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大船渡高・佐々木投手の登板回避で、高野連は変革に動くのか?

2019年07月29日 06時00分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

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大船渡高(岩手)の国保陽平監督は163キロの速球で注目された佐々木朗希投手を、決勝戦で登板させなかったため、さまざまな議論を呼んだ。写真は岩手大会決勝・花巻東-大船渡。閉会式で行進する花巻東の選手たちを見詰める大船渡の佐々木朗希投手(中央)=7月25日、岩手県営野球場
大船渡高(岩手)の国保陽平監督は、163キロの速球で注目された佐々木朗希投手を決勝戦で登板させずに大敗したため、さまざまな議論を呼んだ。写真は岩手大会決勝・花巻東-大船渡。閉会式で行進する花巻東の選手たちを見詰める大船渡の佐々木朗希投手(中央)=7月25日、岩手県営野球場 Photo:JIJI

令和初、第101回目の夏の甲子園が8月6日から開催される。記念となる大会への出場を目指し、全国各地で地方大会の熱戦が繰り広げられているが、高校野球を巡る問題はいろいろとくすぶる。指導者による体罰は根絶できず、今春のセンバツに出場した2校が監督交代という事態になった。また新潟県高校野球連盟(高野連)の動きに端を発した投手の投球数制限の取り組みは、大改革に至っていない。一方、現場レベルでは、昔からの習慣だった丸刈りから脱しようとする新たな動きも出てきた。(ジャーナリスト 戸田一法)

センバツ直前の監督交代

 今春のセンバツに出場した春日部共栄(埼玉)と松山聖陵(愛媛)の監督が、部員に対し暴力をふるっていたことが1月、相次いで明らかになった。

 春日部共栄の本多利治監督は、昨年4月1日と3日に行われた練習試合で、見逃し三振をした当時2年生と3年生の部員3人の顔をビンタしたり、蹴ったりしていた。部員にけがはなかった。

 本多監督は1980年の野球部創設時から指導するベテランで、学校の調査に「体罰と分かっていたが、中心になってほしい選手に気合を入れるためだった」などと事実関係を認めていた。

 本多監督は日本学生野球協会から4ヵ月の謹慎処分を受け、監督は同校野球部出身でコーチや部長も務めた植竹幸一氏に一時交代した。

 一方の松山聖陵の荷川取秀明監督は、部員に暴力をふるう映像が動画投稿サイトにアップされていた。

 動画は昨年9月頃、野球部の寮で撮影されたとみられ、荷川取監督が1年生部員の顔を小突き、頭を壁に押しつける様子が写っていた。時間外の外出を繰り返していた部員の生活態度を注意していたとされる。

 荷川取監督は沖縄尚学の内野手として99年のセンバツに出場し、優勝。2004年から松山聖陵の監督に就任し、寮で部員と一緒に寝食を共にしていた。

 荷川取監督は2ヵ月の謹慎処分を受け、コーチの中本恭平氏が監督代行として采配を振るった。

 このほかにもセンバツに出場した龍谷大平安(京都)の顧問も、部員への暴力があったとして3ヵ月の謹慎処分となり、ベンチ入りできなかった。

 こうした強豪校だけでなく、相変わらず監督の暴力に関するニュースが途絶えることがないのが現状だ。

投球数制限に進展なし

 投手の肩や肘の故障を予防するため、投球数を制限する日本高野連の動きも鈍い。

 新潟県高野連は昨年12月、甲子園に関係しない今春の新潟県大会で、投球数が100球に達した投手を次のイニングから登板できないとする独自の方針を決めた。故障予防や選手の出場機会を増やすのが狙いで、昨年の18歳以下のアジア選手権でも採用されたルールだ。

 日本高野連も昨春のセンバツから選手の負担軽減などのため、延長13回以降タイブレークを導入したが、新潟県高野連はさらに踏み込んだ。

 この方針が表面化して今年1月、日本高野連が新潟県高野連から経緯について説明を受けたが、日本高野連では否定的な意見が相次いだとされる。

 日本高野連は2月の理事会で「勝敗に影響を及ぼす規則は全国で足並みをそろえて検討すべきだ」などとして、新潟県高野連に再考を要請。

 新潟県高野連は3月、日本高野連が「投手の障害予防に関する有識者会議」を4月に発足させるなどとする取り組みを受け、実施を見送っていた。

 日本高野連は今夏の甲子園から選手の負担軽減のため、休養日を1日から2日に増やし、準々決勝翌日のほか、準決勝翌日も休養日としていた。

 少しずつ投手の負担に対応している印象を与えたが、4月の有識者会議は1試合の投球数制限については上限を設定しない方針とした。少人数で戦力の劣るチームが不利になるというのがその理由という。

 代わりに一定の日数で合計投球数に上限を設ける方向で調整し、9月に具体的な日数や投球数が検討されるが、抜本的な改革までには至らないという意見もある。

 一方、予選となる地方大会では投手を守ろうとする監督の自主的な動きもあった。

 163キロの速球で注目された大船渡(岩手)の佐々木朗希投手を、国保陽平監督は決勝戦で登板させなかった。結果、大船渡は米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手やマリナーズの菊池雄星投手らを輩出した花巻東に2−12で大敗した。

 国保監督は試合後、理由として「故障を防ぐため」と説明した。佐々木投手は準決勝があった7月24日、129球を投げて完封。21日の4回戦では194球を投じていた。

 国保監督はまた「投げられる状態にあったかもしれないが、私が判断した」「筋肉の張りという程度で、痛みとかはなかった」「朝の練習で伝えると『分かりました』と答えた」などとも話していた。

 国保監督は筑波大学を卒業後、アメリカ独立リーグでプレーした。その中で選手に対するマネジメントを学んだとしても不思議はない。

 この采配に関しては、賛否はもちろんあるだろう。しかし、国保監督も甲子園に行きたかったはずだ。それでも佐々木投手の安全を優先した。その判断は、誰も批判はできないはずだ。

脱丸刈りの動きが加速

 日本高野連には頭髪に関する規則はないが、昔からの習慣で丸刈りにしているチーム、野球部員が圧倒的多数を占める。

 一方で、丸刈りが嫌で野球部には入らないという声は昔からあった。野球人口が減少しているいま、その傾向に歯止めをかけようと「脱丸刈り」の動きも出てきた。

 春夏通じて8回の甲子園出場を誇る新潟明訓は昨年末、丸刈りにする「暗黙の了解」を撤廃した。新潟明訓は「丸刈りが嫌だから野球をやらない」という生徒がいなくなるようにと、踏み切ったという。

 今夏の甲子園出場を決めた秋田中央の佐藤幸彦監督は「何も考えず坊主頭にするのはやめないか」と部員に問い掛け、今年4月、丸刈りを廃止していた。

 丸刈りからただ伸びただけのような選手、スポーツ刈りの選手……。試合前後に整列し、帽子を取って挨拶する選手の髪形はさまざまだ。

 秋田県高野連理事経験者によると、選手らは「髪形は関係ないところを見せる」と話していたという。昨年の金足農業に続き、秋田県代表チームが今夏も注目されることになりそうだ。

 球児が髪を伸ばすことに嫌悪する高野連関係者は多いが、実は前述の花巻東も昨年秋から丸刈りを廃止している。こうした流れは間違いなく加速するだろう。

 変わるものがあれば、変わらないものもある。変えるべきものがあれば、変える必要がないものもある。

 ただ、こと高校野球に限れば、変えていくべきものはまだまだ残されているような気がする。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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