このページの本文へ

『ヒルナンデス!』敏腕テレビマンが教える“面白い”企画のつくり方

2019年10月09日 06時00分更新

文● 村上和彦(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
「ヒルナンデス!」番組ホームページ
「ヒルナンデス!」番組ホームページより

いまやお昼の定番番組となった『ヒルナンデス!』(日本テレビ)は、かつてモンスター級の人気を誇った『笑っていいとも!』(フジテレビ)をなぜ終了に追い込むことができたのか。その勝因は、9割は捨て、あるポイントを重点的に攻める「一点突破」の戦い方だった。前回に続き、元日本テレビプロデューサーで『ヒルナンデス!』を立ち上げた村上和彦氏の最新刊『勝つために9割捨てる仕事術』(青春出版社)から、仕事に“面白さ”を見出し、結果を出すための方法を紹介していく。

>>前回の記事を読む

企画力アップの第一歩は「情報に対してオープンになること」

 今回は、企画力の鍛え方や発想のテクニックについて述べる。私にとっての企画は、当然テレビ番組(コーナーなども含む)を指す。他の業界の場合でも、新製品企画、サービスのリニューアル計画、キャンペーンのプラン、研究開発の提案、政策立案など企画を考える場面はさまざまあるだろう。

 まず、企画を考えるというのは非常に素晴らしい行為だと思う。その上でお伝えしたいのは、企画に隠された問題点をチェックして、ダメ出しすることもとても大事な仕事だということだ。なぜ、どうしてと「ダメ出しシュミレーション」しなかった企画は「自分本位」の企画であることが多い。視点を変え、自分の企画にケチをつけることで企画の本質に迫っていくことが出来るのだ。

 視点を変えるための簡単な訓練方法がある。それは、ただいつもと少し意識を変えて街を歩くだけだ。街を歩くのは誰でもやっていることだろうから、ほんの少しだけ頭の使い方を変えればいい。

 どう変えるのか。それは、「情報に対してオープンになること」である。どうやら多くの人はそれと反対に、情報に対してクローズドの状態であるようだ。例えば、街を歩くのは移動のためだけ。あまりにも情報があふれかえっているから、無意識のうちに目に入っているもの、耳から入ってくるものをシャットアウトしている。センサーで「刺激」として感知はしているけれど、それを「情報」としては扱ってはいない状態だ。このクローズドの状態だと、自分以外の人の関心事にまで理解が及ばなくなってしまう。

 情報に対してオープンな状態とは、イメージとしては、食べ物を口の中に入れるのと同じように、情報を目や耳、皮膚に入れていく意識だ。同じように情報もとりあえず意識して自分の中に入れるように心がけるのだ。といっても、大げさなことはまったく不要で、別にメモをとることも写真をとることもないし、心に刻み込もうとしなくてもいい。ただ目や耳や肌から取り入れようという意識だけあればいい。

 情報に対してオープンであるか、クローズドであるかによって、結果的に自分の中に残る情報は大きく変わっていく。それによって、今現在の世の中の姿が、常にアップデートされているのか、それとも更新されずに古い情報のままなのかの違いにもなってくる。同じ情報からより多くのことに気づけるようになれば、視点を変えるときの手助けにもなるし、発想力も変化してくる可能性があるのだ。

企画のヒントになる“街の歩き方”とは

「情報をオープンにする」やり方について、もう少し具体的なアドバイスをしたい。大事なのは見えたもの、聞こえたこと、感じたことに一瞬だけ意識を向ける習慣をつけることだ。

 ほんの一瞬で構わないので、見ている映像全体、映っているものひとつひとつに、意識を向ける。聞こえる音に意識を向ける。そうすると、そこにあるものが面白く感じたりする。あるいは不興に感じたりする。それを続けていると、何か昨日とは違っていることに気づく。

