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Kubernetesなど新領域に強く踏み出す、VMworld 2019レポート 第2回

「VMware Cloud on AWS」は1年間で顧客数4倍に、新発表も続々の「VMworld 2019」レポート

ハイブリッド/マルチクラウドに“一貫性”を、ヴイエムウェアの戦略

2019年09月02日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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「VMware Cloud on AWS」顧客数は1年前の4倍に、モダナイズ用途も加速へ

 パブリッククラウドの中でも、特に動向が注目されるのがクラウド市場のトップを走るAWSとのパートナーシップ、すなわちVMware Cloud on AWS(VMC on AWS)だろう。昨年11月には日本国内のAWSリージョンでも一般提供を開始しており、現在は世界16リージョンで利用できる。

 クラウドプラットフォーム事業部門幹部のマーク・ローメイヤー氏は、VMC on AWSでは「この1年間で顧客数が4倍になった」と語り、順調に成長していることを明かした。ちなみにそこで稼働する仮想マシン数(VM数)は「昨年比で9倍」に増えており、「新規顧客が増えただけでなく、既存の顧客もサービスの消費量をさらに増やしている」と説明する。

「VMware Cloud on AWS」も早期提供開始から丸2年を迎えた

 またVMC on AWSの利用目的は、既存アプリケーションのクラウド移行(全体のおよそ40%)、データセンターのリソース拡張/バースト(30%)、バーチャルデスクトップ(20%)に加えて、クラウドネイティブな次世代アプリケーションの開発/モダナイズ(10%)にも広がりつつあるという。

 「われわれも1年前はマイグレーション(というユースケースのアピール)にフォーカスしていた。しかし、顧客からの要望もあって次のステップ、つまりモダナイゼーションにもフォーカスし始めている」「従来はマイグレーションに開発者の時間や作業リソースを費やすことになり、マイグレーションが終わるまでの間は“アプリケーションのモダナイズはおあずけ”となっていた。しかしVMC on AWSを使えばそうした停滞がなく、すぐにモダナイズを始めることができる」(ローメイヤー氏)

Project Pacific(前回記事参照)など、今回はアプリケーションの「モダナイズ」を支援する方向性の新発表も相次いだ

 ちなみにヴイエムウェアが依頼しフォレスターが実施した調査によると、約3000VM(サーバー80台)構成のオンプレミス環境をVMC on AWSに移行することで、インフラも含めた3年間のオペレーションコストは59%削減できると試算された。同様にIDCの試算では、ネイティブクラウドに対応するかたちでアプリケーションのリファクタリングを行う場合と比較して、VMC on AWSでマイグレーションすることでコストは69%削減され、“数年単位”のマイグレーション作業が“数カ月単位”に短縮されるとしている。

米ヴイエムウェア クラウドプラットフォーム事業部門SVPのマーク・ローメイヤー(Mark Lohmeyer)氏

 VMworldにおけるVMC on AWS関連の新発表としては、オンプレミス/クラウド環境間の無停止マイグレーション支援サービス「VMware HCX(Hybrid Cloud Extension)」の機能強化、NVIDIAとのパートナーシップによるAI/データサイエンスワークロードへの対応計画がある。

 HCXにおいては、これまでのオンプレミス-VMC on AWS間だけでなく、AWSリージョン間でのマイグレーションもサポートした。さらに、8月上旬にリリースされたHCX Enterprise Version(追加ライセンス)において、Hyper-VやLinux KVM、パブリッククラウドなどの非vSphere環境で稼働するワークロードを、vSphere環境向けにコンバート(変換)してマイグレーションすることもできるようになっている。大規模環境のバルクマイグレーションにも対応済みだ。「これにより、既存のワークロードをシンプルな手法でハイブリッドクラウド環境に取り込むことができる」とローメイヤー氏は説明する。

2日目の基調講演では、HCXを使ったAWS/Azure間の無停止マイグレーションがデモで披露された

 またNVIDIAとのパートナーシップを通じて、機械学習/ディープラーニング/AIやデータアナリティクスのワークロード処理をVMC on AWS上にマイグレーション可能にする将来計画も発表された。「NVIDIA T4」GPUを備えたEC2のベアメタルインスタンスを利用し、vSphereに対応したGPU仮想化ソフトウェア「NVIDIA vComputeServer」を組み合わせることで、仮想化されたワークロードを処理できるようにするという。たとえばオンプレミスで大量のGPU処理が必要になったときに、HCXを使って一時的にワークロードをVMC on AWSにマイグレーションし、効率的に処理させることができるとローメイヤー氏は説明した。

 なおヴイエムウェアでは今年7月、BitFusionの買収合意を発表している。BitFusionは、GPUやFPGA、ASICなどのハードウェアアクセラレーターの仮想化ソフトウェア技術を持つ企業だ。たとえばホストマシンが搭載するGPUリソースを抽象化して多数の仮想マシンに分配したり、GPU非搭載ホストの仮想マシンからGPUリソースを使用したりと、柔軟かつ効率的な環境を実現する。この技術はオンプレミスとクラウドのいずれにも対応しており、買収完了後はvSphereプラットフォームへの統合を行うとしていることから、上述したNVIDIAとのパートナーシップとも合わせて、AI/アナリティクスワークロードのVMC on AWS(および他のVCPPパートナークラウドやオンプレミス環境)利用を加速させそうだ。

 パブリッククラウドという観点では、Microsoft Azure上でVCF環境を提供するクラウドサービス「Azure VMware Solutions」もある。今年4月の「Dell Technologies World 2019」で発表されたもので、現在は米国西部/東部とヨーロッパ西部の各地域でサービス提供を開始している。ゲルシンガー氏によると、さらに今年(2019年)中には米国南部/ヨーロッパ北部/オーストラリア/東南アジアで、また2020年第1四半期には日本とカナダで提供開始を予定しているという。

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