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ライオンのこすらない浴槽洗剤が「風呂掃除嫌い」な日本の主婦に大ウケ

2019年09月19日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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1日の終わりにゆっくり浸かる風呂は、翌日の活力につながる。そうとわかっていても、毎日の浴槽掃除が面倒でシャワーで済ましてしまう、という人も多いだろう。そんななか、2018年にライオンが発売した浴槽洗剤は風呂掃除の“面倒くささ”を一気に解消し、人気を博しているという。(清談社 真島加代)

家事の時短・効率化ブームが
バスタブクレンジングを後押し

ライオンのバスタブクレンジング
「半信半疑で買ってみたけれど、本当に汚れが落ちてる」――SNSでは、おっかなびっくり買ってみて、効果に納得というユーザーが多いようだ

「風呂掃除」といえば、浴槽についた湯アカをゴシゴシとこする地味にしんどい家事……というイメージが強い。しかし、ライオンの「ルックプラス バスタブクレンジング」は、そんな風呂掃除の煩わしさを一変させた浴槽用洗剤として注目を集めている。

「『バスタブクレンジング』と、他社商品や当社の従来品との大きな違いは“こすらず洗い”ができる点です。浴槽全体に洗剤を吹きかけて60秒待ち、最後に水で流すだけで汚れを落とすことができます。浴槽をスポンジでこする必要がないのが最大の特徴ですね」

 そう話すのは、ライオンでヘルス&ホームケア事業本部リビングケア事業部ブランドマネージャーを務める宮川孝一氏だ。「こすらない浴槽用洗剤」がヒットした背景には、家事の時短・効率化ブームが大きく影響しているという。

「共働き世帯の1日あたりの家事時間は、女性3時間16分、対する男性はわずか15分と、約13倍の開きがあります【*】。家事の分担意識が高まっているとはいえ、まだまだ女性側に家事負担が偏っているのが現状です。現代の女性はとにかく忙しく、5分間の自由時間を持つことも難しい日々。家事をいかに効率化するかが、共働き家庭のテーマになっています」
 
 食洗機や買い物代行など、家事の負担を軽くするアイテムやサービスが多数登場しているなか、「浴槽掃除の効率化はあまり進んでいない」と宮川氏は指摘する。

「近年の浴槽洗剤市場は、除菌機能や消臭機能などの付加価値をつける傾向があり、その多くは“スポンジで浴槽をこすること”が前提です。しかし、当社で行ったアンケート調査【**】の結果からは、現在の市場動向とは異なるホンネが見えてきたんです。そのホンネとは、そもそも“こすり洗いをしたくない”という生活者の声です」

【*】…総務省統計局「平成28年社会生活基本調査」
【**】…2018年ライオン調べ/対象:20~50代の共働き女性400人

徹底したリサーチを
重ねてたどりついた課題

 同社のアンケートでは、最も多い39.3%の女性が日々の家事のなかで「お風呂掃除が嫌い」と回答したという。風呂掃除が嫌われる原因について、宮川氏はこう分析する。

「嫌いな家事部門だけでなく『身体的負担が大きい』『この家事はなくなってほしい』という項目でも、風呂掃除はワースト1位に選ばれました。その理由は、生活動線の崩れ。家事の多くはキッチンやリビングで行うものがほとんどですが、お風呂掃除は浴室に移動しなければならず、ほかの家事がストップしてしまうのです。また、しゃがんで浴槽をこする“こすり洗い”がストレスになっていることも、同調査で判明しました」

 そのほか、お風呂掃除中に子どもがケガをしてしまったなどネガティブな経験も、風呂掃除を嫌う理由につながっているとのこと。これらの生活者のホンネに着目し、2011年には宮川氏を中心に新商品開発プロジェクトがはじまった。

「実は、以前から当社の『おふろのルック』をはじめ、他社製品のなかにも“こすらず洗える”ことをうたった商品は販売されていました。しかし、それらの浴槽用洗剤を使っている人に聞き取りをすると、実際はこすって汚れを落としているケースがほとんどでした。彼らがこすらず洗いを実践しない理由について調査をすると、洗い方に問題があることが明らかになったんです」

 こすらず洗いを行うには、湯アカがついている「残り湯ライン」だけでなく、浴槽全体に洗剤をかける必要がある。しかし、ユーザーの多くは残り湯ラインのみに洗剤を吹きかけていたため、浴槽全体の汚れを落とすことができていなかった。つまり「正しい使用方法」がユーザーに伝わっていなかったのだ。

