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ドライバーを従業員に、ウーバーの未来を左右する新法案が波紋

2019年09月16日 07時57分更新

文● Angela Chen

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Courtesy of Uber

配車サービス企業にとっては大打撃だが、米国カリフォルニア州のギグ・ワーカー(インターネットなどを通じて単発の仕事を受ける労働者)にとっては勝利となる。

カリフォルニア州議会上院はウーバー(Uber)とリフト(Lyft)のドライバーをはじめとするギグ・ワーカーを、独立した請負業者ではなく従業員として位置付ける法案を可決した。「AB5」と呼ばれるこの法案は現在、承認手続きのためにギャビン・ニューサム州知事のもとへ送られている。知事は法案を支持する意向を以前から述べており、2020年中の施行はほぼ確実と見られる。

大統領選挙への立候補を表明しているエリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース、カーマラ・ハリスはAB5の支持を表明している。ウーバーやリフトのドライバーは、連邦法下では依然として独立請負業者と位置付けられている。だが、専門家によるとAB5の影響により他の州でも同様の法案が可決され、労働の未来を左右する大きな争いに発展する可能性もある。ニューヨーク州ではすでに、複数の労働者団体が同種の法案に目を付けている。

ウーバーやリフト側は、自分自身が所有する車で営業していること、就業時間を自分で決めていること、競合他社でも仕事ができることを理由に、ドライバーは従業員ではないと主張している。今回の法案では、誰が従業員なのかという問題を解決するために、上のような主張ではなく「ABCテスト」と呼ばれる法的基準を使うよう企業側に要求している。従業員ではないとされる3つの要件は、労働者が企業の「管理下にない」こと、企業の主要業務以外の仕事で働いていること、そして労働者がその仕事以外に独立した事業や職業に従事していることだ。

AB5が適用されない職業も多くある。たとえば、フリーライター、不動産代理業、弁護士だ。だが、ライドシェアのドライバーは適用外とはならない。ウーバーやリフトをはじめとするギグ・エコノミー企業は、先の従業員ではないとする3つの要件をドライバーの就業形態と照らし合わせ、合致しなければドライバーを従業員として扱わなければならない。その場合、企業はドライバーに対して最低賃金を保証し、残業手当、病気休暇、家族休暇、社会保障制度やメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険制度)の負担などの給付や手当を提供しなければならない。また、労働者は燃料費や車両整備費の払い戻しを受けられる可能性もある。

ウーバーとリフトは採決までの数週間に危機感を募らせ、ドライバーに1回の仕事に対して最低賃金として時給21ドルを提示した。法案可決の可能性が確実となると、ウーバー、リフト、ドアダッシュ(DoorDash)の3社は9000万ドルを拠出し、ドライバーに新たな労働形態分類を与えるべきかを問う住民投票を実施する運動を展開すると発表した。

先行きは不透明だ。企業側は、AB5が施行されれば路上に出るドライバーが減ると主張。ウーバーは(従業員化を求める個別の)雇用関連の訴訟をAB5施行後も継続するとも述べた。 ギグ・ワーカーは通常、契約時に会社を相手取る集団訴訟に加わらないことに同意しているため、集団訴訟を起こすのは難しいかもしれない。つまり、この法案を企業側に強制するのが厳しくなりそうだ。さらに、ウーバーなどが主張する新たな雇用分類を設ける計画の詳細はまだ公表されていない。法案可決は大きな成果だが、多くの疑問は手付かずのままだ。

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