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オンプレミスからの転換と“エンタープライズクラウド”OCIの価値、データ規制強化を追い風に

オラクル、SaaSでも国内データセンター提供開始に大きな期待

2019年08月09日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは2019年8月7日、プライベートイベント「Modern Cloud Day Tokyo」において、クラウドアプリケーション(SaaS)事業戦略に関する記者説明会を開催した。オンプレミスにある基幹業務アプリケーションのSaaS移行を促進する施策が順調に進んでいることをアピールしたほか、前日に発表した東京/大阪リージョンからのサービス提供開始計画をあらためて紹介し、国内市場におけるSaaSビジネスへのインパクトと期待を語った。

現在Oracle Cloudで提供されているSaaS群
日本オラクル 専務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括のピーター・フライシュマン氏日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューションエンジニアリング事業本部の原智宏氏

ソフトウェアライセンス売上からSaaS売上への転換が急速に進む

 フライシュマン氏はまず冒頭、日本市場におけるオラクルのSaaSビジネスは現在「勢いづいている」と述べたうえで、SaaS事業の売上推移グラフを示した。グラフを見ると、この数年間で旧来のソフトウェアライセンス売上からSaaS売上へと急速に転換し、そのうえで成長も維持していることがわかる。SaaS事業は「適切な方向に向かっている」と、フライシュマン氏は語る。

日本オラクルにおけるSaaS事業の推移。過去数年間で、従来のソフトウェアライセンス売上からSaaS売上への急転換を果たしてきた

 次にフライシュマン氏は、基幹業務アプリケーションをSaaSに移行することで、顧客企業は3段階でメリットを得られることになると説明した。まず第1フェーズでは「Economize(コストカット)」、次の第2フェーズで「Digitize(業務のデジタル化)」、そして最終フェーズでは「Innovate(イノベーション)」が実現するというビジョンだ。

 「まず、オンプレミスのハードウェアやデータベースの導入、運用にかかる投資を削減できる。IT予算の80%はメンテナンスに費やされていると言われるが、このメンテナンスの予算を『変革のための予算』に変えていく。次に、われわれがSaaSで提供するさまざまなサービスや機能を活用し、業務プロセスを改善、自動化して『時間を解放する』。この時間を、データのさらなる分析やビジネスへの適切なアドバイスへと振り分けられる。さらにこの時間を、社員一人ひとりがイノベーションに割くこともできるようになるだろう」(フライシュマン氏)

基幹業務アプリケーションのSaaS移行を通じて、単なるコスト削減だけではないメリットを得られると強調した

 顧客企業がオンプレミスに保有する基幹業務アプリケーションのSaaS移行を支援するため、オラクルでは1年前から「Soar to the Cloud」というアセスメント/コンサルティング/移行自動化ツールをパッケージしたプログラムを提供し、顧客に“最後のアップグレード”を促してきた。SaaSに移行すれば、その後は企業側でのアップグレード作業は不要になる、という意味だ。

 フライシュマン氏は、このSoarではオンプレミスにある「Oracle E-Business Suite(EBS)」などの構成やチューニングを分析/抽出したうえでSaaSに適用するものだと説明し、「SaaS移行によって(自社独自開発の)機能が制限されるのでないかと考える顧客も多いが、実際はその逆で、より多くの機能が使えるようになる」とアピールする。

 Soarプログラムを通じて、現在までにグローバルで2000件を超えるSaaS移行を手がけてきたことも明かされた。日本国内でもすでに数十件の実績があり、「さらにここから劇的に、5倍、6倍とその数を増やしていきたい。(オンプレミスにオラクルアプリケーションを持つ)顧客企業のかなりの割合が、今年(SaaSへと)移行するだろう」と期待を語った。その背景には、Oracle Cloud東京/大阪リージョンの開設、さらに金融や通信といった業界における国内データ保持化への規制強化に向けた対策といった動きがあるという。

基幹業務アプリケーションのSaaS移行を支援する「Soar to the Cloud」プログラムを通じて、移行にかかる期間とコストを削減できると訴える

Oracle Cloud Infrastructure上でサービスが稼働する価値を強調

 続いて登壇した原氏はまず、SaaS移行によって、これまで5年から7年もかかっていたアプリケーションのアップグレードを四半期サイクルに短縮できると説明し、動きの速い市場の中において「システムが“足かせ”とならず、顧客企業のイノベーションを支援できる」とそのメリットを強調した。

 AI/機械学習技術に対するアプローチについては、製品の中にAI/機械学習を活用した機能をあらかじめ組み込んで提供するのがオラクルの方針であることを説明する。

 「たとえば社内で新しいプロジェクトを立ち上げたい場合、社内からどんな人材を集めてくればよいか。そういうケースでは、HCM Cloudから社員個々人の経歴を、CX Cloudから担当顧客や営業実績を、ERP Cloudからは収益のデータを集めてきて、単一のAIエンジンにかけて候補者をリコメンド(推薦)させる。このように、製品の中にイノベーションを組み込んでビジネスのイノベーションサイクルを後押ししていく、オラクルはいま、ここに一番注力している」(原氏)

 また原氏は、フライシュマン氏が説明したSaaS移行メリットの“3つのフェーズ”、Economize/Digitize/Innovateのそれぞれで効果を挙げている国内事例を紹介した。「ここに示した事例のとおり、大企業から中堅企業まで、またインダストリも幅広く、オラクルのSaaS導入が進んでいる」(原氏)。なお同日には、三菱ふそうトラック・バスにおけるHCM Cloudの導入事例も発表している。

SaaS導入効果の例として、イビデン、タイヨー、三菱電機の導入事例を紹介した

 最後に原氏は、オラクルのSaaSが「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上で構築/提供されるサービスであることの価値にも触れた。OCIそのものが特徴とうたう高いセキュリティとパフォーマンス、SLAに加え、IaaS/PaaSと統一されたエクスペリエンスやシームレスかつ低レイテンシな連携も実現する。東京/大阪リージョンでのSaaS提供開始に伴うインパクトについては、次のように期待を示した。

 「すでに国内でも『もう少しで4ケタに届くくらいの3ケタ』のSaaS顧客企業がいるが、現状ではほとんど国外のデータセンターを利用している。こうした顧客から、国内に基盤を移したいという声は多くいただいている。またピーター(フライシュマン氏)が説明したように、FISCやNISCの新ガイドラインに影響を受ける金融や社会インフラ系産業の顧客では、国内データセンターに対する要望が強い。(東京/大阪リージョンからの提供開始計画の)アナウンスをしてから、多くの問合せをいただいている」(原氏)

オラクルのクラウドアプリケーション群が「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上で提供されることの価値も強調した

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