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新型iPhone「半額」のカラクリ、通信大手と総務省がいたちごっこ

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秋の新型iPhone商戦に向け「半額」を打ち出したソフトバンク。新制度の「穴」を突く
秋の新型iPhone商戦に向け「半額」を打ち出したソフトバンク。新制度の「穴」を突く Photo by Reiji Murai 

10月から始まる携帯電話の通信料金と端末代金の新ルールをめぐり、総務省と通信大手がいたちごっこを繰り広げている。端末の値引きが「上限2万円」に規制される中、新型iPhoneをどのように売るか。規制の「穴」探しが始まっている。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「端末半額」のカラクリ

 「法改正の趣旨に反している」。総務省が11日に開いた有識者会議。10月1日に施行となる改正電気通信事業法をめぐり、有識者たちがソフトバンクに噛みついた。同社が9日に発表した端末割引プランを厳しく批判した。

 米アップルは10日に2019年のiPhoneの新モデルを発表した。年間を通じて最もスマートフォンが売れる秋のiPhone商戦がスタートする。最大の焦点は「iPhoneをいくらで売るのか?」ということだ。

 これまで通信大手は、高い通信料を原資に端末代金を安くする「セット販売」で、iPhoneの価格を安くしてきたが、改正法では、通信・端末をセット販売する場合、端末の割引上限は2万円とするルールを導入している。

 10日のアップルの発表によると、最高級で最大ストレージの「iPhone 11 Pro Max(512GB)」が15万7800円で、主力機種の「11(64GB)」でも7万4800円。昨年発表の「XR」よりも値下げになったとはいえ、スマホとしては高いことに変わりはない。

 ここから、iPhoneを扱うNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど通信キャリアが独自に価格を設定して販売するが、仕入れ値から2万円を超える割引価格で販売できないことになっている。それでは高すぎるのでユーザーに手が届きにくい。

 だが、ソフトバンクが9日に発表した端末販売プラン「半額サポートプラス」は、最大半額を割引するものだった。

 もともと同社は「半額サポート」というプランを実施してきたが、基本的な仕組みは同じだ。通信契約者が48回払いでiPhoneなど指定された端末を購入して、25カ月目以降にそれを返却して新たな端末を購入すれば、残りの支払いは免除。これによって「最大半額」になる。

 だが、このままでは上限2万円ルールに抵触する。そのため、新プランでは、ソフトバンクと通信契約を結ばなくても端末が買えるように仕組みを変更した。NTTドコモやKDDIの契約者でもプランが利用できるようにして「通信とのセット販売」ではなく、単なる物販という形態をとって、上限2万円のルールの対象にかからないようにした。

 総務省は「通信契約とセットでないなら端末の値引きは自由。むしろ、携帯電話のコストの引き下げに繋がるので歓迎したい」というスタンスだ。通信契約に誘導しない限り、いくら値引きしても問題にはならない。ただ一方で、その場合のソフトバンクのメリットは見当たらない。

 実は、このプランで販売する端末には、自社の回線でしか使えない「SIMロック」が100日間掛かっている。だから、仮にドコモやKDDIのユーザーがこのプランで端末を買っても100日間は通信が使えない。せいぜいWi-Fi専用端末として使った後、101日目にようやくSIMロックが解除になるという面倒な作業を強いられるため、事実上、ソフトバンクユーザーのための割引施策になっているのがカラクリだ。

 冒頭の有識者が問題視したのは、この点にある。単なる物販とみせかけながら、実際は、SIMロックで契約者を囲い込んでいる。もともと分割払いのユーザーの端末に100日間のSIMロックを掛けているのは、分割の支払いをしないまま端末を持ち逃げすることを抑制するのが狙いだったが、この仕組みの裏をかいていることの批判が高まっている。

制度の抜け穴「SIMロック」を即日解除へ

KDDIも即座にソフトバンクに追随、「半額」を打ち出した
KDDIも即座にソフトバンクに追随、「半額」を打ち出した Photo by Reiji Murai

 だが、翌12日、KDDIもまったく同様の端末割引プランを発表し、ソフトバンクに追随した。KDDIも、自社ユーザー向けに「アップグレードプログラムEX」という48カ月の分割払いの25カ月以降の支払いを免除する半額補助プランを実施していたが、これを、他社ユーザーも利用できるように変更し、「アップグレードプログラムDX」の名称で、9月20日に発売のiPhoneを実質半額で提供できるようにした。

 このプランも、NTTドコモやソフトバンクなど他社ユーザーが利用した場合は100日間のSIMロックを掛けている。このため、事実上のKDDIユーザー向けのプランと呼べるが、KDDIの東海林崇専務は12日の記者会見で「通信契約とは紐づいていない。法令違反ではなくルールにのっとってやっている」と反論した。

 ソフトバンクの榛葉淳副社長も9日の会見で「改正法の趣旨には違反しないことを総務省に確認している」(榛葉淳副社長)と強調した。実際に、総務省のガイドラインでは、SIMロックはあくまで不正防止が狙いで、ユーザーの囲い込みの効果は想定していない。確かに、ルール上は「OK」だ。

 だが、総務省の幹部は「それは制度の抜け穴だ」と断言しており、SIMロックの制度の見直しに着手する姿勢を示している。通信大手が、端末を半額にすることは認めても、それによってユーザーを囲い込む行為は容認できない。

 今後の有識者会議の議論を経て、ガイドラインを再度変更することを目指していく。分割払いの契約者でも、頭金を支払ったユーザーや、過去に分割払いを完了したユーザーには「100日間」のSIMロックを即日解除して、他社の回線でもすぐに利用できるようにする方向だ。

 これによって他社ユーザーでもソフトバンクやKDDIの半額プランの端末を購入しやすくなれば、24カ月のリース感覚で高額なiPhoneを利用するユーザーが広がる可能性がある。

 NTTドコモは6月に「スマホおかえしプログラム」を導入済み。ドコモユーザーを対象に36回払いの端末を25か月以降に返却すれば、残りの支払いを免除して、最大3分の1を割り引くプランを導入しているが、ソフトバンクとKDDIの半額プランのSIMロック問題が解決すれば、追随する可能性も出てくる。

 19年の新型iPhoneの商戦が本格化する中で、10月1日の改正法の新ルールの穴をすり抜けようとする通信大手と、それを塞ぎにかかる総務省。その攻防の中で、今後のiPhoneの販売手法が固まっていく。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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