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普通はやらないことばかり、日本でしかできない製品だった

あり得ないを積み上げた、世界最小最軽量の完全ワイヤレス「GRAIN」

2019年07月26日 15時00分更新

文● ASCII

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いまいちイケけてなかった零号機
でもこれがなければGRAINはできなかった

── ここまでたどり着くまでにどのぐらいの時間がかかりましたか?

岡田 開発を始めたのは1年半ほど前です。最初はここまで小さくなくて、こちらが零号機となります。見れば分かると思うのですが、イケてないですよね(笑)。しかし、どうせやるなら、アップルの「AirPods」と喧嘩する気でやらないとダメ。勝てないまでもイーブンのできじゃないとダメだと思うんです。そこで零号機はあきらめることにしました。ただ、これはこれでまったくのムダにはならなかったんですね。

左が零号機、右がGRAIN。部品点数も開発当初に比べて、半分に減らした。

── というと?

岡田 われわれに完全ワイヤレスイヤホンを設計できる実力があることが示せます。先ほどの電池についても最初は袖にされていたのですが、この零号機を見せ、デザイナーが徹夜して作ったコンセプト図と一緒に「本当にやりたいのはこっちなんだ」と説明しました。そのうえで「これが実現できるかどうかは、あなたにかかっている」と説得し、少数ではありますが、サンプルを分けてくれることになりました。その部品を使ってまた試作機を作る。……こういう既成事実の積み重ねで、進んできたプロジェクトなのです。

世に出ることはなかったが、零号機があることによって、完全ワイヤレスイヤホンが作れる実力を示せたという。

── 下町ロケットのような世界って本当にあるんだなと思いました。そもそも岡田さんってどんな経歴の人ですか?

岡田 ふだんはウェアラブル製品や家電の企画開発をしています。詳細は言えないのですが、大手メーカーに勤めた後に独立して、これまでガジェット系の製品を多く開発してきました。イヤホンの開発経験もあります。

── 現在プロジェクトを進めているのは?

岡田 メインメンバーは私と、デザイナーの2名です。試作機が完成して、いよいよ世の中に出せるタイミングになったとき、会社が必要だなという話が出て、私が代表になることになりました。ただし、コンセプトを実現するためには、部品を作ってくれる人の協力がないといけません。先ほどから話しているような部品を作れる技術を持った人は本当に限られています。7~8社の手を借りていますが、部品ごとにサプライヤーも全部違うんです。

寝ながら使える超小型イヤホンも実現したい

── GRAINの音を聴いてみてこの小ささでも、十分にいい音が出ていると思いました。有線モデルを出しても売れるのでは?

岡田 みんなに言われます。このサイズなら“寝ホン”(寝ながら使えるイヤホン)としていいんじゃないかという話もあり、デザイナーと検討中です。イヤピ(イヤーチップ)を取り替えたら、密閉型にも開放型にもなるものを考えています。直径4mmのドライバーのできが大変いいので、GRAINの一般販売に成功した暁には、他社の製品でも採用してもらえるよう、うちからも発信してお客様探しのお手伝いをしていきたいですね。

── シンプルなホワイトの筐体ですが、ぎっしりと詰まった中の部品を見せたスケルトンモデルなども出してほしいですね。

岡田 プロジェクトが成立したら、筐体を透明にしたプレミアムモデルを作れたらいいなと考えています。アクリルの削り出しで、ガラスと同じ透明度を持ったものにします。全て手作業で磨くのが大変なので、ケースだけで20万円以上は軽くかかってしまいます。あくまでも「実績が出せたら」という話にはなりますが、限定でもやれればいいですね。

部品点数は最小限に抑えているが、小型の筐体の中に部品がぎっしり詰まったものであることが分かる。

── お話を聞いて、大手企業ではできないことをやる。日本人ならではのモノづくりをする、そんな印象も持ちました。

岡田 私はもともと個人で企画開発請負をやっていたのですが、市場には横並びの製品しかなく、大手企業でも“売れると確証のある企画”しか通りません。「こんな状況は面白くないな」と常々感じていたのです。その一方、これまで日本のモノづくりを支えてきた人たちも年を取ってきている。みんな、僕らから見ても親の世代で、町工場で後継者もいなかったりするのです。そんなある日、付き合いのある人たちとの飲み会で「俺たちも5年後はいないぞ。何かをやるならいまだ」という話が出ました。「最初で最後の機会になるなら、いまやるしかない」と。そんなふうに考えたのがきっかけですね。

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