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赤字のメルカリ、「メルペイ」普及のため鹿島アントラーズ買収は得か損か

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記者会見するメルカリの小泉文明社長(右)と鹿島アントラーズ・エフ・シーの庄野洋社長(中央)
記者会見するメルカリの小泉文明社長(右)と鹿島アントラーズ・エフ・シーの庄野洋社長(中央) Photo by Hiroyuki Oya

フリーマーケットアプリ大手のメルカリがサッカーJ1の鹿島アントラーズを買収する。赤字続きのメルカリが、畑違いのサッカービジネス参入で狙うのは、競争が激化しているキャッシュレスサービス「メルペイ」の普及だ。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「小泉社長の悲願」地元愛をアピール

 「テクノロジーで変革を起こし、鹿島アントラーズをグローバルでナンバーワンのチームにしたい」———。

 7月30日、東京都文京区の日本サッカー協会ビルで開催された記者会見。フリーマーケットアプリ大手メルカリの小泉文明社長は高らかに宣言した。

 メルカリはサッカーJ1の「鹿島アントラーズ」を買収する。鹿島の運営会社、鹿島アントラーズ・エフ・シーの株式の61.6%を、約16億円で日本製鉄から取得し、子会社化する。公正取引委員会の承認を得た上で、8月30日に買収が完了する見通しだ。
 
 メルカリは2017年から鹿島のスポンサー契約を締結。今回の買収の経緯について、「スポンサーとして意見交換する中で、どちらから(買収を持ちかけた)ということはなく、自然発生的に今回の話はまとまった」と小泉社長は説明している。

 メルカリの関係者によれば、今回の鹿島の経営権参画は「小泉社長が数年前から語っていた悲願」だという。会見でも小泉社長は、鹿島の本拠地に近い茨城県麻生町(現行方市)出身であることを強調。「中学生時代に巨大なサッカースタジアムができ、ジーコのプレーを見てファンになった。サッカー中心に地域を活性化したい」と“地元愛”をアピールした。

 ただ、メルカリが現在事業の3本柱として掲げるのは国内メルカリ事業、米国メルカリ事業、キャッシュレス決済「メルペイ」事業だ。そして、国内メルカリ事業は黒字であるものの、米国メルカリ事業とメルペイ事業での出費がかさみ、19年6月期の業績は137億円の赤字の見込みだ。なぜサッカーという畑違いのビジネスに踏み込むのか。

16億円で買った広告塔

 鹿島買収でメルカリが目論むのは、キャッシュレス決済「メルペイ」の普及だ。急増する「〜ペイ」の名がつく決済サービスの中で、今年2月にサービスを開始したメルペイは後発組。登録数は200万を超えたが、競合の背中は遠い。

 数多くある決済サービスで、自社のものを使ってもらう有効な手法の一つは、使わざるを得ない場を強制的に生み出すことだ。

 例えば、「PayPay」を展開するソフトバンクは、ヤフオクドームで開催される福岡ソフトバンクホークスの試合で、PayPayで支払いをすると生ビールが半額になるなどのキャンペーンを展開。また、「楽天Pay」を展開する楽天は、ヴィッセル神戸や楽天イーグルスのスタジアムをキャッシュレス化するなど、自社決済に囲い込む場として活用している。

 「グッズや飲食販売でのキャッシュレス決済の利用や、チケットのペーパーレス化でスタジアムが快適になる。決済は日々利用するローカル色が強いサービス。スタジアムをショーケースとして、新しいチャレンジの場として活用できる」と小泉社長は相乗効果を強調。メルペイ経済圏の本拠地としての期待を寄せる。

 また、国内メルカリ事業についても、「メルカリの利用者は20~30台の女性が中心。40台以上の男性にアプローチできるサッカーの可能性は大きい」(小泉社長)と広告塔としての役割を狙っており、鹿島の選手にメルカリで出品してもらうことなども考えているという。

 昨年6月に上場し、約600億円を調達したメルカリ。米国メルカリとメルペイを強化すべく人材獲得などを進める一方で、旅行などの新規事業開発を担っていた子会社ソウゾウを7月に解散。また、シェアリング自転車サービス「メルチャリ」事業も譲渡し、事業の選択と集中を進めていた。

 決算で赤字が続いていることについて、小泉社長は「赤字というPL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)やキャッシュフローのバランスと事業の成長が重要だ」と訴える。メルペイ普及のために投じることになる、16億円という鹿島の買収額。ソフトバンクグループがPayPay普及のために投じた2度にわたる「100億円キャンペーン」と比べれば、メルカリにとって“お得な”買い物なのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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