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京都で相次いだ警察官の重大不祥事、大阪に次ぎ「2つの府警」の堕落

2019年07月10日 06時00分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

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京都府警で不祥事が相次いでいる
京都府警で不祥事が相次いでいる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

京都府警で重大な不祥事が相次いで発覚し、揺れに揺れている。5日、山科署の巡査長が特殊詐欺被害の緊急通報を悪用して、高齢男性から約1100万円を詐取したとして詐欺罪で起訴され、本部長が記者会見で謝罪する事態に発展した。また同日、警察学校初任科生の巡査が自宅に大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法尾違反(所持)の疑いで逮捕された。巡査は柔道の世界ジュニア選手権優勝者で、柔道の指導教官として将来を嘱望されていた。一方で昨年8月、大阪府警富田林署から容疑者が逃走し、本部長が謝罪した事件をご記憶と思う。一般の方はご存じないと思うが、実は警察本部長の謝罪というのは極めて異例のことだ。2つの「府警」にとって夏は受難の季節なのだろうか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

警察本部長の謝罪の重み

 最近は警察官の不祥事が珍しくなくなり、ニュースで報じられても驚かなくなってしまったが、通常は警察署であれば副署長、本部であれば監察官(警察内部の不祥事などを調査する部署・役職)が「再発防止に努める」「指導、教養を徹底したい」などのコメントを出すぐらいだ。

 かなり深刻・重大な事案で全国ニュースになるレベルの不祥事であったとしても、通常は警務部長(警察本部のナンバー2)が記者会見で釈明するのが普通で、本部長が記者会見を開いて謝罪するというのは、実は年に1度あるかないかだ。

 昨年4月、滋賀県彦根市の交番で19歳の巡査が上司の巡査部長を射殺し逃走した事件でも、巡査逮捕の記者会見では警務部長が謝罪しただけだった。数日後の定例記者会見では、鎌田徹郎本部長が「極めて遺憾」と謝罪したものの、県警は徹底して撮影を認めなかった。

 2017年5月に特殊詐欺事件の証拠品として保管していた現金8572万円が、広島県警広島中央署会計課の金庫から盗まれたのが発覚し、そして、関与したとみられる男性警部補が死亡した後の今年4月の記者会見では、石田勝彦本部長が「県民と社会のみなさまに深くおわび申し上げる」と謝罪したが、質疑応答に立ち会わず退席していた。

 警察本部長がカメラの前で謝罪するというのは、実はそれほどまでに重いのだ。2つの府警は、それが立て続けに起きた。万引きや盗撮などといった不祥事とは、レベルが違うのだ。

ダブルパンチ

 山科署巡査長の詐欺事件は6月15日、京都府警捜査2課が高橋龍嗣被告(38)=詐欺罪で起訴、懲戒免職=を逮捕した。起訴状によると、伏見署の交番に勤務していた昨年11月、京都市伏見区の無職男性(78)に「現金を預かる」と偽って現金をだまし取ったというものだ。

 11月8日、男性が寄付のため金融機関を訪れ、高額の引き出しをしようとしていたことから金融機関側が特殊詐欺を疑い通報。駆け付けた高橋被告が理由などを聞き、さらに「自宅にも500万円ある」などと資産状況を把握。「銀行に預けた方がいい」などと言って詐取したとされる。

 さらに14日には、男性の希望通りに現金を払い出すよう金融機関に依頼して、金融機関から引き出した現金と自宅にあった現金の計約1100万円を詐取した、という手口だ。

 高橋被告は男性に「犯罪に関する可能性があるため、預かって捜査する」と説明したが、口座や資産が犯罪に利用されていると説明して高齢者をだますのは、特殊詐欺の常とう手段。現金を詐取した後は、男性に「体調はどうですか」などと定期的に気遣うような連絡をしていたという。

 男性は生活保護費を受給していたが、少しずつ貯金し、資産がたまってきたため市役所に相談。受給の打ち切りが決まっていた。高橋被告は「お金を持っていたら生活保護は受けられないですよね。お金を預かって調べる」などと言って、不正受給の疑いを示唆して男性を脅していたとみられる。

 高橋被告は当初、府警の聴取に「借りただけでだましていない」「投資に使った」などと容疑を否認していたが、後に「最初からだますつもりだった」と全面的に認めていた。詐取した現金は投資や借金返済、生活費でほぼ全額を使い果たしていた。

