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絶不調の大坂なおみが「市場価値があるアスリート」1位に選ばれた理由

2019年08月28日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,相沢光一(ダイヤモンド・オンライン

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大坂なおみ
英スポーツ誌の「最も市場価値があるアスリート」1位に選ばれた大坂なおみ Photo:EPA=JIJI

 英国誌『SportsPro』は毎年、この時期に「最も市場価値があるアスリート50人」を発表する。このランキングで今年の1位になったのがプロテニスプレイヤーの大坂なおみ(21)だ。

 同ランキングはプロアスリートの才能はもとより将来性、話題性、キャラクター、スター性などを独自に判定し、それを市場価値として見たもの。つまり出場する大会や契約スポンサー、メディアといった関連事業に多大な収益をもたらす存在であることを示すランキングだ。大坂は昨年27位だったが、一気にトップまで上り詰めた。

全米・全豪を連覇後は不調に
それでも大坂なおみが市場価値トップ

 実際、昨年後半から今年はじめにかけての大坂の活躍は目を見張るものがあった。8月の全米オープンでは強敵を寄せつけることなく勝ち上がり、決勝でもかつての女王セリーナ・ウィリアムズを圧倒。20歳で4大大会を初制覇してしまった。10月のWTAファイナルズは1勝もできずに終わったが、年明けの全豪オープンで何度も追い詰められながら勝ち抜き、4大大会連覇を果たした。WTAランキングも1位になり、その快挙に日本では“なおみフィーバー”が起こったものだ。

 ところが、その後、不調に陥る。グレードの低い大会でも勝てなくなり、棄権も2回あった。そして迎えた5月の全仏オープンは3回戦で敗退、7月のウィンブルドン選手権にいたっては1回戦で当たった世界ランク39位の選手にストレート負けしてしまった。世界ランクは上位を争うライバルたちもポイントを稼げずにいるため、1位を維持しているが、全米・全豪を制した時の輝くような姿は見る影もない。

 それでも『SportsPro』誌は大坂の市場価値を1位にランクした。それは大坂の才能を高く評価しているからだろう。とくに全米、全豪を連覇したことは大きかったと思われる。4大大会は世界が注目しているし、すべてのテニス選手が目標としていることからいっても1回でも優勝するのは至難。それを大坂は連覇してしまった。その事実は世界を驚かせ、底知れない才能の持ち主であることを実感させたのだ。

 また、頂点に立った選手がその直後に不調に陥り、勝てなくなることは珍しくない。世界ランク1位の重圧は相当なものだという。追われる立場になり研究もされる。結果が出なければ精神的にも追い詰められるし、本来のプレーができなくなるのだ。

 加えて全豪後の大坂は体調も万全ではなかったようだ。春先には腹筋を痛めていたというし、左ヒザにも故障を抱えている。日本ではサーシャ・バインコーチが指導を離れた影響が不調の原因として語られているが、それだけではない複合的な要因が大坂を苦しめているのではないだろうか。

 海外の専門家らには、そうした不調も織り込み済み。4大大会を連覇したほどの実力者なら、どこかで不振から脱し復活すると見ているのだ。

 大坂には成績とは別の市場価値を高める要素もある。そのひとつがセリーナ・ウィリアムズを彷彿とさせる迫力満点のプレースタイルだ。時速200キロ近い高速サーブを打ち、抜群の身体能力で難しいボールにも追いつく。

「ベイビー・セリーナ」と呼ばれるように、ファンはこんなスタイルの選手が登場するのを待っていたのだ。また、優勝後のインタビューでは豪快さとは裏腹のお茶目なスピーチをして観る者を楽しませる。そうした大坂はすでに世界のファンの心をつかんでおり、それを含めて市場価値1位と判定されたはずだ。

最も市場価値があるアスリート
2位~10位に選ばれたのは?

