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ラグビー日本代表は予選プール最大の強敵、アイルランドに勝てるか

2019年09月28日 06時00分更新

文● 相沢光一(ダイヤモンド・オンライン

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ラグビー日本代表は予選プール最大の強敵、アイルランドに勝てるか
20日のロシア戦で勝利したラグビー日本代表。アイルランドとはどのような戦いを繰り広げるのか Photo:JIJI

 ラグビー日本代表のW杯第2戦(28日)の相手、アイルランドの強さは本物だった。

 日本が入る予選プールAの強豪、アイルランド(世界ランク2位)とスコットランド(同8位)の対戦が22日に行われ、アイルランドが27-3のスコアで勝利した。

 アイルランドは伝統的に屈強なフォワード(FW)を軸にした堅い戦い方をする。ボールを獲得したらガッチリと保持して攻め続け、相手に圧をかけるわけだ。今大会のチームは、その強力FWが健在のうえ、バックス(BK)陣にも決定力抜群のウイング(WTB)ジェイコブ・ストックデールなどタレントが豊富で、攻撃に厚みがある。しかも守りも堅く、ミスもほとんどなかった。

 スコットランドは欧州の強豪6ヵ国による伝統の対抗戦シックス・ネーションズで覇を競い合う相手であり好勝負が予想されたが、アイルランドは4トライ、2ゴール、1ペナルティーゴールを積み重ねて圧勝した。

日本はアイルランドへの勝利より
予選通過を見越した戦い方をすべき?

 大会ホスト国としての誇りを示したい日本代表の目標は、史上初のベスト8進出。つまり予選プールを勝ち上がることだ。予選は5ヵ国ずつ4つのプールに分かれており、各プールの上位2ヵ国が勝ち上がることができる。日本が目標をクリアするには格上のアイルランドとスコットランドのどちらかを上まわる必要があるわけだが、そのアイルランドが、まったく隙のない戦いを見せ、相当な難敵だという現実を見せつけられたわけだ。

 そのせいか、ネットでは“日本代表は予選プール通過を計算した戦い方をすべきだ”といった声が出始めた。プールAで日本より格上の2ヵ国のうち、アイルランドは負けを想定に入れた戦いをし、勝てる可能性があるスコットランド戦に必勝を期すべきだ、というのだ。

 日本は第1戦のロシア戦を30-10で制した。選手たちは極度の緊張状態にあったようでミスも目立ったが、それでもボーナスポイント1がつく4トライをあげ、勝点5を獲得した。第3戦(10月5日)で当たるサモアは決して侮れないが、勝てる可能性は高い。となると次のアイルランド戦か第4戦(10月13日)のスコットランド戦のどちらに勝負をかけるかということになり、アイルランドに圧倒されたスコットランド戦の勝利に全力を尽くした方がいいことになる。

 しかし、そんな発想をしているようではW杯を勝ち切ることは難しい。前回大会がそうだった。日本は初戦ではるかに格上の南アフリカを破ることにすべてを懸け、W杯史上に残るジャイアント・キリングを達成した。第2戦はその疲れもあってスコットランドに敗れたが、サモアとアメリカに勝利したのは南アフリカ戦で得た自信と勢いがあったからだろう。

 実力を上げたとはいえ日本はまだ星勘定をしながら戦えるレベルのチームではないし、目の前の試合を全力で勝ちにいくしかない。その次の相手がアイルランドなのだ。

初優勝を狙うアイルランドは
最強国ニュージーランドさえ倒す実力

 では、スコットランド戦をほぼ完璧な戦いを見せて勝ったアイルランドを相手に勝ち目はあるのだろうか。

 ラグビーも他の競技に倣って世界ランキング制度が採用されており、9月22日に更新された最新ランキングで日本は9位にランクされた。が、上の8ヵ国とはかけ離れた実力差があるといっていい。

