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自治会は必要か?不人気だけど「有事」には思わぬ威力を発揮

2019年10月06日 06時00分更新

文● 角南 丈(ダイヤモンド・オンライン

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自治会って何で必要なの――? 近年、報じられる自治会関連のニュースといえば、「自治会費を払う義務がないのに、家賃から強制徴収されている」「自治会に入らないと集積所にゴミ出しを許可されない」などネガティブな内容が多い。しかし、本当に自治会は必要ないのだろうか。合同会社フォーティR&C代表で地域活性化・まちづくりコンサルタントの水津陽子氏に聞いた。(清談社 角南 丈)

東京では解散が続出
加入率は5割以下

回覧板
東京23区では加入率が5割を切る地域もある自治会。しかし、普段は面倒でしかなくとも、災害時など有事にはありがたい存在になる Photo:PIXTA

「何で毎月お金を払わないといけないの? 私のメリットは?」
「役員にされると面倒くさいし、やりたい人だけでやれば?」
「仕事が忙しいから、暇な人だけでやってくれ」

 普段生活していて、自治会の必要性を感じることはそうそうない。中には自治会に入らないことで近所付き合いに支障が出るため、仕方なく月会費を払って参加しているという人もいるだろうが、それも主に田舎での話。人間関係が希薄な大都市では、なおさら必要性を感じないという意見も多いだろう。

 そもそも自治会は、地域住民が共同利益の実現や親睦のために活動する「任意団体」。つまり、自治会に入らなくても法律的に何の問題もないし、自治会の総会で可決されれば、いつでも解散できる組織だ。

「自治会に対して批判が多いのも確かに分かります。たとえば長時間の仕事から家に帰ってきて、(自治会員に回ってくる)回覧板を見て翌朝隣に回すのなんて面倒くさいし、今や動画や記事などさまざまなコンテンツが無料で見られる時代に、価値を感じない物に対して月会費を払う意味が分からないという方もおられるでしょう。その上、(自治会によっては)無償で役員なんて押し付けられたらたまらない、といった不満もあるようです」(水津氏、以下同)

 こうした事情もあってか、自治会が解散する動きも出てきている。

「自治会を解散したところは、東京23区内にもあります。また、解散しないまでも回覧板すら回すのをやめるなど、負担を減らす取り組みも出てきています」

 活動実態と会費の費用対効果が見合わず、未入会・脱会する人も増えている。東京23区では、自治会の加入率は5割を切るところも少なくない。

年会費10万円以上も…
災害時や防犯には威力を発揮

 もちろん、自治会といっても千差万別だ。

「東京などでは自治会費の相場は毎月数百円のところが多いですが、地方都市の一部では、神社や祭りの費用なども含め年間10万円以上を徴収されるところもあります。加入することで得られる生活上の恩典も、団体によっては人員や予算が潤沢でお祭りや子ども会も充実、ゴミ捨て場や街灯の管理・維持などを行うところもあれば、規模が小さく回覧板を回すなど最低限のことしかできない自治会もあり、内容もばらつきがあります」

 あるいは、会長含め役員が何年も代わらず、排他的かつ閉鎖的、一部の人が私物化、既得権益化していたり、いつも同じ人しか参加しないイベントに予算が投じられて、加入のメリットが感じられないような自治会もある。

 しかし水津氏は、自治会に入る最大の恩典は「防災・防犯」だと話す。

「たとえば、95年の阪神・淡路大震災のとき、救助された人の8割は、家族や近所の人たちによって助けられました。自治会での交流を通じて地域で顔の見える関係ができていれば、大災害のときに『あれ、○○さんがいないけど大丈夫かな…』と誰かが気づいて、救助を要請してくれるかもしれません」

 また、自治会に入っていれば、災害時に有益な情報を得られることもある。

「震災があったとき、被災者は国や自治体に申請を出すと補償を受けられる場合があります。しかし、阪神淡路大震災で被災した際、申請期限当日の午後、初めてそうした制度があることを知ったという方もいて、自治会に加入していないと、そういった情報が入ってこないこともあります。平時と異なり混乱の中では個々の住宅にまで情報が届かず、自治会を通じて回ってくることもあるでしょう。不審者情報なども同様に、ママさんネットワーク以外では自治会を通じて回ってくることも多いのです」

 悪質な仲間外れや嫌がらせなどは論外として、自治会に入っていないがために防災・防犯の情報面で不利益を被ってしまう可能性があるというわけだ。

魅力的な自治会活動に
中野区「沼袋親和会」の取り組み

 しかし、災害時ともなれば、たとえ非加入の人に対しても、多くの自治会は支援を行うもの。中野区にある「沼袋親和会」の町会長(=自治会長、自治会と町会は同じ意味)を務める、北原奉昭氏は次のように語る。

「もちろん、町会員ではない人も災害時には支援を受けられますし、普段から開催している防災訓練にご参加いただくこともできます。マンションやアパートなどに住んでいる場合、町会に入っていないという方も多いでしょうから。ただ、本当はせめて一戸建ての方には町会に入ってほしいです。町会の総会では財務も透明性を持って発表していますが、防災の積み立て、防犯カメラの設置などのやりくりも必要ですからね」

 同会の町会費は年額1800円だが、3400世帯(マンション・アパートの一室含む)のうち加入率は約3割。現実問題として、災害支援や防犯カメラの恩典は非町会員も受けられるため、“タダ乗り”もできてしまう。そこで同会では、町会の加入を促すためには活動内容の周知が必要と考え、新たな取り組みを開始。4年前から近隣の9つの町会・自治会と組んで、廃校になった小学校のプールを再利用した釣り堀「みんなのぬまぼり」を開始した。

「みんなのぬまぼり(10月27日まで毎週日曜日に開催)は、地域コミュニティーの交流の拠点となっています。元々は来場者のほとんどがお子さんでしたが、最近はお年寄りや外国の方も遊びに来られるようになり、この廃校を利用した取り組みは、大手テレビ局でも取り上げていただきました。東京都の助成金や中野区の支援も受けている事業のため、入場料は小中学生と70歳以上が無料で、一般が100円(エサ代)と、低料金に抑えることができています。釣り堀で餌やりや管理などをしてくれている町会員さんも、生き甲斐を持ってやっています」

 再び水津氏に話を聞くと、これからの時代の自治会は、こうした独自の工夫や変化が求められるという。

「自治会に入らない人の意見を聞くと、その多くが役員や担当などの義務を課せられたくない、という返事が返ってきます。それならば一定の義務を誰かに押し付けるという形ではなく、みんなが希望の時間にちょっとずつお手伝いするという仕組みを作ればいいし、自発的に参加したいと思うような催しを企画すればいいでしょう。私は、不公平感を生まないためにも、役員や担当を受け持った人は、相応の報酬を積極的にとってもいいと思っています。実際に、役員に報酬を出す自治会も増えています」

 報酬の額は予算規模にもよるが、年間数千円から数万円程度がよく聞くところだ。会計の透明性さえ担保されていれば、別にその額にとらわれる必要もない。いずれにせよ、自治会のルールは会員の総意によって決められるべきである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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