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ジャニー喜多川さんの優れた「人材育成力」、V6を例に読み解く

2019年07月11日 06時00分更新

文● 福島宏之(ダイヤモンド・オンライン

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ジャニー喜多川氏死去を伝えるスポーツ新聞
スポーツ新聞各紙は1面でジャニー喜多川さんの訃報を一斉に報じた Photo by Akiko Onodera

巨星墜つ――。くも膜下出血で入院中だったジャニー喜多川さん(ジャニーズ事務所/代表取締役社長・プロデューサー)が7月9日に死去した。享年87。1962年(昭和37年)のジャニーズ事務所創業から57年――日本のエンターテインメント界を牽引し、数々のスターを生み育ててきた“キング・オブ・エンターテインメント”が遺したものとは? *タレント名、敬称略。(ダイバーシティ&インクルージョンマガジン「オリイジン」編集長、元「テレビ・ステーション」編集長 福島宏之)

優れた人材育成力は
企業経営者や人事担当者の学びとなる

 7月9日火曜日夕刻、ジャニーズ事務所の代表取締役社長・ジャニー喜多川さんが、解離性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血のために逝去した。先月6月18日の都内病院への緊急搬送からおよそ20日、一昨日の23時30分すぎに、その訃報がニュース速報としてテレビ画面を駆け抜けた。

 元号が平成から令和に変わって2ヵ月あまり、時代の節目となる、この大きなニュースは日本のエンターテインメント界にとって、言葉では表現しきれないほどの衝撃だ。

 これからしばらくは、ジャニー喜多川さんを中心に、ジャニーズ事務所と所属タレントの情報がメディアにあふれ、“ジャニーズ帝国を築き上げた偉大な人物”がこの世から去ってしまった喪失感が高まっていくだろう。

 ご存じのように、ジャニー喜多川さんは、「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」としてギネス世界記録に認定されているが、デビュー予備軍やタレントの個々の能力を見出し、伸ばしていくマネジメント力(人材育成力)は、企業経営者や人事担当者の学びとなる部分が多い。

 ジャニーズJr.の中からメンバーをピックアップし、グループとしてデビューさせていく力――。

 例えれば、スポーツチームの監督として、適材適所のプレイヤーを選抜し、フィールドに立たせ、なおかつ勝てるチームに育てあげる力量は、当代隋一のものであり、ギネス認定された功績は前代未聞、前人未到のものである。1つのチーム(グループ)だけではなく、数えきれないほどのチーム(グループ)を創り上げた事実は、「最も多くのグループをプロデュースし、成功させた人物」としてギネス認定されてもおかしくない。

グループの中でも
V6は少し異色の存在だった

 グループの中でも、ジャニー喜多川さんが63歳の時、1995年9月にデビューさせたV6は少し異色の存在だ。

 同じグループの中に、年長組の20th Century(トニセン=坂本昌行・長野博・井ノ原快彦、デビュー時平均年齢22.0歳)、年少組のComing Century(カミセン=森田剛・三宅健・岡田准一、デビュー時平均年齢15.3歳)という2つのユニットが存在し、メンバー最年長の坂本昌行と最年少の岡田准一の年齢差は、実に「9歳」もある。同じジャニーズ事務所の嵐が3歳差、関ジャ二∞が4歳差、Hey!Say!JUMPが3歳差、Kis-My-Ft2とSexy Zoneが6歳差、King & Princeが4歳差という年齢構成を見ても、V6というグループに世代間差のあることが分かる(V6に次ぐのがTOKIOの8歳差)。

 これは、企業なら、部門横断プロジェクトに新卒社員とオーバー30(30歳すぎ)の中堅社員がいる状況で、プロ野球チームなら、同じベンチに大卒ドラ1ルーキーとベテラン時期を迎えるプレイヤーが共存する状況だ。

 年齢差は、そのまま人生経験(生きてきた月日<つきひ>数)の差であり、取り巻く生育環境や世代ごとの文化・流行の違いが異なる価値観を生む。そうして、ともすれば、異なる価値観は軋轢(あつれき)をよび、人間関係の溝を作ってしまう。だから、結束力が必要な音楽バンドや芸能グループにとって、年齢差の多寡はとても重要なのだ。