 ラグビー界では世界ランキングとは別の実力格付けがある。最上位が「ティア1」の10ヵ国、ティア1に追いつこうとレベルアップに努めているのが「ティア2」の13ヵ国。この23ヵ国とは実力差があるが、強化に前向きなのが「ティア3」だ。

 ティア1に格付けされた10ヵ国のうち上位8ヵ国は長い歴史に培われた地力を備え、文字通り格の違う強さを見せる。英国の4地域、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドにフランスを加えた欧州5ヵ国と南半球のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3ヵ国だ。

 ラグビーW杯は1987年にスタートし、前回の2015年イングランド大会で第8回を数えるが、8回ともこの上位8ヵ国から優勝国が出ているし、ベスト4に進出した国も2007年と2015年のアルゼンチンを除けば、すべて上位8ヵ国から出ている。

 この8ヵ国に含まれていながらW杯では地味な存在に甘んじていたのがアイルランドだ。W杯には全8大会に出場し、6回ベスト8まで勝ち進んだが、いずれもここで敗退。ティア1上位8ヵ国中、唯一準決勝に進めていない。

 だが、今大会に臨むチームはこれまでとは違う。ニュージーランド出身のジョー・シュミットヘッドコーチに長期にわたる指導を託し、チームの完成度を高めたのだ。

 その効果は成績にも表れている。2016年11月には前回W杯の覇者で、その後もテストマッチ18連勝を続けていた最強国ニュージーランドを40-29と圧倒し、2018年11月にも16-9で破っている。また、同年初頭に行われたシックス・ネーションズでは5戦全勝で優勝。この好成績が世界ランキングにも反映され、現在、ニュージーランドに次いで2位にランクされている。
 
 当然、選手はもとよりアイルランド国民のほとんどが“今大会はこれまでの屈辱を晴らす絶好のチャンス”ととらえ、ベスト8超えどころか初優勝を狙って燃えている。勝利に対する意気込みでは4年前に対戦した南アフリカ(勝ち慣れしている)以上のものがあり、日本の前に高い壁となって立ちふさがることは間違いない。

日本の武器はアイルランドを上回る
運動量とスピード、サインプレー

 日本とアイルランドの最近の対戦は2年前にある。2017年6月にアイルランドが来日して2試合を行った。1試合目はくしくも28日のW杯第2戦と同じ静岡エコパスタジアムで行われ、22-50の大差で日本代表が敗れた。2試合目も13-35で日本が敗戦。今大会と2年前では出場選手もチームの仕上がりも異なるので単純には比較できないが、分が悪いことは確かだ。

 とはいえ、勝つ可能性がまったくないわけではない。アイルランドは今年のシックス・ネーションズでイングランドとウェールズに敗れ、3位に終わった(優勝は5戦全勝のウェールズ)。日本はそのイングランドと昨年11月にテストマッチを行い、15-35で敗れたものの前半は主導権を握りリードして終えたし、後半の崩れさえなければ、勝ってもおかしくない内容だった。ティア1のチームとの差は確実に縮まっている。

 また、日本にもアイルランドを上まわる点がある。世界一ハードといわれるトレーニングで獲得した運動量とスピードと相手の弱点を見抜く分析力、それに基づくサインプレーを織り交ぜた意外性のある攻撃だ。

 アイルランドの強力FWによるゴリ押しは脅威だが、日本の守りの代名詞ともいえるWタックル(2人がかりで押し倒す)でなんとか食い止める。そして失点を最小限に抑え、僅少差で終盤まで持ちこたえれば、勝機も出てくるだろう。

 それに何より、今大会を絶好のチャンスととらえ、本気で優勝を狙ってきているアイルランドに日本がどう立ち向かうかには興味が湧く。相手が強ければ強いほど日本選手は燃えるだろうし、観戦する側もより興奮が味わえるわけだ。

 厳しい戦いになることは確かだが、4年前に起こした奇跡、南アフリカ戦の再現を期待したい。

(スポーツライター 相沢光一)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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