 この事件で高橋被告が起訴された5日、植田秀人本部長は記者会見で「官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中、このような事案が発生したことは言語道断であり、極めて遺憾。被害者の男性、府民の皆様に深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

 そう、問題は「官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中…」だったのだ。

 高額の引き出しや振り込みをする利用者への金融機関の声掛けは、特殊詐欺被害防止の最大の抑止策。警察庁によると、18年の特殊詐欺被害は約364億円とされるが、金融機関職員の声掛けなどで約143億円の被害が阻止できたとされる。

 金融機関にとっては高額であっても、預金の引き出しは顧客の自由であり「何かございましたか?」などと声掛けをするのは、本来は「余計なお世話」だ。しかし、これだけの社会問題になり、警察の働き掛けもあって協力するという流れになったのだ。

 全国紙社会部デスクによると、府警幹部は「今まで時間をかけて金融機関側に理解していただいて協力を得てきたのに、警察官がそのノウハウを利用して詐欺をやったのでは、申し開きができない」と頭を抱えているという。

 植田本部長がカメラの前で謝罪したのは、実は「被害者や府民」ではなく、全国の警察官と金融機関に対してだったというのが本当のところだろう。

 一方、警察学校初任科生の巡査、梅北亘容疑者(23)が逮捕された事件は、警察の情報収集能力そのものが疑われるだけに、内部のショックは大きい。

 というのは、逮捕に至った経緯が警察学校内で同期の腕時計を盗んだとして窃盗容疑で実家を家宅捜索したところ、乾燥大麻が見つかったという事件だからだ。逮捕容疑は大阪府守口市の実家に乾燥大麻を所持していたというもので、吸引用とみられるパイプも見つかった。

 梅北容疑者は今年4月の採用で、高校時代の14年、柔道の世界ジュニア選手権55キロ級で優勝していた。一般の警察官と違って交番などに配置されるのではなく、術科(柔道、剣道、逮捕術、けん銃射撃,白バイ乗務)を専門とする術科特別訓練(特練)の指定警察官(特練員)として期待されていた。

 平たくいえば、容疑の段階ではあるが、将来の幹部候補が実は泥棒で、違法薬物使用者だったということを警察がキャッチできていなかったということだ。

 前述の全国紙デスクによると、窃盗、薬物のいずれも常習的な手口らしい。大麻は「自分で吸うために実家に置いていた」と容疑を認めているという。

 人事・採用担当の警務部からすれば、窃盗を専門とする捜査3課、違法薬物対策の組織犯罪対策3課は、いったい何をしていたのだと怒り心頭だろう。

 そういう意味で京都府警はいま、大変なことになっているらしい。

富田林署、樋田被告は今

 冒頭で紹介した大阪府警富田林署から逃走した樋田淳也被告(31)や同署の近況なども、ここでお伝えしておこう。

 その後、府警の検証や樋田被告に対する捜査は続いた。

 樋田被告が逃走した約1週間後の昨年8月21日夜、枚方署の20代の男性巡査長が酒に酔って「似た男を見た」と110番していたことが発覚。周辺で似た人物は確認できず、巡査長は「組織に迷惑を掛けた」として依願退職した。

 樋田被告が逃走時の留置担当者は、禁止されているスマートフォンを持ち込み、アダルト動画やプロ野球ニュースなどを閲覧していたことが判明した。府警は担当者を懲戒処分にしたが、理由は「スマホを持ち込んだことが理由。閲覧した内容は関係ない」と説明していた。

 いずれもトホホなオマケ付きで、留置担当者含め署長ら7人が懲戒処分を受けた。富田林署では、樋田被告が壊した留置場の接見室アクリル板が今年4月までに修理され、現在は容疑者の収容が再開されている。

 樋田被告は強制性交や放火、窃盗など計43件の容疑で逮捕・送検され、21件の罪で起訴された。もちろん、逃走した「加重逃走罪」も含まれる。

 大阪府内で盗んだ自転車で中国・四国を転々としていた樋田被告。初公判の期日は決まっていないが、全国紙デスクによると、さすがに起訴内容を否認する元気はないだろうとのことだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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