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「Box Skills Kit」国内導入で見えたBoxのAI戦略

ビジネスの世界でBoxが最強のAI活用基盤になるかもしれない

2019年08月02日 13時00分更新

文● 指田昌夫 編集●羽野

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「BoxからAIを使う」という発想

 本イベントの開催と合わせてBox Japanは、Box内のデータと外部の機械学習サービスを連携するフレームワーク「Box Skills Kit」の国内提供を開始したことを発表した。

 これを使うと、企業がBoxに貯め込んだ画像や音声をそこに置いたまま、目的に合わせたAIによる分析ができるようになる。当初、AI活用の典型的な機能として「画像分析」「音声分析」「動画分析」の3つのサービスを用意した。

 基調講演のゲストとして登壇した日本IBM取締役専務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長の三澤智光氏は、Box Skills Kitに触れ「ドキュメントや画像などの非構造データの分析にAIは不可欠だが、信頼性の高いBoxから外部のIBM Watsonを呼び出し、タグ付け、意味づけを行うことができる。いよいよビジネスドキュメントのインテリジェント化がはじまる」と期待を述べた。

 Box Skills Kitの最大のメリットは、企業がAIを使う際に、分析するデータを格納するデータベースを作る必要がないことだ。これまで、AIの利用には、まず分析するデータをどう準備するかに非常に大きな手間とコストがかかった。だがBox Skills Kitでは、すでに業務でBoxを使っていれば、自然とデータも貯まってくるわけだから、そのデータをAIでどう活用するか、から検討を始めればいい。この差は大きい。

 Box開発の有力パートナーの1社である三井情報では、株式会社ポケモンと共同で行なった実証実験のデモを披露した。大量のキャラクターを撮影した画像をBoxに用意し、そこに対してMicrosoft AzureのAIサービス「AKS(Azure Kubernetes Service)」による機械学習をかけることで、画像ファイルに自動的にキャラクターの名前を入れ込むシステムを開発。結果はメタデータとしてタグ付けされ、一覧表示内でも検知したキャラクターの名前が表示される。

三井情報がポケモンと行った実証実験の説明画面。画像にキャラクター名のタグを自動付与して一覧表示している

 開発会社にとっても、データの準備に工数を取られなくてよいため、AIそのものの開発に持てる力を集中できる。結果的に費用も抑えて開発時間も短く済む。

現場主導によるAI活用への道

 そもそもBoxに格納されているデータは、分析のために収集された使い道のはっきりしないデータではない。全てが業務に必要なコンテンツである。そのコンテンツが、Box Skills Kitによって自動的に分類やタグ付けされれば、さらに業務が効率よくなるはずだ。逆に言えば、業務改善を目的にしてAIを活用すればいい。

 業務アプリケーションとAIの連携というと、Salesforceが自社のアプリケーションにAIによる予測やスコアリング機能を内蔵した「アインシュタイン」がある。Box Skills Kitの考え方もそれに似ているが、あらゆる業務領域と複数のAIエンジンの組み合わせまで拡張できる点では大きな可能性を感じる。その半面、これを活用するためには、Boxを理解し、かつAIに強い開発企業が必要だ。そのため、Boxではここで紹介した三井情報をはじめ有力な開発会社と協力してAIのビジネス導入を進めていく方針だ。

 データを格納するアプリケーションも自由、分析するAIエンジンも自由という全く新しいAIの利用法が始まろうとしている。この環境をうまく使いこなせば、ビジネス現場主導のAI活用は大きく進む可能性がある。各ソフトウェア企業がしのぎを削るAIのビジネス活用だが、今後Box Skills Kitの事例が増えてくれば、BoxがAI活用の基盤として注目度を増しそうだ。

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