このページの本文へ

第3のビールの成長は幻だった?「6月の変」で業界に衝撃

2019年07月17日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,重石岳史(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
キリンビール/布施孝之社長
看板商品をアピールするキリンビールの布施孝之社長。新ジャンルの『本麒麟』は好調を維持し続けるが… Photo by Yoko Suzuki

日本人のビール離れが進み、市場の縮小が続く中、唯一の成長カテゴリーとみられていたのが「第3のビール」と呼ばれる新ジャンルだ。だがこの6月、その成長が「幻」だったと思わざるを得ない異変が起きた。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

「第3のビール」の販売量が3.6%減

 第3のビールの成長は幻だったのか――。

 ビール大手4社の1~6月の酒類販売量が出そろい、ある数字に業界関係者の注目が集まっている。業界紙『日刊醸造産業速報』によれば、ビール類の累計販売量は前年同期比マイナス0.8%の微減となった。ビール類の市場規模は14年連続で縮小が続いているのが現状で、その傾向通りの数字にサプライズはない。

 注目は、「第3のビール」と呼ばれる新ジャンル(麦芽以外を原料とするアルコール飲料)が、6月単月で前年同月比マイナス3.6%と減少に転じた点だ。

 ビール類の販売量は、ビール、発泡酒、そして新ジャンルの合算だ。このうちビールと発泡酒は減少を続けているが、新ジャンルは昨年6月に前年同月比16.1%増という高い伸びを記録して以来、一貫して増え続けていた。ところが、今年6月に1年ぶりの前年割れとなってしまったのである。

 この異変をどう見るか。

 一過性の減少か、あるいは新ジャンルの成長が止まったのか――。さまざまな観測が業界を駆け巡る。

 一部にあるのは天候不順が原因との見方だ。確かに6月下旬の平均気温は前年より2度ほど低かった。また今年は6月の営業日数が前年より1日少なく、これらがマイナス要因となった側面はあるだろう。

 だが、そうした外部要因よりも、そもそも新ジャンルの成長自体が「幻だった」(大手ビールメーカー幹部)可能性も指摘されている。

 そう思わざるを得ない、統計に大きなインパクトを与えた出来事が、昨年6月に起きているからだ。それがキリンビールによる、イオンのプライベートブランド(PB)の受託製造だ。

 イオンPBの新ジャンル「トップバリュ バーリアル」はそれまで、韓国メーカーが製造していた。そのためバーリアルは、国内4社の累計販売量からは除外されていたのだ。だが、キリンが製造を始めるようになり、その分を販売量に取り込み始めたのが昨年6月のことである。

 つまり昨年6月から今年5月まで、新ジャンルの販売が伸びていたかに見えていたのは、単にイオンPB分を集計対象にしたが故の“数字のマジック”であり、実際には新ジャンルの需要が拡大していたわけではない、という見方だ。

 この1年間の新ジャンルの販売増はPBを上乗せした“追い風参考値”であり、それが無風となった真の実力値が、3.6%減という数字に現れたというわけだ。

ビールから「RTD」への流れ止まらず

 新ジャンル躍進の“立役者”とされていたのが、キリンが昨年発売した新ジャンル『本麒麟』。記録的なヒット商品であり、1~6月の販売量は前年同期比80%増と絶好調を維持している。ただ、一方で同じくキリンの新ジャンル『のどごし』は12%減だ。新ジャンルの市場が拡大していないのだとすれば、単にブランド同士の“食い合い”が起きているに過ぎない。

 さらに深刻なのは、PBの増加が及ぼす収益悪化への影響だ。

 キリンの19年1~3月期決算は、新ジャンルの販売量が大幅に増えたにもかかわらず、ビール類の限界利益が12億円減少している。

 キリンはPBの販売量を公表していないが、安価なPBの売り上げ増が利益を圧迫しているとみられる。何しろバーリアルの本体価格は350ミリリットルで税抜き78円。まさに薄利多売の典型だ。

RTD陳列イメージ
手軽に飲めるRTDがビール系飲料のシェアを奪っている Photo:PIXTA

 ビール類の販売が落ち込む一方で需要が伸び続けているのが「RTD」だ。「レディ・トゥ・ドリンク」の略語で「割ったり混ぜたりする必要がなく、栓を開けてすぐ飲めるアルコール飲料」を指す。キリンの『氷結』やサントリーの『ストロングゼロ』などが人気商品で、安価で高アルコール、一缶で酔えるコスパの高さが消費者に受け入れられている。

 大手4社もRTDに注力してはいるが、あるメーカー幹部は「RTDは参入障壁が低く、開発競争も激しい」と嘆く。

 各社の悲願は、何といっても利益率が高いビールへの需要回帰だろう。そのため“ビール風”の新ジャンルをエントリーユーザーにも手に取ってもらい、ビール離れの歯止め役となることが期待されていた。

 だが、実は新ジャンルがその役割を果たしておらず、ビール離れの受け皿の底が割れているのだとすれば、戦略の見直しを余儀なくされることになる。

 果たして新ジャンルの販売量は7月以降にどう動くか。秋には消費増税も実施される。ビール会社にとっては試練の下半期となりそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