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ビニール傘の発明企業がハイテク化で巻き返し、今や王族・外国人も愛用!

2019年10月04日 06時00分更新

文● 岡田光雄(ダイヤモンド・オンライン

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1950年代に、日本で発明された「ビニール傘」。今やコンビニや100円ショップをはじめどこででも売られており、国内外の皇族・王室が公の場でさすこともある。日本が世界に誇るビニール傘の最先端技術、海外での普及事情について、江戸時代から続く老舗傘メーカー・ホワイトローズの須藤宰氏に聞いた。(清談社 岡田光雄)

日本で誕生したビニール傘
イギリス王室も御用達!

ビニール傘「縁結」
唯一の国産ビニール傘メーカーとなったホワイトローズの「縁結」。破れにくく、強風にも耐えられる設計で、2010年には美智子さまも秋の園遊会で使用された一品だ

 日本洋傘振興協議会によれば、日本では年間1.3億本の傘が消費され、そのうち8000万本がビニール傘だ。その消費量は世界一といわれている。

 1950年代、ビニール傘はホワイトローズによって世界で初めて開発され、それから65年の月日が流れた今も、多くの人に利用されている。

 その人気は海外にも広がり、近年はイギリスのエリザベス女王やキャサリン妃も高級傘ブランド「フルトン」のビニール傘を愛用していることが話題になった。しかし、その傘もまた日本製品がルーツとなっているようだ。

「エリザベス女王が使用されていたビニール傘は、1964年の東京オリンピック直後、弊社がアメリカ輸出用に作っていた製品の、いわばコピー版です。フルトン社が、中国の工場に依頼して作ったのでしょう。かつて日本で作っていたビニール傘のほとんどは、今や中国で作られてますからね」(須藤氏、以下同)

 1980年代以前には、日本国内で50社ほどのメーカーがビニール傘を生産していたが、海外の安価な人件費には太刀打ちできず続々と撤退。今も日本国内で生産を続けている日本企業は、ホワイトローズの1社だけとなった。

公務や選挙演説のお供に
「仕込み傘」も開発

 生産拠点が海外に移ってから30年以上の月日が流れたが、それでも日本の技術の先進性は健在だ。たとえば、2010年秋の園遊会にて、美智子皇后(当時)が使用したホワイトローズのビニール傘「縁結」もその1つである。

「製品にもよりますが、現在コンビニなどで販売されているビニール傘は、基本的に風速10メートル程度で壊れてしまうといわれています。しかし、弊社の傘なら20メートル以上でも耐えることができます。あらゆる角度から強風実験を重ねて骨を丈夫にし、ほとんどの傘には突風でビニールがひっくり返らないように、ビニールに(傘の内側にたまった風を外に逃がすための)小さな穴(逆支弁)をわざとあけているのです。さらに縁結は、ビニールを3重層にして、破れにくくしてあるのが特長です」

 仮に、美智子さまがさした傘のビニールが風にあおられてひっくり返り、雨にぬれてしまうようなことになれば一大事である。縁結をはじめ同社の傘は、そうしたリスクを軽減するために、試行錯誤の末に開発されたものなのだ。

 また、日本では、多くの政治家も、同社のビニール傘を愛用しているという。なぜなら、ビニール傘は選挙演説に最適だからだ。黒や茶の傘だと聴衆に圧迫感を与えてしまうが、ビニール傘なら顔が見えるし庶民性を演出することもできる。そうした理由から、既製品より頑丈でサイズの大きなビニール傘「カテール」という製品が開発されたという。

中棒部分につえが仕込まれている「信のすけ」。年配の父親を持つ女性からの依頼を受けて開発した

 他には、こんなユニークな製品もある。その名も「仕込み傘 信のすけ」。中棒部分につえが仕込まれているビニール傘だ。

「信のすけは、年配のお父様を持つ女性のお客様からご依頼を受けて開発しました。その女性は、お父様につえを勧めたところ、『つえなんて持ったら、行きつけの飲み屋の仲間に笑われる』と断られたそうです。そこで女性は、『それなら杖ではなく傘にすればいい。仕込み傘なら飲み屋で話のネタにもなるから喜ぶだろう』と考え、弊社に相談に来られました」

売り上げ激減からの復活
外国人にも人気

 ビニール傘といえば、コンビニなどで売られている量産型の製品ばかりをイメージしがちなため、突風が吹くとすぐに壊れてしまう、完全に雨を防ぐことができないなど、いつまでたっても進化しない時代遅れな物とやゆされることがしばしばある。だが実は日本人の知らないところでは、日本製のビニール傘はかなりアップデートされていたのだ。

 ホワイトローズがビニール傘を開発してから60年以上がたったが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかったという。

「今から三十数年前、弊社の売り上げの81%はビニール傘でしたが、その後、海外からの安価な製品の流入によって半年ごとに売り上げは半減していき、最終的にはゼロに近い状態になりました。他社さんも次々に撤退する中、私自身も何度もやめようと思うことはありましたが、ビニール傘を開発した会社としての誇りがあり、借金してでもやめなかった。事業を巻き返すのに二十数年かかりましたが、おかげさまで今は国内の生産・販売に絞って、年間1万2000本のビニール傘を作らせていただいています」

 こうした高い品質を誇る日本製の傘は、海外での評価はどうなのだろうか。

「海外では基本的に、傘をさすという文化自体が日本ほどありません。映画のシーンを見ても、海外の方々は帽子やレインコートなどで雨をしのぐ場合がほとんどだと思います。ただ、もちろん海外の方の中にも、弊社(店舗)にビニール傘を買いに来られる人もいらっしゃいます。『せっかく日本に来たんだし、傘でもさしてみようか』と買う人も多いようです」

 事実、近年は「めざましテレビ」「世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ‼視察団」などテレビ番組でも、日本のビニール傘に感動する外国人観光客が紹介されている。

 この“匠の技”が再び世界を席巻する日も近いのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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