 例えば、渋谷の街を「たまたま」歩くとする。「ラーメン店がある。あ、以前と店が変わっているな。今度は味噌ラーメンがメイン?値段は780円から、か。でも食べないかな」、「ファッション店の店頭ディスプレイが秋冬仕様になった。紺色をプッシュしているのか」、「センター街のBGM、アイドルソングで、なんてグループかわからないけど、面白い」、「外国人が並んでいる。鯛焼き屋なのか…」など、こんな具合に目に入るモノを自然に受け入れていくのだ。歩きながらただ「情報」として受容する。その時に軽く「面白い」、「これ好き」、「イヤだな」などの感想を抱くこともあるだろう。その感想も含めて受け入れるのだ。

 もしその後にラーメン店のことを思い出したら「あの時、渋谷のラーメンをなぜ“食べない”と思ったのだろう」と改めて考えればいい。店構えなのか、店名なのか、ラーメン自体なのか、値段なのか。このように常に情報と「接している」と、いろいろなことが新鮮に感じられる。

 クローズドな人でも、今、自分の関心が向いていることには、街を歩いていても、無意識に拾ってくることがあるだろう。そこで、関心のあるものだけでなく、自分とは関係ないものとしていた存在にも興味を持つようにしてもらいたい。私がやってほしいと思うことは、ただそれだけのことだ。たったこれだけのことで、自分とはまったく違う人たちの気持ちになりきることがだんだん簡単にできるようになっていく。

 情報に対してオープンな状態だと、疲れてしまうのではないかと心配する人がいるかもしれない。でも、それはもう慣れの問題だ。現代のような情報過多の時代になる前は、危機回避という意味でも誰もが本能的にやっていたことだと思う。

企画をつくるときは“いたずら天使”の視点を入れる

 最後に、企画には「面白さ」の要素を入れることをおすすめする。これは、テレビ番組の企画だけの話を言っているわけではない。飲食店の新メニュー開発でも、金融商品の企画でも、調査研究の企画でも、特定詐欺被害防止キャンペーンの企画でも、外交防衛政策の企画でも…とにかくどんな大真面目な企画でも、「面白さ」という要素から見直しても決して悪いことはない。不謹慎だと思ったら採用しなければいいだけのことだ。

 面白さの視点を取り入れる方法は、「“いたずら天使”の視点」だ。真面目なことが大嫌いで、いつもふざけてばかりいるいたずら天使が、その企画を見たら、なんと言うか。どの部分について「つまんないの!」と言うだろうか。もしもほんの少しだけでも笑えるような要素を盛り込むとしたら、どんなことができるだろうか。そういう視点で企画案を見直すのである。

 絶対に「おふざけ」が許されないような企画だったとしても、何かこっそり遊び心を忍ばせることはできないだろうか。真面目に頑張るという要素と、楽しんでやるという要素を並行できないだろうか。目くじらを立てるようなことの中に、ホッとするような笑いを盛り込むことで、誰かがハッピーになれるのではないか。

 例えば、寂れたローカル鉄道駅の駅長にネコが就任した「たま駅長」。取扱商品のことだけでなく、学生生活や人間関係についての質問にも答えつつ、売り場の商品をPRした「生協の白石さん」。多忙な公務の合間に一般フォロワーからの投稿に返信して戯れる河野太郎氏のツイッターなどなど。

 このように、遊び心・いたずら心のおかげで人々が「面白い」と感じ、にぎわいを生み出すケースは意外と多い。できることなら、そんな視点で企画を作りたい。できないときは王道を歩めばいいが、少しでもいたずらできるスキがあれば、誰も気がつかないかもしれないけれどそっと仕込んでおく。これが私らしい企画の発想法なのだ。

 私が長年たずさわってきた「テレビ番組」における大切な価値が面白さであり、それが仕事をする上でも尊ぶべきものだという考えに基づく。この「面白さ」という言葉は、「機嫌よく生きる」、「ハッピーに暮らす」という価値観も含有する。面白さに焦点が当たっている限り、すべての仕事は「人間の幸福」に貢献しているというのが私の考え方だ。テレビマンの仕事のやり方の中にある普遍的なエッセンスが、皆さんの仕事でも活用できるようであれば望外の幸せである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