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ラグビーのアイルランド戦勝利は奇跡ではない!元日本代表レジェンドが解説

2019年10月01日 06時00分更新

文● 清談社(ダイヤモンド・オンライン

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日本ーアイルランド前半戦の様子
前半を3点差でしのいだことが、後半の逆転劇につながった Photo:JIJI

9月28日、ラグビー日本代表は世界ランキング2位のアイルランドと対戦した。事前の見立てではアイルランド優勢だったが、蓋を開けてみれば、19対12で日本が見事勝利。前回W杯の対南アフリカ戦に続いて、2大会連続のジャイアントキリングを果たした。今回の試合のポイントや勝因、今後の展望を元ラグビー日本代表で、初の著書『ラグビーは3つのルールで熱狂できる』(ワニブックス)を上梓した大西将太郎氏に聞いた。

3点差でしのいだ
前半の結果こそがすべて

 まずざっと試合内容を振り返ろう。

 前半は、アイルランドのキックパスを駆使したトライを2本許した日本。しかし、日本も決して負けておらず、粘り強く攻め続けるうちに、相手の反則を誘う。結果的にSO(スタンドオフ)の田村優選手がペナルティキック(3点)を3本成功させ、9対12で前半を折り返した。

 この互角に渡り合えた前半こそがこの試合の大きなポイントだったと、大西氏は振り返る。
 
「試合開始前まで、最低でも2トライ2ゴール差以内に抑えてほしいと考えていましたが、前半をたった3点差のビハインドで乗り越えたことが今回の勝因のすべてといっていいでしょう。アイルランドは前半の早い時間帯で簡単にトライを取れたので油断してしまい、より日本が戦いやすくなった面もあったかもしれません。ただそれを抜きにしても、予想以上に相手の攻めに日本が対応できたといえます」

大勝利の立役者は
フッカーの堀江選手

 後半に入ってからは終始、日本のペースで試合が進む。そして19分、スピーディーなパスが途中出場の福岡堅樹選手に渡ると、すぐさまゴール角に飛び込み、逆転。

 田村選手がコンバージョンキックをしっかり決め、16対12と差を広げた。

■大西将太郎 ラグビー元日本代表、解説者。日本代表として、通算33キャップ(試合)に出場。2007年W杯フランス大会のカナダ戦では試合終了直前に同点ゴールを決め、12-12と引き分けながらも、日本代表のW杯連敗記録を13で止めた立役者。 2016年の現役引退後は、JSPORTSやWOWOWのラグビー解説をつとめ、2019年ラグビーW杯の認知活動、ラグビーの普及活動に尽力している。近著に『ラグビーは3つのルールで熱狂できる』(ワニブックス)

 試合終了まで10分を切った32分には、田村選手のペナルティゴールで、さらに3点追加し19対12。この点差を守り抜き、このままノーサイドとなった。

 終わってみれば、後半、アイルランドに1点も与えず、完璧な守りを見せた日本。今回の日本のディフェンスについて、大西氏はこう分析する。

「前半に許した2本のトライは、どちらもキックパスによるもの。なので、決して日本のディフェンスラインが崩されて、得点されたわけではありませんでした。アイルランドは自分たちの強みであるスクラムやラインアウトでプレッシャーをかけたかったはずですが、日本はどちらも対等以上に渡り合えた。ほかにも、ボールを持った選手に2人で当たっていく“ダブルタックル”は、この4年間で積み上げてきたものを象徴するプレーでしたし、先日の試合は、集大成の80分間だったといえるのではないでしょうか」

 試合を振り返ってみると、ペナルティゴール4本とコンバージョンキック1本の計14点をあげた田村選手、トライを1本決めた福岡選手、アイルランドの屈強なタックルを跳ね返す持ち前のパワーで、ボールを前進しつづけた姫野和樹選手が特に目立った動きを見せていた印象がある。

 しかし、その3選手以上に今回の試合でもっともいい働きをしたのはフッカーの堀江翔太選手だったと、大西氏はいう。

「堀江選手は、今回で3大会連続W杯出場の経験豊富な選手。スクラム、ラインアウトともに、日本が安定してプレーできたのは、堀江選手の存在感、安心感があってこそでした。ボールを前へ運んだ数は13回でトータル28mでしたし、タックル数は16回と大奮闘。プレイヤーオブザマッチを獲ったのもうなずける素晴らしいプレーでした」

決勝トーナメント進出の
カギを握る「ボーナスポイント」

 前回の2015年W杯で、南アフリカを倒したときと同様、今回も国内外問わずメディアは、“ジャイアントキリング”“奇跡の勝利”などと報じた。ただ、8戦目にして初めてアイルランドに勝ったことは歴史的なことに間違いはないものの、少し意味合いが異なるという。

「先ほど言ったように、相手の攻撃を完璧に防いだわけですから。大歓声の後押しも大きな力にもなったと思いますし、奇跡ではなく、これが日本の実力だと胸を張っていい試合結果だったと思います」

 格上のアイルランドに勝ったことで、当然10月5日のサモア戦、13日のスコットランド戦でも、いい結果が期待できる。

 もちろん全勝すれば、文句なしで決勝トーナメント進出だが、仮に3勝1敗で日本、アイルランド、スコットランドの勝敗数が並ぶとボーナスポイントで争うこととなる。

 念のため説明しておくと、ラグビーの勝ち点は、勝ちが4点、引き分けが2点、負けが0点。その点数に加えて、4トライ以上挙げた場合と7点差以内の負けの場合、ボーナスポイントとして1点が加算される。

 アイルランド戦の最後のシーン、7点差で負けているにもかかわらず、アイルランドの選手はキックでみずから外に出したが、あのプレーはこのボーナスポイントの1点を確実に取りにいくという狙いがあった。

 前回のW杯では日本、南アフリカ、スコットランドが3勝1敗で並んだものの、ボーナスポイントの差により、日本は、決勝トーナメントに進めなかった苦い過去がある。

 昨日スコットランドはサモアに34対0と大勝し、勝ち点4に加えて4トライ以上決めたため、ボーナスポイント1点の計5点獲得した。10月1日現在、全チーム2試合ずつを終え、1位日本(勝ち点9)、2位アイルランド(勝ち点6)、勝ち点は同点でも直接対決を制したスコットランド(勝ち点5)が3位で、4位サモア(勝ち点5)、5位ロシア(勝ち点0)と続く。

 単なる勝ち星の数だけでなく、他チームの試合結果、ボーナスポイント次第で勝ち上がるチームが変わってくるのがラグビー。最後まで気が抜けない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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