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相続法、大改正した真の意図は「夫に先立たれた妻」のため!?

2019年08月05日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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親が死んだ後の日常を、想像してみたことはありますか? 『週刊ダイヤモンド』8月10・17日合併特大号の第1特集は、「完全保存版 家族を困らせない 相続」です。相続にまつわる話は難解でよく分からない。何から始めればいいのか検討が付かない。親の死後のことなんて、家族で話しづらい。そうした印象を持っている人も多いのではないでしょうか。本特集では、そのような印象を徹底的に払拭するための設計がなされています。

改正相続法の狙いは何か──
今の相続にまつわる問題が浮き彫りに

相続法を大改正した真の意図は「夫に先立たれた妻」のためか
Photo:PIXTA

 「もし自分が死んだら、なけなしの財産を巡って争いが起きるのではないかと不安でした。でも、これからは少し安心できそうです」

 そう安堵の表情を浮かべる都内の会社員、高橋邦彦さん(仮名・59歳)は、30代のときに離婚を経験、ほどなく今の妻(後妻)と再婚した。後妻とは子宝に恵まれなかったものの、自宅マンションで夫婦仲良く二人暮らしを続けている。

 そんな日々の中、頭をよぎるのは、後妻よりも先に寿命が尽きるだろう自分の死後のトラブルだ。問題は、先妻との間に子供が1人いること。先妻とはけんかの末に離婚し、養育費は最後まで払い続けたものの、子供と再会することはなかったという。

「もちろん子供のことを思わない日はありません。ですが、子供の方は自分に良い感情は抱いていないだろうし、自宅をはじめとする財産は今の妻と築いたもの。自分の死後、今の妻と先妻との子供の間で争いが起き、妻の老後の生活費や家を失うようなことになれば、死んでも死に切れない」。

 悩める高橋さんに光明をもたらしたのが、2018年7月に、およそ40年ぶりに大改正された相続法だ。

知らなければ損をしかねない
“落とし穴”がある

 改正相続法の目的について、税理士法人レガシィの陽田賢一パートナー税理士は、「夫に先立たれた妻を想定した高齢の配偶者の権利拡大と、故人の遺志を示せる遺言書の普及にある」と言う。その背景にあるのは、加速度的に進む高齢化と、相続を巡る紛争の増加だ。とりわけ遺産分割の紛争(調停)件数は、この10年で約30%も増えている。

 実際、これまで高橋さんのような事情を抱える場合を典型として、夫の死後、遺産分割で妻が泣く泣く自宅を売却するようなケースが少なくなかった。しかし、法改正により、2020年4月以降は、残された配偶者(妻)が遺産分割後も住み慣れた自宅に住み続けることのできる権利、「配偶者居住権」が新設される。この権利を行使すれば、少なくとも高橋さんの後妻が住む場所を失う心配はなくなるわけだ。

 また、この配偶者居住権に先立ち今年7月、結婚20年以上連れ添っている夫婦の自宅については、相続財産の対象外にすることも可能になった。高橋さんのような不安を抱える人でなくても、日本人の財産の4割を占め、遺産を巡る家族の争い、いわゆる「争族」の大きな種になってきた不動産に関わる変更だけに、改正の中身を知っておくに越したことはない。

 これら法改正の主だった7つの変更点をまとめたのが上図である。今年1月、それまで全て手書きしか認められなかった「自筆証書遺言」の作成について、部分的にワープロやパソコンによる作成を認め、今年7月には主要な変更点の大半が一挙に施行された(下図参照)。例えば、遺言がある場合の遺産の最低限の取り分(遺留分)は原則的に金銭支払いになり、義理の両親を介護した長男の妻(嫁)など相続人以外でも遺産が請求可能になった。

 “争族”に無縁な大半の人にとって、今回の改正相続法が影響する事態はそう多くはない。だが、知らなければ損をしかねない変更点も多く、新制度を活用するに当たり、見落としがちな“落とし穴”もある。

 たとえば、自分の死後、遺産分割で妻が自宅を奪われないようにするために、結婚20年以上の夫婦を対象に自宅を贈与し、遺産分割の対象外とする「自宅の特別受益対象外」。しかしこれが相続人の「遺留分」を侵害している場合は、対象外とならない可能性もある。そのほかにもこうした「相続法改正の落とし穴」は多く、安易に飛びつかないように本質を見極める必要がある。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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