「また、正しい使い方をしていても『浴槽全体に洗剤をかけるのが手間・面倒』という不満を抱いている声もありました。そもそも、泡タイプのスプレーを浴槽全体に吹きかけるには何度もプッシュしなければならず、液剤もすぐになくなってしまいます。洗い方の問題と洗浄力不足によって、多くの人が『こすらないと汚れは落ちない』という認識を持ってしまったんです」

 入念なリサーチの結果、新商品には「浴槽全体に洗剤が行き渡る工夫」と「湯アカを完全に落とす洗浄力」というふたつの課題が見えてきたという。

商品開発は難航
7年越しでようやく発売に

 課題が明らかになったものの、従来の洗剤とはまったく異なる商品を開発しなければならないということが見えてきた。宮川氏は「世の中にないものを生み出すのはとても大変でした」と振り返る。

「特に新容器の開発は試行錯誤の連続でした。まず、みなさんが使い慣れている泡スプレータイプは、広範囲に洗剤をかけにくいというデメリットがあります。代わりにスプレー部分に電池式モーターを取り付ける『電動スプレー』や『エアゾールスプレー』などの案が出ましたが、電池交換の手間やガス抜きの危険などのデメリットがあり実現しませんでした」

 幾度となく検討を重ねてたどりついたのが、現在搭載している“ミスト”だった。しかし、従来の2倍の噴射力を持つミストのトリガー開発にも長い調整期間を要したという。

「女性の力でも広範囲にスプレーできるトリガーの調整に難航しました。何度も改良を重ねて1プッシュ1メートルの噴射が可能になり、15回ほどプッシュすれば、浴槽全体に洗剤がかかるようになったんです」

 同時に、洗剤の洗浄力の面でも、洗剤を吹きかけてから60秒後に汚れを浮かせる新技術を開発。浮いた汚れをシャワーの水圧によって流すことに成功したという。

「研究開発本部では、汚れの分析から洗浄メカニズムの解明、基礎から応用まで広く研究を重ね、試作品は数百種類に及びました。スプレー容器と同様に、ゼロから洗剤を生み出すにはかなりの時間と労力を要しましたね。気がついたら、プロジェクトを立ち上げた日から商品化までに7年もかかってしまいました」

浴槽洗剤市場を
拡大するほどのヒットに

 開発に長い年月を費やし、2018年9月に「ルックプラス バスタブクレンジング」の販売を開始。テレビCMでは“バスタブをこすらない”ことを強調した。発売後からSNSでの反響がとても大きかった、と宮川氏。

「SNSはユーザーのリアルな声の大切さを実感しました。たとえば、妊婦の方が『かがまずに風呂掃除ができて助かった』という声や『半信半疑で買ってみたけど、本当に汚れが落ちてる』という感想もあります。みなさん、ちょっと疑いながら商品を手に取っているのが興味深いですね」

 新商品は2019年7月現在、1800万個を売り上げている。さらに、浴槽洗剤市場が前年比1.2倍に引き上がり、市場拡大にも寄与するほどの大ヒット商品になっている。

 宮川氏は、夫の家事参画のきっかけに「バスタブクレンジング」を活用してほしいと提案をする。実は、家事の分担がなかなか進まない日本でも、浴槽掃除やカビ取りなど、浴室周りの家事は夫が担っている家庭が比較的多いという。

「以前、20~50代の夫婦500組を対象に家事分担についての調査を行ったところ、3割以上の妻が『夫のほうが浴槽の掃除が上手』と回答しました。最後に入浴した際に掃除をしてから出るなど、お父さんの日常のルーチンに組み込めるのも、夫が担当しやすい理由のひとつですね」

 なにより、多くの妻が面倒に感じている家事・ワーストワンの風呂掃除を、自ら率先して行えば妻から高評価が得られる可能性も。風呂掃除を起点にして、ほかの家事へと裾野を広げるのもアリだ。

「バスタブクレンジングのターゲットは、お風呂掃除をするすべての人です。家事初心者の男性、お子さんでも手軽に浴槽をキレイにできるので、家事への苦手意識を克服できるかもしれませんよ」

 浴槽洗剤界の革命児は、世の忙しい女性だけでなく家事に踏み切れない夫たちの強い味方になってくれそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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