このページの本文へ

三井住友FG内で「最年少37歳社長」誕生、銀行の保守的人事に異変

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
新会社の社長に就任した三嶋英城氏(中央)。37歳という年齢は、グループ会社の社長の中で最年少だ Photo by Takahiro Tanoue

「社長製造業」という旗を掲げ、デジタル分野での社内起業を推進する三井住友フィナンシャルグループに、最年少となる37歳のグループ会社社長が誕生した。3メガバンク共に、デジタル人材の育成に本腰を入れるが、戦略や取り組む姿勢は三者三様だ。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

「若くして会社の社長になれるということを理解してほしい」

 9月25日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)は法律相談サイトを運営する弁護士ドットコムと共同で、新会社のSMBCクラウドサインを設立すると発表した。記者会見の席上で、谷崎勝教・三井住友FG執行役専務は、グループの社員、行員に奮起を促すようにメッセージを発した。

 新会社が提供するのは、オンラインでの契約締結やクラウド上での書類保管など、契約手続きのデジタル化サービスだ。ペーパーレスによるコスト削減を図る企業の需要を一手に担うことが期待されている。

 その新社長が、IT業界でクラウドビジネスの立ち上げなどに携わり、2018年、三井住友銀行に中途入社した三嶋英城氏だ。年齢は37歳。三井住友FGのグループ会社の中では、最年少の社長となる。

 事業会社ではもはや珍しいことではないが、保守的な人事で知られる銀行だけに、業界の話題をさらった。

 そもそもメガバンクは、入行年次に基づく年功序列が人事評価の基本にある。さらにグループ会社の社長といえば、有力役員の“再就職先”という意味合いが強く、当然、年齢層も高くなる。

 中途採用の三嶋氏の経歴自体が、新卒の“純粋培養”が多数を占める銀行では異色だ。しかし、組織のダイバーシティーの流れは銀行にも着実に押し寄せている。「これほど若い人をグループ会社の社長に登用するのかというレベル」(谷崎氏)になったというわけだ。

 今回の人材登用の背景には、三井住友FGが近年、「社長製造業」(太田純・三井住友FG社長)と銘打ち、デジタル領域を中心とする新規事業の開発を進めてきたことがある。その一環として、社内起業を推し進め、新たにできたグループ会社のトップに銀行員を充てる人事を行ってきた。

 太田氏自身は、銀行員に「殻を破ろう」というメッセージを伝えている。固定観念にとらわれずに、従来の枠組みを超えた金融サービスを提供しなければ生き残れないという危機感があるためだ。

 社長製造業の成果として、すでに生体認証サービスを提供する会社や、RPA(事務作業の自動化)の導入支援を行う会社などが立ち上がっており、SMBCクラウドサインは8社目となる。

 共同出資先から招聘した例を除けば、銀行員がトップに就いたのは三嶋氏で5例目だ。他の事例では、40代後半から50歳前後の銀行員が社長に選ばれており、三嶋氏の若さは際立っている。

デジタル化進むも
社内起業にメガで温度差

 このように、デジタル領域と銀行員の接点を増やす取り組みは、どのメガバンクも積極的に進めている。だが、他の2メガはそれぞれ異なるアプローチで従来の壁を乗り越えようとしている。

 みずほFGと三菱UFJFGが共に力を入れるのは、銀行員の出向制度の拡充だ。みずほFGは、ベンチャー企業など社外での兼業制度の整備を進めている。三菱UFJFGはすでに、銀行員を週に数日間ベンチャー企業に送り込み、経営支援を担わせる「助業」制度を導入済みだ。

 さらに、みずほFGは今年8月から、新たなビジネスの創出を目的とする「次世代金融推進プロジェクト」という公募制度を始めた。事業として立ち上げることが決まれば、社内起業によって会社化する選択肢があるという。

 ただ、社長製造業にまい進する三井住友FGと他の2メガとでは、社内起業に温度差がある。それはなぜか。理由の一つが、デジタル領域の事業開発をまとめて引き受ける出資会社の存在だ。

 三菱UFJFGはジャパン・デジタル・デザイン、みずほFGはブルーラボというデジタル推進を担う外部組織を持ち、そこを“実験場”として新規事業の可能性を模索している。

 あえて銀行員に社内起業させる必要性を感じていないのが本音といえるだろう。

 また、三井住友FGの社内起業にも課題は残る。くだんの三嶋氏が中途入社で、銀行のカルチャーに染まるように育てられた新卒採用組ではないことだ。

 今回の新会社が設立に至った理由の一つとして、起案者である三嶋氏が数回にわたり、所属先の部長に熱心に提案を持ち掛けたことがあったという。それができたのは、年功序列という銀行の伝統をたたき込まれていないことが大きく作用した点は否定できない。

 新会社設立に際して、三嶋氏は日本のレガシー企業の代表格である銀行が「自らの変革を含めて事業に取り組む」ことが重要だと指摘した。三嶋氏のような型破りの人事を増やしていき、銀行内部の組織を自己変革することの必要性を示唆している。

 保守的な銀行グループ内に若い社長が誕生したことに対して「中途採用者だとしても影響は大きい」(三井住友FG幹部)と歓迎する声は多い。今後、銀行の組織哲学の中で“純粋培養”された若手の銀行員がこうしたポストに就いたときこそ、社長製造業が真に目指す姿が実現するはずだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