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女性のキャリアアップに威力を発揮、「社外メンター」が人気の理由

2019年09月19日 06時00分更新

文● 吉田 由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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まだまだ男性中心の日本企業。女性社員が自らの悩みを打ち明けようにも、男性の上司や先輩では話しづらい局面もある。そこで最近、注目されるのが「女性の社外メンター」サービスである。

女性社員に特化した
社外メンターサービス

メンタリングの風景
社内メンター制度を導入する企業は増えているが、社外メンター、それも女性メンターは女性社員の満足度が高い

 メンターという言葉をご存じだろうか。最近、ビジネスの場でよく耳にする言葉だが、先輩・相談者・導き役といった意味を持つ。

 近年、このメンター制度を導入する企業が増えている。通常は社内の先輩や上司がメンターとして新入社員を支援していくケースが多い。業務上の悩みや問題を相談し、解決へ導く制度なので、社員はモチベーションを高めることができ、安心感も得られる。企業にとってのメリットは大きい。

 だが一方で、相手が同じ企業の人間なので、本音を言いにくいというデメリットもある。評価や昇進に影響が出てしまうかもしれないという不安を払拭するのは難しい。また、メンターの専門技術を習得している人ばかりではないので、技術的にも充分とは言い難い。

 そこで注目されているのが、「社外メンター制度」である。トレーニングを積んだ外部のプロが相談相手になる方法だ。そういった社外メンターを派遣するサービスが増えている。

 そのひとつが「Mentor For(メンターフォー)」。こちらは所属する約20名全員が女性のメンター。企業の女性社員に特化したメンターの派遣を行っており、好評を得ている。

 社外メンターはどうやって支援を行うのだろうか。

女性特有の悩みは
男性には相談しにくい

 今年から社外メンター制度を導入した、大手生保のマニュライフ生命保険に聞いてみた。同社では、現在20名の女性社員がこの制度を利用している。

「当社には、女性社員のエンゲージメント向上を目的とした委員会があります。そのメンバーから、社外メンターを検討してほしいとの声が上がったのがきっかけです。社内のメンター制度は以前からありましたが、社内の人には話しにくいこともあるという意見がありました」(マニュライフ生命保険人事部)

 20名の枠で募集したところ、定員を上回る希望者があった。外部の人ならば相談しやすい、業界や職種・年齢が違う人と話をしてみたい、こんな動機が多かった。

 同社でマネージャーという要職に就いている40代女性社員のAさんも、社外メンター制度を利用している一人だ。大学卒業後、大手企業で経験を積んできたが、今後のキャリア形成に関して悩みを抱えている。

「入社時に、男性の上司が社内メンターになり、いろいろと相談に乗ってもらいました。業務へのアドバイスは役に立ち感謝していますが、女性には女性特有の事情や悩みがあります。それらに関しては、なかなか相談しにくい状況でした。それで、社外メンター制度に応募したのです。メンターさんは人生経験が豊富な女性でして、話していくうちに自分の問題が徐々に見えてきました。アドバイスだけというより、いろんな質問を通して、私自身が答えに気づくようにセッションを組み立ててくださいました」(Aさん)

 その結果、Aさんは従来の視点を変えることができ、自身を見つめ直すことができたという。

「自分の良いところを伸ばしていけばいいんだと気づいて、ラクになりました。心のモヤモヤが晴れて、前に進んでいけるようになりました。メンターさんに感謝しています」

メンタリングの要諦は
「自分との対話」のサポート

 Mentor Forに所属している女性メンターは、30代から60代まで幅広い年齢層のプロフェッショナルばかりだ。外国人へのメンタリングも可能なバイリンガル、NPO法人を運営する女性、コーチングの資格保有者など様々である。育児や介護を経験している人も多いので、メンティ(相談者)それぞれによって異なる悩みに共感を持って対処ができる。メンターは厳しい研修を受講し、実技演習30時間をクリアし、さらに審査に合格した上で実務にあたっている。

ベテランメンターの安藤知子さん。日米欧の企業でマーケティング、人事、マネジメントを経験。経営者から若手社員まで幅広くメンタリングを行っている

 所属するメンターの一人、安藤知子さんは、数々の大手企業で管理職を経験し、現在は上場企業の社外取締役にも就いている。若手女性社員のみならず経営幹部にもメンタリングを行っているベテランのメンターだ。安藤さんは、こう話す。

「誰もがその人らしく決断して行動していくことをサポートするのが、メンタリングだと思っています。とはいえ、人は自分のことが一番よくわからないものです。『メンターは壁打ちの壁』とメンティに説明していますが、まずは自分自身との対話を深める場を提供することを心がけています」(安藤さん、以下同)

 人材と組織のマネジメント経験を通して、女性がより活躍していくにはメンタリングが不可欠だと思ったという安藤さん。誰もがもっと輝ける社会にしたいと考え、社外メンターになったという。

「メンターとして一番やりがいを感じるのは、メンティの方が自分の価値観を再認識して、自らの意志で動き始めることです。価値観に触れるというのは、理屈や理論の世界ではなく、より感覚的なもので、『心が動く』と言い換えてもいいと思います。一度心が動き始めた方は、まず楽しそうになります。そして、自らアイデアを出したり、自信を持って一歩を踏み出したり、自然とエネルギーが内からあふれてきます」

女性が働きやすい組織は
男性も居心地がいい

 このサービスを立ち上げた、株式会社MANABICIA(マナビシア)代表・池原真佐子さんも、実際に仕事と育児を両立させている一人である。

「最近は、女性のキャリアアップのために制度面の充実化をはかる企業が増えています。しかし、女性には結婚や出産、育児といったライフイベントの際 どうしても男性より精神的負担が増えてしまうのが現状です。そのため、管理職への昇進を希望していても、仕事とプライベートとをうまく両立させていけるのだろうか、と悩む方が少なくありません。こういった女性社員に向けて、精神的なサポートを行い、社内に女性が活躍できる風土の醸成やメンタリング文化が育っていくような支援を、一時的ではなく中長期視点でサポートしていきたいと考えています」(池原さん、以下同)

 政府は来年までに指導的地位に従事する女性の割合を30%にする目標を掲げている。しかし現実には、日本の女性管理職比率は13.2%に留まっている。アメリカ43.4%、イギリス36%、フランス32.9%に比べると、格段に低いのが現状だ。(内閣府男女共同参画白書2018年度版より)

「活躍したいと願う女性が、それを実現できる社会にしていかねばなりません。女性が生き生きと働ける組織は、男性にとっても働きやすいはずです。人口の減少に拍車がかかっている時代、もっと女性が力を発揮できる社会を作っていきたいと思います」

(吉田由紀子/5時から作家塾®)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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