 2位以下にランクされたアスリートの顔ぶれを見ても、判定がさまざまな要素を分析したうえで冷静に行われたものであることがわかる。日本では今ひとつ馴染みのない名前が多いが、相当な実力者が並んでいるのだ。

 2位=ラヒーム・スターリング(24)サッカー

 イングランド代表のFW。所属するマンチェスター・シティは同国1部プレミアリーグで史上初の国内3冠を成し遂げたが、その原動力となった。

 3位=ザイオン・ウイリアムソン(19) バスケットボール

 八村塁で注目された今年のNBAドラフトで全体の1位指名を受けた(ニューオリンズ・ペリカンズ)。今後のNBAを背負うともいわれるスター候補。

 4位=ミーガン・ラピノー(34) 女子サッカー
 
 7月に行われた女子サッカーW杯で優勝したアメリカ代表のキャプテン。得点王になりMVPにも輝いたが、それだけではない存在感を持つ。同性愛者であることを公言したり、「トランプ大統領に呼ばれても行かない」と言ったりするなど、常に発言が注目される。34歳と高齢ではあるが、注目度は抜群でファンも多い。

 5位=キリアン・エムバペ(20) サッカー
 
 2018年ロシアW杯で優勝したフランス代表FW。とてつもないスピードが世界中のサッカーファンの度肝を抜いた。現在パリ・サンジェルマンに所属。

 6位=ヤニス・アデトクンボ(24) バスケットボール
 
 NBAミルウォーキー・バックスに所属。昨シーズンMVPを獲得したNBAの若きスター。ギリシャ出身という珍しさも話題に。

 7位=ブルックス・ケプカ(29) ゴルフ
 
 全米オープンを2017・2018年連覇、全米プロ選手権を2018・2019年連覇と、この2年間でメジャー大会を4回制し、現在最も強いといわれている男子ゴルファー。

 8位=シャルル・ルクレール(21) F1ドライバー
 
 弱冠21歳にしてフェラーリのシートを獲得。まだF1優勝経験はないが、今季は2度ポールポジションを獲得するなど技術は超一流。モナコ出身のイケメンで、スターになる要素は十分だ。

 9位=ディナ・アッシャー・スミス(23) 陸上競技

 現在の英国を代表する女子短距離選手だが、それ以上に注目されているのは、モデルを務めるほどの美貌。

 10位=シモーネ・バイルズ(22) 体操

 2016年リオ五輪の女子体操にアメリカ代表として出場し、団体を含め4個の金メダルを獲得した現体操界の絶対女王。体が筋肉質なことを理由にいじめられた過去を告白し、話題になった。

 すでに輝かしい実績を持っている選手もいれば、これからに期待という選手もいるが、パフォーマンスやルックス、発言などが印象に残る存在ばかりで、確かに市場価値につながりそうだ。

MLB選手は50人中たった3人
大谷翔平39位ランクインの凄さ

 なお、日本選手では大坂のほかに大谷翔平(25・エンゼルス)が39位にランクされた。MLBの選手は50人の中に3人しかいない。25位にヤンキースの主砲アーロン・ジャッジ(27)、44位に2017年新人としては最多の39本塁打を打ったドジャースのコディ・ベリンジャー(24)が入っているだけだ。

 それを考えれば大谷がランクインしているのはすごい。野球への関心度が低い英国でも注目されているのだから、大谷の知名度は世界トップクラスといえる。

 ところで今、様々な対立がある韓国からは2人がランクされている。英国プレミアリーグ・トッテナムでプレーするサッカー選手ソン・フンミン(27)が30位、全英女子オープンゴルフで渋野日南子と優勝争いをしたコ・ジンヨン(24)が50位だ。

 そういえば渋野は20歳で初出場したメジャー大会・全英で優勝する快挙を成し遂げただけでなく、愛らしい笑顔で世界中のファンの心をわしづかみにした。市場価値が急上昇したことは間違いない。

 だが、全英女子の最終日は8月4日。このランキングが発表されたのは8月18日だから、間に合わなかったのだろう。今後も渋野が快進撃を続ければ、来年版でランクインする可能性は高い。

 8月26日にはテニスの全米オープンが開幕する。英国誌から市場価値ナンバー1と評価されたアスリート・大坂なおみの復活を世界のファンが願い、そのプレーを見つめることになる。

(スポーツライター 相沢光一)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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