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ASCII STARTUP ACADEMY 第52回

IoT×病院設備で何が起こる? 医療のAI/IoT改革と潜在ビジネス

病院の全フロアにIoTを入れたら、残業時間がゼロになった

2019年07月30日 13時00分更新

文● 貝塚/ASCII.jp

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キャピタルメディカ・ベンチャーズ 代表取締役の青木武士氏

IoT×病院設備で何が起こる?

 日本能率協会が、「HOSPEX Japan 2019」(ホスペックスジャパン)における「医療×AI/IoTゾーン」への出展募集説明会と合わせて、「IoT×病院設備で何が起こる? 医療のAI/IoT改革と潜在ビジネス」と題したセミナーを開催した。

 HOSPEX Japan 2019は、医療福祉機器・設備に関する専門展示会。今年で48回目を迎える「日本医療福祉設備学会」の併設展示会となる。会期は11月20日から22日までの3日間。場所は東京ビッグサイトだ。

 登壇者はリコー デジタルビジネス事業本部 センシングソリューションセンター 所長 兼 スマートコムラボラトリーズ 代表取締役社長の伊藤政彦氏と、キャピタルメディカ・ベンチャーズ 代表取締役の青木武士氏。

 本稿では、両者から紹介された各種IoTと病院設備面でのコラボレーションを中心とした先端的な取り組みをレポートする。

IoTで業務効率が大幅に改善、残業がゼロに

 まずはリコーの伊藤政彦氏によるプレゼン。

 プリンティングを中心としたビジネスを展開するリコーと、IoTのイメージはすぐに結びつかないかもしれない。伊藤氏は、「世の中の流れとして、紙の需要が減ってきている。そんな中で推し進める新規事業のひとつとして、医療や介護にとどまらず、人や物の動きを可視化して分析するというビジネスを展開している」と解説。

リコー デジタルビジネス事業本部 センシングソリューションセンター 所長 兼 スマートコムラボラトリーズ 代表取締役社長の伊藤政彦氏

 具体的には、医療、防災、大学、オフィス、街づくり(スマートコムラボラトリーズ事業)といった現場において、IoTを導入し、業務課題や経営課題を抽出し、改善するためのソリューションを展開。医療や製造の分野では、RFID技術(ID情報を埋め込んだタグを用いる技術)を採用、大学やオフィスといった現場では、スマートフォンのアプリとビーコンを組み合わせ、より簡易に導入できる仕組みを取り入れている。

ソリューションのイメージ

 また同社では、RFIDやビーコン、アプリを用いて集めたデータを解析して、クライアントがすぐに業務に活用できる状態にして渡すためのアルゴリズムを開発(データクレンジング技術)。ビッグデータがそのまま抽出できるだけではなく、データ収集後の、現場での活用までを考えたソリューションを提供していることを強調した。

すでに導入実績がある

現場からは、好意的な意見が多いようだ

 同社のソリューションは、医療現場に採用医療法人社団 札幌道都病院にも導入された実績がある。地下1階から地上5階まで、廊下やオフィスも含めた全フロアに導入し、スタッフや患者、医療機器がいまどこにあるのかが、ナースステーションからリアルタイムに確認できる仕組みを構築した。

 導入の結果、ネガティブコストが大幅に低減できたとする。ほかの施策も含めての結果になるそうだが、経営の立場からは、スタッフの残業時間がゼロにできたという声があったとのこと。スタッフ目線では、処置時に患者の有無を確認してから病室へ向かうことが可能になったり、スタッフの居場所を確認してから、ワークフローを組み立てられるようになったりしたことで、スタッフの業務効率が大幅に改善したという。

 看護師の病院内の移動は何万歩にも及ぶそうで、同社のソリューションを導入してから「足が疲れにくくなった」という声も聞かれたようだ。

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