のワールドカップで最多となる15人を占めている。

 このうち帰化して日本国籍を取得しているのは、リーチやトンプソンら8人。残る7人は母国の国籍を有したまま、日本およびアジアで初めて開催されている今回のワールドカップを戦っている。スコットランド戦で登録された外国出身選手の母国は、下記の6ヵ国となる(※は日本へ帰化)。

 ・右プロップ  具智元 韓国
 ・左ロック   トンプソン・ルーク※ ニュージーランド
 ・右ロック   ジェームズ・ムーア オーストラリア
 ・左フランカー リーチマイケル※ ニュージーランド
 ・右フランカー ピーター・ラブスカフニ 南アフリカ
 ・右センター  ラファエレ・ティモシー※ サモア
 ・フルバック  ウィリアム・トゥポウ ニュージーランド
 ・プロップ   中島イシレリ※ トンガ
 ・プロップ   ヴァル・アサエリ愛※ トンガ
 ・ロック    ヘル・ウヴェ※ トンガ
 ・フランカー  ツイ・ヘンドリック※ ニュージーランド

 中島以下の4人はリザーブで、いずれも体力的な消耗が激しいポジションでフレッシュな力を与えるために、試合展開に応じて後半途中から投入されるだろう。ただ、前回大会もそうだったが、ラグビーが幅広い層から注目を集めるようになった時に、決まって同じような疑問を投げかけられる。

 それは「なぜ日本代表なのに外国籍選手がいるのか」――となる。答えはオリンピックやサッカーなどでお馴染みの「国籍主義」ではなく、ラグビーが「所属協会主義」に則っているからに他ならない。具体的には下記の3つのいずれかひとつを満たせば、国籍とは異なる国の代表選手になれる。

 ・国籍 出生地が該当国であること
 ・血縁 両親または祖父母のうち1人が該当国の出身であること
 ・地縁 該当国に3年以上継続して居住するか、あるいは通算で10年に渡って居住していること

 こうしたルールに則って代表選手が選出された結果として、15人の外国出身選手が日本代表に名前を連ねた。2000年に「一人の選手はひとつの国の代表にしかなれない」とルールが変更され、日本代表としてプレーすれば母国の代表に選出されないことを覚悟した上で、だ。

リーチマイケルだけじゃない
日の丸を背負う外国出身選手の素顔

 15歳で来日した31歳のリーチは2013年7月に帰化し、翌年からは日本代表のキャプテンに指名されて今現在に至っている。英語と日本語を介して、日本語にまだ不慣れな外国出身選手との橋渡し役を担い、国歌「君が代」の歌詞が伝える意味をも丁寧に伝えている。

 4大会連続出場を果たしている最年長の38歳のトンプソンは、愛する日本で開催される今大会を最後に代表から退き、今シーズン限りでラグビーそのものからも引退すると表明している。愚直なプレーで見ている側の感動を誘う男は、流暢な関西弁で周囲を笑わせる一面も持っている。

 南アフリカ出身の30歳のラブスカフニは、前回大会で母国から大金星を挙げた日本の戦いぶりに魅せられて2016年に来日。今年7月に初めて代表キャップを獲得した。中学時代から日本でラグビーを学んできた、ソウル出身の具を含めて、誰もが日本という国を愛してやまない。

 前回大会で正確無比なキックからペナルティーゴールを決めまくり、一躍ヒーローになったフルバックの五郎丸歩は、外国出身選手へにわかに懐疑的な視線が向けられ始めた状況を受けて、南アフリカ戦を前にして自身のツイッターにこんな文面を投稿している。

「ラグビーが注目されてる今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ。」(原文のまま)

 日本という国のために無骨に、身を粉にして戦う外国出身選手がスコットランド戦でもカギを握る。決して「助っ人」という位置づけではない。日の丸を背負い、魂を捧げる盟友たちは、歴代の日本代表が夢として追いかけ続けてきたベスト8進出の意味も十二分に理解している。

 スコットランドとの通算の対戦成績は1勝10敗。前回大会の黒星を含めて圧倒的に分が悪い上に、秩父宮ラグビー場で28-24のスコアで日本が唯一勝利した1989年5月28日の一戦を、スコットランド側はテストマッチとして頑なに認めなかったちょっとした因縁もある。

 当時の主力の多くがニュージーランドへ遠征していたこともあり、来日したのはスコットランド代表ではなく、親善試合に相当する試合を行う「スコットランドXV」だと主張していた。3年前に他界した平尾誠二さんがセンターとして出場した、懐かしさすら覚える激戦は時代が平成に入って初めて行われたテストマッチでもあった。

 平成元年から30年あまりの時空を越えて、令和元年で正真正銘の白星をもぎ取るために。浪花節をほうふつとさせる、日本という国への深い愛情とプライド、そして闘志をたぎらせる外国出身選手たちを擁する日本代表は、夢を成就させるための実力と勢い、何よりも自信を同居させている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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