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スマホと車・バイクを連携させる新規格SDLのすべて ― 第6回

SDLアプリコンテスト受賞者インタビュー その2

後部座席の子どもの様子がわかる「こどもカメラ」はただのカメラじゃない!

2019年10月18日 09時00分更新

文● ASCII

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 クルマとスマホをつなぐ規格である「SDL」。賞金総額100万円の大規模なアプリコンテスト「SDLアプリコンテスト2019」が今年も開催されるが、実はSDL対応アプリを作るのは、それほど難しいことではない。
 極めて簡単で、1行もプログラムを書いたことがない人でも楽勝!
 ――とまでは言えないが、本連載ではこれから、SDLとはどういったものなのか、対応アプリはどうやって作ればいいのかを解説する。そのなかで、基本的な要素のサンプルコードは掲載していくので、それらを参考に(もっと言えばコピペ)しつつ、ぜひ自分の思い付いたアイデアを実現していただきたい。

写真1 「こどもカメラ」

 「SDLアプリコンテスト2019」(10月31日締切)が開催中だが、前回の第1回コンテストの受賞作品の作者たちは、そのアイデアをどのように考え、そしてどうやって作品としたのか。第1回コンテストの受賞者たちに、発想から実装までをうかがった。今回は、特別賞を受賞した「こどもカメラ」の作者、田中雅也さんだ。

 小さい子どもを乗せて自動車を運転する際、後部座席に座らせた子どもの状況が気になって、ついつい後ろを振り向いてしまったり、バックミラーをそちらに向けたりしてしまうこともあるかもしれない。もちろん、これはかなり危険なことだ。

 「こどもカメラ」は、子どもの前にスマートフォンを設置すれば、SDLで接続した車載機に子どもの状態が表示される。それも、単に映像を出すだけでなく、さまざまな工夫が施されているのだ。


最初はシートベルト検知アプリを考えた

―― SDLアプリコンテストに応募しようと思われたきっかけは?

田中雅也氏(以下田中) たまたま、昨年の大坂でのハッカソンに参加したのがきっかけです。そこでSDLを知って、作り方を学んだんで、せっかくだから作って応募してみようと考えました。

 もちろん、事前にSDLって何だろうというのは調べていましたけれども。

―― 最初から「こどもカメラ」を考えられていたんでしょうか?

田中 実は、最初はシートベルトを検知するアプリを考えていたんです。駐車場とかで車を停めると、子どもがシートベルトを外して勝手に出て行っちゃうんで、ベルトを外したらピンポーンと鳴るとか、そういうのを作ろうと思っていました。

 けれども、それを考えたのは少し前のことで、ハッカソンの時点では、うちの子どももちゃんとシートベルトをするようになっていました。今さら作ってもという感じになったので、じゃあ、いまでも使えそうなやつのほうがというので……。

―― そこからどう発想されたんですか?

田中 まず、ハッカソンなんで、大勢の前で発表するなら派手なものがいいだろうというので、カメラを使ってみたというのがあります。

 それで、いろんな人に見てもらううちに、後ろの子どもを見るのにすごく便利なんじゃないかとイメージがわいてきたんです。もう少し綺麗に作っていったら、実際に子どもにも使えるんじゃないかと、形にしていった感じです。

―― そもそもご本業はどういった分野でしょうか?

田中 もともとソフトウェアのエンジニアで、いまはIoT系の企業に勤めています。

―― 組み込み系なら、Javaは触ってらっしゃらない?

田中 いや、モバイルアプリは得意ですし、普段もJavaで書いていますよ。ただ、今回は勉強がてら、Kotlinで書いてみましたけれども。

―― そろそろ主流はKotlinという感じは、やっぱりあるものですか。

田中 まだJavaとKotlinが半々くらいでしょうけれども、どこかでKotlinに切り替わるのは間違いないと思います。

―― それで、実際の開発に際して、何か難しい点はありましたか?

田中 プログラミングで難しい部分はあまりありませんでした。ただ、「プロジェクションモード」を試すのが開発キットでしかできず、「Manticore」(Web上のシミュレーター)ではできなかったので、たまたまハッカソンで開発キットを借りられたのは大きかったです。


走行中はやはり注視しないように配慮

―― 単純に後部座席の映像を車載機に映すだけなら、カメラとモニターをつなげるだけとも言えますが、実際にはかなりいろいろな工夫を盛り込まれていますね。

田中 基本的なところとして、まずできるだけ安全に使えるようにというのは考慮しました。映像が動いていて、テレビと変わらない状態になってしまうので、そのままだとどうしてもずっと見てしまうんですよね。

 だから、できるだけ注視しないように、ある一定の速度以上とか、運転手がある動作をしている場合には、写真が出てくるだけのスクリーンセーバーのような画面を表示するとか、制約を設けるようにしています。

写真2 安全対策

 一方で、知ってほしい情報は表示するようにしました。シフトレバーの状態は、ぱっと目につく位置に出すようにしています。

―― 走行中は注視しないようにする、でも運転に必要な情報は出すようにすると。

田中 ええ。ただし、アプリ開発時にはいろいろ試して、ほかの情報も出そうと思えば出すことはできますが、最終的にはシフトレバーの情報しか出さないようにしました。

―― コンテストなので制約はありませんが、このあたりは、もし実際にサービスにしようとすると、法的な部分で難しいところが出てくるでしょうね。

田中 そうですね。リアルタイムに動かすところは結構止めていますし、先に説明したように、一定速度以上は映像は表示しませんしないほか、いくつか制約を入れていますが、実用にはまだ工夫がいると思います。

―― そして特別賞を受賞されたわけですが、開発されているときに、これは行ける、みたいな感じはありましたか?