 V6の結成秘話はメンバー自身の口から語られたこともあるが、真相は定かではない。

 しかし、ジャニー喜多川さんの何らかの意思と決断で、“トニセン+カミセン=V6”というグループが創られたことは間違いなく、その後、年齢差のあるV6メンバーの誰一人も欠けることなく、およそ四半世紀もの間、活躍を続けていることは注目に値する。

多様な個人の輝きが
グループとしての魅力を創り上げている

 テレビCMでも耳にするが、現在は「多様性の時代」だ。多様性は「ダイバーシティ」という言葉に置き換えられ、“ダイバーシティ&インクルージョン”という経営ワードにおける「ダイバーシティ」は、年齢・性別・国籍・学歴・職歴・性的指向・性自認(性同一性)…といった、個人や集団間におけるさまざまな違いを表す。

 もともと、人は異質なものを嫌い、自分と同質な価値観を求め、集い合う生き物だ。

 その傾向はSNSの普及でいっそう顕著になり、自分と意見が相違する者を心の深層で排除していく。だからこそ、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)の実現は難しく、「多様な価値観や発想からイノベーションが生まれる!」と言われても、多くの人にはピンとこない。

 しかし、メンバー間の年齢差があり、デビューまでのキャリアも大きく異なるV6の存在は、“さまざまな個性がそれぞれの能力の最高値を見せながら総体(グループ)で輝くことの美しさ”を思い知らせてくれる。

 いや、実はそれはV6に限らない。ジャニー喜多川さん率いるジャニーズ事務所がビルドするチームの多くは、多様な個人の輝きが集合組織(グループ)としての魅力を創り上げているのである。2006年に期間限定でデビューしたKitty GYM(ジャニーズJr.4人の「Kitty」と山下智久&タイ出身兄弟デュオGOLF&MIKEの3人による「GYM」が合体した計7人)は、まさに、年齢も国籍も超えた“ダイバーシティ”ユニットだった。

 芸能界において、ジャニーズ事務所のグループを里程標とするように、性別にかかわらず、あらゆるアイドルグループやユニットが生まれては消えていくが、メンバーの均一性よりも不一な個性をウリにする方向性は、ジャニー喜多川さんのチームビルデイングに倣っているともいえる。

喜ばせることに徹した
ジャニー喜多川さんの巧みな演出

 ダイバーシティをテーマにした雑誌「オリイジン」(ダイヤモンド社刊)のインタビューで、V6のリーダー坂本昌行は、グループのメンバーがよく話し合い、意見をぶつけ合うと語っている。グループ全員で話す時には言えないことも、1対1で話をすると素直な意見を言えることもある、と。

 まさにこれこそが、ダイバーシティ社会における相互理解の姿勢であり、対人コミュニケーションの理想像だろう。年齢のジェネレーション・ギャップを埋めるヒントもここにある。

 インクルージョン(受容)のキーワードは「個性の尊重」――。

 人材養成において、それを生涯実行し続けたジャニー喜多川さんの強い思いは、事務所所属のタレントとファンに対する深い愛情へと昇華していた。

 そう、ジャニーズ事務所のタレントが出演するコンサートや舞台を一度でも観た者なら分かるが、来場者を楽しませ、喜ばせることに徹したジャニー喜多川さんの巧みな演出は、タレントとファンへの愛情あってのものだった。

 令和元年(西暦2019年)7月9日、日本のエンターテインメント界は、唯一無二、不世出のプロデューサー・演出家を失った。繰り返すが、それは、言葉では表現しきれないほどの衝撃だ。

 けれども、哀しみの淵にあるタレントやファン、メディア関係者に向かって、ジャニー喜多川さんはこう告げるだろう。

 Show must go on!

 約半世紀にわたり、芸能界を牽引し続けた“キング・オブ・エンターテインメント”ジャニー喜多川さんのご冥福を心からお祈り申し上げたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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