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「五十肘」に悩む中高年多数、PC作業も妨げる痛みの治療方法とは

2019年08月15日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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加齢と切っても切れない悩みのひとつが“体の痛み”。なかでも、肩関節に炎症を起こして腕が上げにくくなる「肩関節周囲炎」は、多くの中高年が発症することから「四十肩・五十肩」と呼ばれている。しかし、注意すべきは肩の痛みだけではない。肘部分に刺すような痛みを感じる「五十肘」に悩む中高年も少なくないという。いったい「五十肘」とはどのような症状なのだろうか。(清談社 真島加代)

マウス操作で肘に痛みが!
「五十肘」の典型症状とは

五十肘の治療法にはどんなものがあるでしょうか?
マウス操作で痛みを感じる五十肘は、ビジネスパーソンにとっては厄介な症状。早期治癒のために気をつけるべきポイントは? Photo:PIXTA

 デスクワークをしている最中「マウスをつかんだ瞬間に肘に痛みが走った」なんて経験がある人もいるだろう。その症状は、中高年に多く発症する「五十肘」の症状である可能性が高いという。

「五十肘は俗称で、正しくは『上腕骨外側上顆炎』という肘外側に起こる腱付着部の炎症や損傷です。もともとは、テニスでバックハンドを打つ際の動作が影響していることから『テニス肘』とも呼ばれています」

 こう話すのは、武蔵小杉整形外科院長の小谷野康彦氏。上腕骨外側上顆炎はテニスやゴルフ愛好家のあいだでは有名な疾患なのだとか。

「テニスのバックハンドを打つ際、ラケットを持っている腕を手首ごと手の甲側に持ち上げる動きをします。この動作を繰り返すと『手関節伸筋』という筋肉の腱が骨から始まる肘外側部分(上腕骨外側上顆)に何度も牽引負荷がかかり、同部位が損傷して痛みを感じるようになるのです」

 テニス肘を患うと、手の甲を上にした状態で物をつかんだり、タオルを絞る動作などで手首や指に力を入れたりしたときに、肘の外側に痛みを感じるという。パソコンのマウス操作にも支障が出る。しかも、テニス経験の有無に関係なく、中年期以降は上腕骨外側上顆炎を発症しやすいと小谷野氏は指摘する。

「上腕骨外側上顆炎の主な発症原因は二つ。一つは、加齢によって筋肉のしなやかさが低下することです。二つ目は、手関節伸筋の腱付着部の劣化(退行変性)が原因とされています。使いすぎもありますが、加齢の影響が大きく、中高年層の発症が圧倒的に多いのが特徴ですね」

治療で重要なのは
肘が痛む動作を避けること

「五十肘の治療でもっとも重要なのは、日常生活で“痛みを起こす動作”をなるべく避けることです。スマホでの通話やパソコンのキーボード、マウスなどの過度な使用は控えてください。また、手の甲が上になった状態で物をつかむと肘が痛みますが、手のひらが上を向いていると痛まないので、手の向きを工夫する必要があります」

 そのほか、手持ちカバンを手指で持つと患部に負担がかかるので、肩掛けカバンやリュックの使用がおすすめだという。ビジネスパーソンにとってはなかなかの難題だが、早期治癒を望むなら無理は禁物だ。

「両手でタオルを絞るときや、ペットボトルのフタを開けるときには、薬指と小指の2本のみを使うと痛みを感じにくくなります。親指と人差し指、中指の3本は使わないのがコツですね。テニスやゴルフをする際のグリップにも注意しましょう」

 整形外科では、これらの生活動作指導をはじめ、さまざまな治療を行うという。

「低出力超音波を用いて傷ついた組織の修復を促し、手関節伸筋には低周波を使って筋肉のリラクセーションを行います。また、消炎鎮痛湿布や軟膏などの外用薬を処方するのが一般的ですね」

ステロイドは回数限定で使用
話題の「PRP療法」とは?

 日常生活に支障が出るほど肘が痛む場合は、ステロイド注射を使用することもあるが「注射をするには注意が必要」と、小谷野氏は説明する。

「ステロイド注射は、痛みを瞬時に取り除くという点で、もっとも効果を実感しやすい治療法です。しかし、すぐに痛みがとれることで『治った』と思い込み、発症前と同じ、もしくはそれ以上に手首を使ってしまい、薬効が薄れたときに再発しやすくなることが危惧されます。また、ステロイドの使いすぎは腱の劣化や変性を助長する可能性が否定できないので、3~5回という回数制限をして注射します」

 そのほか、五十肘の治療に適していると考えられているのが「PRP療法」だ。メジャーリーガーの大谷翔平選手が靭帯損傷の治療の際にPRPを注射したことでも、注目を集めている。

「PRP療法とは、自身の血小板を多く含んだ血漿を患部に注入する治療法です。血小板には、ケガや組織が損傷したときに患部を修復する働きがあることから、通常は修復されにくい『腱付着部』にPRPを注射することで改善が見込めます。ただし、日本ではPRP療法は健康保険の適応になっていない自由診療なので、費用は高額になりますので、PRP療法を行っている医療機関に直接お問い合わせください」

 また、PRP療法は個人によって効果の感じ方も異なるので注意が必要だ。そして、さまざまな治療を受けても痛みが改善しない場合は、手術を視野に入れなければならないという。

「傷んだ部位を切除して、関節内にも『炎症』や、患部に『引っかかるヒダ』が認められた場合は、内視鏡を使ってキレイに取り除く手術が行われます」

 五十肘は誰しも発症する可能性がある身近な疾患だが、放置しつづければ重症化してしまう危険な病でもあるのだ。

肘から手首のストレッチを
習慣化して五十肘対策

 五十肘の治療と予防には「ストレッチが欠かせない」と、小谷野氏はアドバイスする。自宅で行えるストレッチ方法についても聞いた。

「片腕を肩の高さに上げて前に出し、最大限まで肘を伸ばしましょう。伸ばしたほうの手のひらは下に向け、反対側の手で伸ばしたほうの手の甲を手首側に向けて、10秒ほど押さえます。その後、手のひらを上に向け、同じく反対の手で手首側に10秒ほど押さえてください」

 患部の周囲を、痛気持ちいい程度にマッサージするのも有効だ。そのほか、手関節を固定させる装具や「テニス肘バンド」を装着すると、手関節伸筋への負担を和らげることができるとのこと。

「テニス肘バンドを使用する場合は、手首を最大限、上にそらした状態でバンドを締めると効果的です。五十肘を発症していない人も、常日頃から体全体のストレッチをして痛みを引き起こす動作を控えることが、五十肘の予防につながりますよ」

 加齢とともにしなやかさを失い、発症リスクが高まる五十肘。まだ発症していない人も、ストレッチの習慣化が予防のキモになるのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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