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便秘患者は労働生産性が低い!「年122万円の損」という衝撃データを読む

2019年09月10日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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便座に座り、いざ用を足そうとしてもなかなか出てこない便秘症。便秘が数日間つづくと、なかなかスッキリせず気をもんだ経験がある人もいるだろう。じつは便秘の弊害はおなかの不快感だけでなく、“経済的損失”もバカにならない。(清談社 真島加代)

便秘の人は生産性が低い
損失額は年122万円にも!

便秘を放置することは大きな損失を伴います。
労働生産性が低くなるばかりか、糖尿病など様々な病気とも関係が深い便秘は、単なる体質ではなく、れっきとした「病」である Photo:PIXTA

 2019年5月にアメリカ・サンディエゴで行われた消化器学会で、日本人の慢性便秘症と健康関連クオリティー・オブ・ライフ(以下、QOL)に関する調査結果【*】が発表された。なかでも注目を集めたのは「慢性便秘症の人は年間122万円の労働生産性損失をしている」という調査結果だ。

「調査の結果、慢性便秘症患者の労働生産性は、非便秘症患者よりも約1.7倍低いことが判明しました。慢性便秘症患者の労働生産性の低さを日本人の平均賃金で換算したところ、年間で約122万円の経済的損失が発生していることもわかったんです」

 こう話すのは、同調査を実施した兵庫医科大学病院内科学・消化管科主任教授を務める三輪洋人氏だ。年間で約122万円の経済的損失とは穏やかでないが、三輪氏は「慢性便秘症患者の労働生産性が低い理由は主に2つある」と話す。

「1つは、慢性的な便秘が健康関連QOLを下げることが大きく影響しています。便秘が招く『膨満感』や『残便感』などの症状によって、精神的に苦痛を感じることがQOL低下の主な原因であることが報告されています」

【*】慢性便秘症に対する健康関連QOLと労働生産性に関する研究/NHWS2017に含まれる日本人3万1人を対象に、慢性便秘の有病割合及び患者背景を調査し、慢性便秘症患者(n=963)と非便秘症患者(n=963)のQOL及び労働生産性を比較。

便秘は「病」である
合併症も数多い

 精神的なQOLについて、日本の国民の平均値を50として比較したところ、非便秘症患者のQOLの精神的な側面のスコアは49.07なのに対し、便秘症患者のスコアは45.91という結果が得られたという。便秘の人はそうでない人よりも、約3ポイントも精神的なQOLが低いという結果が得られたのだ。

「2つ目の原因は、便秘と合併した疾患によるQOLの低下です。便秘は、糖尿病や腎臓病、心血管系疾患、パーキンソン病などの神経疾患、うつ病などの精神疾患、甲状腺疾患の症状として表れるケースもあります。これらの疾患のために頻繁に仕事を休んだり、体調不良によって仕事の効率が悪くなり、経済的損失が大きくなっていくようです。また、便秘の人は非便秘の人に比べて死亡率が高いことも明らかになっています」

 なかには、飲んでいる薬が便秘を引き起こす事例もあるという。あらゆるリスクを考慮すると「便秘は疾患であることがわかるはず」と三輪氏。たかが便秘、と放置していると経済的損失だけでなく、命の危険にもつながる可能性があるのだ。

 また、現在便秘症に悩んでいない中高年も油断はできない。とくに男性の便秘は加齢とともに症状が表れてくるという。

「女性の悩みというイメージが強い便秘ですが、男女ともに年齢を重ねるに従って頻度が上がっていきます。いまは比較的軽い便秘の中高年層も、加齢に伴って重症化する可能性が高いです。加齢とともに便秘に注意を払い、正しい排便習慣を維持する必要があります」

便秘解消には
水溶性食物繊維が重要

 快適な排便習慣を身につけるためにも「十分な水分摂取」「適度な運動」「食事の工夫」を日常生活に取り入れてほしい、と三輪氏はアドバイスを送る。

「水分補給は、1日2リットル前後の“水・お湯”を飲んで、脱水状態を避けましょう。お茶やコーヒー、アルコールは利尿作用があるので水分補給には適していません。また、週に2回ほど、約20~30分のウオーキングやスロージョギングを習慣化するのが望ましいです」

 そして3つ目の「食事の工夫」については、とくに「水溶性食物繊維」を意識して取り入れてほしいという。

「食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、働きが異なるのでバランスよく取るのがポイントです。不溶性食物繊維は便のカサを増してお通じを助け、一方の水溶性食物繊維はおなかの調子を整えて排便をスムーズにする働きがあります。とくに、水溶性食物繊維は体内に入ると便をやわらかくしてくれるので、積極的に取るように心がけましょう」

1日2個のキウイフルーツが
便秘解消に有効な理由

 日ごろの食生活で不足している食物繊維を補うことが、便秘解消につながる。バナナやこんにゃく、生わかめなどが水溶性食物繊維を多く含んでいるとされているが、三輪氏によると、ほかにも効率的に食物繊維が取れる食材があるという。

「おすすめは『キウイフルーツ』です。グリーンキウイを1個食べると、約3グラムの食物繊維を取ることができます。また、キウイには水溶性食物繊維も不溶性食物繊維も含まれているので、バランスよく食べられるのも特徴ですね。食物繊維が多いといわれている『生わかめ』や『こんにゃく』の場合、毎日100グラム以上食べなければ同量の食物繊維を取ることができません。しかし、グリーンキウイを1日に2個食べれば、不足している6グラムほどの食物繊維を手軽に取ることができますよ」

 水分摂取、食事の工夫、適度な運動…3つの習慣を継続できれば、ある程度の便秘は克服できるはず、と三輪氏。そして最後に“便秘は病気”だという事実を認めてほしい、と話す。

「一般の人を対象にアンケートを実施したところ、2人に1人は便秘を疾患として捉えていないことが明らかになりました。便秘に対して『体質である』『病気というほどのことはない』というイメージが強いのが現状です。しかし、便秘はれっきとした病気なので、甘く見てはいけません。生活習慣を正しても便秘が治らない人は、一度医療機関に相談してみてください。近年ではさまざまな薬が登場しているので、個人に合った薬が見つかるケースも多いです。便秘を克服して楽しく長い人生を送りましょう」

 生活の質を上げるカギは便秘解消にあり。現在便秘に悩んでいる人はもちろん、便秘予備軍の中高年は今日から正しい排便習慣を意識してみよう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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