田中 いえ、残るかどうかはわかりませんでした。ただ、奥さんに見せたときに「これ欲しい!」と言われて、そういう人たちへの需要はあるかなというのは感じました。

―― 奥さまから何か要望はなかったんですか?

田中 音楽を鳴らしたいと言われたんですよ。子どもがぐずったとき、騒いだときに特定の音楽を鳴らせるようにしてほしいと言われて、その機能は入れました。スマホから設定しておいて、画面をタッチしたらそれをすっと鳴らせるとか。


後ろの子どもの全状態を!

―― もし、この先どこかの会社から、これぜひ一緒にやりましょうと来たらどうされますか?

田中 自分で使いたいんで、もちろんやりたいです。自分が欲しいから作っているので。

―― 最初に意図した機能はどれくらい実装できたんでしょうか?

田中 精度のところでは手を抜いているところがありますが、ほぼほぼ機能は入れたかなと思います。ただし、いまのSDLの環境では実現できなくて、妥協した部分はありますね。

 ただ1つ入れられなかったのは、別のカメラを使って、子どもが寝ているかどうかの判断をするという機能です。

―― 寝ているかどうかの判断?

田中 ええ。後ろの子どもがいま寝ているよ、というのを、お母さんに通知したかったんです。

 運転中に気になっても、寝ているかどうか、画面上のアイコンで出ていたらすごくいいなと思って、途中まで実装して、でも今回は間に合わないとあきらめたんです。

―― 寝ているかどうかはどう判断するんですか? 目が開いているかどうかとか?

田中 そうですね。顔の表情認識とかができるデバイスを持っていたんで、それとBluetoothで接続して、その情報を得て表示するという感じです。

―― これ、後ろの子どもの状態がわかるというのは、すごく価値ありますよね。

田中 なので、色々な機器との連動も実は入れていて、子どもの近くに連動する温度計を置いておいて、いま子どもの周りの温度は何度というのを表示できるようにしました。

写真3 温度計との連動も

 エアコン暑い、寒い? と子どもに聞いても、本人にもよくわからないけれども、周囲の温度が何度だと画面に出ていたら調整できるというので、そういった機能も入れていたりします。

 途中でだんだんカメラじゃなくなってきて、ちょっとやばいかなというので、追加するのを止めたというところもあったりしますが、でもこれで後ろが全部わかればいいなと。

―― バックシートの子どものすべての状態がわかるって、すごいじゃないですか。親は買いますよ、確実に。

田中 あと個人的に面白かったのが、イスの下に落ちたモノを探すのにも使えるっていう。

―― どう使うんですか?

田中 スマートフォンを、イスの下に持っていったら、車載機側にその状態が見えるじゃないですか。

―― ああ、イスの下に落ちている100円玉とか、子どもが落としたあめ玉とか見つけられますね。

田中 これ意外と便利! とか思って。

―― 最後に、田中さんがアイデアを思い付くのって、どういうきっかけでしょうか?

田中 わたしがイメージできる範囲ってそんなに広くなくて、自分に関係する人のまわりだけなんです。だから、家族だったり、子どもだったりとか、その人たちに使ってもらうというのでイメージを作っていきます。

 たとえば、今回のSDLアプリコンテストでも1つアプリを作ろうかと思っているのは、ウチの祖父だったり、父だったりが運転する、一緒に乗る際に、安全を楽しめるような、面白いものが作れればいいかなと考えています。なので、基本は自分の家族が使えるもの、というので考えるようにしています。

―― そのほうが具体的な利用シーンも、課題も見えるからですか。

田中 そうですね。利用者がそこにいるので、話も聞きやすいですからね。どう、使いやすい? といった感じです。

写真4 田中雅也さん

「クルマとスマホをなかよくする SDLアプリコンテスト2019」

主催:SDLアプリコンテスト実行委員会(事務局:角川アスキー総合研究所)
協力:SDLコンソーシアム日本分科会、株式会社ナビタイムジャパン
後援(予定): 独立行政法人国立高等専門学校機構、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会ほか
応募締切:2019年10月31日(木)24:00
募集内容:エミュレーターか開発キット上で開発したSDL対応アプリ(既存アプリの移植、新規開発)
募集対象:年齢、性別、国籍等不問。個人・チームどちらでも応募可
応募方法:プレゼンシートと動作解説動画をWebフォームで応募
審査:審査員が新規性、UX・デザイン、実装の巧みさ等で評価
最終審査会:2019年11月22日(金)
審査員:暦本純一(東京大学情報学環教授)、川田十夢(AR三兄弟長男)ほか
グランプリ:賞金50万円+副賞
特別賞(5作品):賞金各10万円
公式サイト:http://sdl-contest.com/

■関連サイト

(提供:SDLコンソーシアム)

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