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育休中女性へのキャリア支援サービスがママたちに好評な理由

2019年10月10日 06時00分更新

文● 藤崎雅子(ダイヤモンド・オンライン

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育児休暇中、「元の仕事に戻れるのか?」と悩む女性は少なくない。そんななか、育休中の女性が週5~10時間ほど他社の事業支援を行い、それを通じて自身のキャリアを見つめ直すというプログラムが好評を博している。

育休中の女性向けの
実践的キャリアプログラム

mogのメンバー
女性が仕事を通して自己実現できる社会を目指し、ワーキングママのキャリア支援や転職支援に取り組む株式会社mogの皆さん。育休中女性向け「ママステラ」は、代表取締役社長・稲田明恵さん(左から2人目)が取締役副社長・金子麻由子さん(同3人目)らと共に前職時代に立ち上げたサービスが元になっている

 今、育児休業中の女性たちがアクティブだ。大学院の講座に通ってMBAを取得したり、インターン(業務体験)に取り組んだりと、育休中、出産・育児の合間を縫って自分自身を高めるための活動や勉強に勤しむ女性は、この数年で急増している。

 その背景にあるのは、「キャリアのブランク」に対する不安だ。育児休業制度や社会保障が充実し、かつてに比べれば、出産を経ても働き続けやすくなっている。しかし、出産のタイミングはちょうど社会人経験を重ねて仕事が面白くなる時期と重なる場合も多く、「元の仕事に戻れるだろうか?」「長期間の育休で仕事の感覚を失うのではないか?」といった不安感はなくならない。

 育休中の女性が学ぶサービスも充実の方向にある。育休中の「不安」を「自信」に変えることを狙いとした、中小企業の事業支援を通じた実践的キャリアプログラム「ママステラ」も、そんなサービスの1つだ。これは、育休中の女性に、他社での事業支援を核として自身のキャリアを見つめ直す機会を提供するもので、ママのキャリア支援を手がける株式会社mogが今年10月に始めた。

 このルーツは、同社の稲田明恵社長らが総合人材サービスのパーソルホールディングス勤務時代、子育て中の同僚女性社員3人と共に提案し、社会的な課題を自社の強みで解決するCSV(Creating Shared Value)として立ち上げたサービスにある。

「アイデアの起点になったのは、メンバーの実体験でした。育休明けにサポート的な仕事に就き、かつて責任ある仕事をこなしていた頃の自分と比べて虚しさを感じてしまうという話が上がったのです。しかし、それは『無理なく働けるように』との会社側の配慮。どんな仕事をしたいか、どう働きたいか、本人が発信しない限り周囲にはわかりません。ワーキングマザーがいきいき働くためには、自分の今後のキャリアについて、しっかり人に語れることが大切だと感じました。そこで、育休中のうちに自己理解とキャリア設計に生かせる経験ができるよう、育休女性と企業をつなぐボランティアマッチングの仕組みを考えたのです」(稲田さん、以下同)

3ヵ月~、週5~10時間の
在宅業務をチームでこなす

 このサービスは2017年から約2年間運用され、育休中女性と企業の双方から好評を得た。しかし、今年8月、稲田さんらメンバーは「働くママが増加し、そのキャリア支援が社会にとって急務」との思いで独立を決意。働くママをより多面的に支援するため、「ママ、お仕事がんばって!」の頭文字(mog)を社名とする新会社を立ち上げることになり、育休中に絞った旧サービスは終了することに。

「そのお知らせをママさんたちにしたところ、『2人目の育休中もやろうと思っていました』『会社の後輩にも紹介していました』『こんなに社会的意義のあるサービスがなくなってしまうのは寂しい』など、ありがたい声をたくさんもらったんです。育休を有効に過ごすための受け皿はまだまだ必要だと感じ、新会社でも育休中ママ向けのサービスを始めることにしました」

 そして新会社のもと、10月からママステラとしてパワーアップした内容で再スタートした。

 プログラムの概要はこうだ。ママステラに登録した育休中女性は、まず参加者同士の相互ワークによって、自身の強みや今後の働き方について考えるセミナー(子連れ可)を受講。そこで浮き彫りになった本人の強みや志向性に応じて、3~5人のチームが編成され、プロモーション・PRサポート、営業支援、人事領域のサポートなど、契約企業の事業支援が紹介される。

 期間は3ヵ月~、週5~10時間程度を目安に、基本は在宅で業務を行う。個人ではなく、チームによるプロジェクトワークで取り組むのがポイントだ。活動中、育休女性には、事務局からベビーシッターや家事代行のチケットが提供される。

 新サービス開始前から反響が大きく、今は毎日のように登録や問い合わせがあるという。その登録の理由を見ると、不安の解消に向けた前向きな行動だとわかる。

「育休中は家族やママ友以外とほとんどコミュニケーションを取らないので、うまくビジネスのコミュニケーションをとれる自信がなく、このまま復職するのは不安だった」

「自身がどんなことに興味があるのか、どんな働き方を求めるのか、実際に体を動かしながら考えてみたいと思った」

「勤務先とは異なる業種・業態の仕事を体験し、知見を広めたいと考えた」

地方の中小企業の
業務支援にも

 稲田さんは、仕組みのポイントについてこう話す。「異なる規模・業種の会社での事業支援の経験は、これまでの自身の仕事や働き方を客観的に見つめ、視野を広げることにつながるのではないでしょうか。またチームでのプロジェクトワークのため、同じ時期に育休を取っている他社のワーキングマザー仲間ができ、お互いに仕事のフィードバックをすることでスキルを高め合っていけると考えています」

 今後は、子連れでワーケーション(「仕事〈ワーク〉」と「休暇〈バケーション〉」を組み合わせた造語)を体験するプログラムも検討しているという。また、受託先は都内だけでなく、地方の中小企業の業務支援にも拡げ、全国展開していく予定だ。

 特に、人手不足が叫ばれる地方の中小企業と、意欲的な育休中女性をマッチングすることで、新たな雇用の創出となることも目指す。さらに、完全リモートによるプロジェクトワークの方法も探っており、地域を超えたマッチングを推進していく方向だ。

 ママステラが目指すのは、このような育休中の女性に対する支援を通じて、最終的に「子育て中の人であっても、罪悪感なく働き続けられる社会を作ること」だという。

「家族や職場のみんなと『働くって楽しい』という思いが共有でき、多様な人材を戦力として見る社会になっていったらいいですね」

 出産・育児という新しい経験をすることは、今までと異なる角度で物事を見られるようになったり、多様な発想ができるようになったり、あるいは限られた時間のなかで効率よく働く習慣が身についたりと、パワーアップのチャンスでもある。そんな彼女たちの存在は、職場の上司や同僚にとってもプラスになる――そう周囲が捉えることは、「女性活躍推進」のために制度や保障を充実させることの次に、大事なことかもしれない。

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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