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五輪チケット「セカンドチャンス」に応募すべきではない理由

2019年07月06日 06時00分更新

文● 小林信也(ダイヤモンド・オンライン

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五輪チケット「セカンドチャンス」に応募すべきではない理由
今回、セカンドチャンスは朗報とも思えるが、人気種目は含まれていないなど、五輪組織委員会の思惑が見え隠れしています Photo:JIJI

応募者へのサービスと思いきや
組織委員会自身の救済措置だった!

「1枚も当たらなかった!」という悲痛な叫びが毎日の挨拶がわりのようだった数日を経て、東京五輪チケットの「セカンドチャンス実施」の報が届けられた。

「前回、当たった人は応募資格なし。全部外れた人だけが申し込める」と聞いて、「よっしゃ!」と叫んだ人は多いだろう。いわば、敗者復活戦。チケット販売に関してはいろいろな不手際や不満もあったけれど、今回の緊急決定は珍しく東京五輪組織委員会の思いやりを感じる措置ともいえる。第一印象としては、歓迎こそすれ、文句はない。

 秋に予定されていた「先着順販売」も、「抽選方式に見直された」とのこと。どう考えても先着順販売では混乱必至。ネットの熟達者が有利になるのは否めないので、当初からなぜその方式を選んだのか疑問は残るものの、現段階で見直しを決めた英断には拍手を送りたい。

 さてセカンドチャンスだが、少し内情を探り、実際に申し込むことを考えると、「組織委員会からのサプライズ・ボーナス!」と手放しで賞賛すべき対応でもなさそうだ。

 まず、なぜ実施を決めたのか? どうやら、当たったけれど購入しなかったという人が想定よりも多く、売れ残ったチケットの数が組織委員会の予想を大きく上回った。それがセカンドチャンス実施の大きな理由だったらしい。ということは、1枚も当たらなかった応募者へのサービスや配慮ではなく、五輪組織委員会自身を救済するための措置ではないか。本当に、どこまで運営側本意なのかと哀しくなる。

セカンドチャンスで
申し込むべき競技種目は何か

 気を取り直し、「それでも入手できるなら」と、申し込みの準備を始めるとしよう。販売種目はこれから発表されるが、「収容人数の多い種目の予選ラウンド」が主体で、人気種目の決勝などは今回のセカンドチャンスの対象から外れている。

 あくまで予想だが、野球、サッカー、ソフトボールなど、観客席の大きな種目の予選ラウンドが売りに出されるのだろう。私自身6枚当たった水球、周囲で「当選した」の声を複数聞いたボートなど、倍率が低かったのか、実施種目やセッションの多い種目などは今回も出てくる可能性はある。

 さて、これらの中で何を選ぶか?

 セカンドチャンスで申し込めるのは「1人1種目(1セッション)だけ」。当選確率の高そうな、つまり人気が低そうな種目に賭けるのか、倍率は高くても、自分が行きたい種目を選ぶのか、悩ましいところだ。

 もし私に助言を求められたら、「人気種目、自分が本当に行きたい種目を選んだほうがいい」と言うだろう。なぜなら、本当は興味のない種目がもし当たっても、いざ当選したときの喜びは低い。しかも、「セカンドチャンスで当たった」という実績が残ってしまう。

 秋からの2次販売が、先着順から抽選方式に変更された。このとき、「前回すべて落選した人には優遇措置が検討されている」との報道もある。方法はまだ明らかではないが、私が担当者なら、「全部外れた人の当選率は2倍に設定、当たった人の当選率はマイナス20%、初めて申し込む人の当選率は1倍」といった差をつける。それだけで、前回ガッカリした人が笑顔になる確率は実質2倍以上になる。

 ところが、「セカンドチャンスで1枚当たった」という実績がここに加えられると、これからまだ販売されるであろう「本当に欲しい準決勝や決勝のチケット」の当選確率が下がってしまう。それならば、セカンドチャンスではあえて当てに行かず、外れ覚悟で、「また外れた実績」を増やしたほうが秋からの抽選が有利になる可能性もあるのではないか。

 もちろんこれは私の勝手な予想だけれど、「前回も外れた、セカンドチャンスも外れた、どうしてくれるの!」という悲鳴が今から聞こえるようだ。その時、「両方外れた人は、当選倍率を2.5倍」に設定されるかもしれない。もちろんあくまで予想なので、されないかもしれないが、それほど行きたくないチケットを当てるよりは、玉砕覚悟で好きな種目を選ぶほうがいいとすすめる理由はここにある。

スポーツライターから究極の助言
「ボイコットしよう」

 最後に、視点を変えよう。

「買いたい、当てたい、行きたい!」

 日本国民は泥沼にはまるように、プラチナチケットをちらつかされて弄ばれているように見える。

 セカンドチャンスの概要をよーく吟味すると、やはり東京五輪組織委員会は決して国民の思いに沿っていない。重大な秘密からあえて国民の視線をそらし、気づかれないうちにけしかけ、チケット販売を完遂しようとする魂胆が浮かびあがってくる。

 以前の原稿(「東京五輪「チケット予約狂想曲」、申し込んでわかった不親切な実情」)でも書いたが、予選ラウンドの組み合わせなど日程の詳細はまだ発表されていない。日本代表や日本選手が出場できるかどうか、決まっていない種目もある。

 また、同日でも開催場所が違う、時間帯が複数あるなど、日本選手がどのセッションに登場するかはまったく見えていないのだ。仮に水球の予選ラウンドを応募するにしても、午前、午後、夜、どのセッションを選ぶのか? 午後のセッションを選んで当選しても、日本代表の試合が午前または夜に割り当てられたら、お目当ての日本代表は見ることができない。こんな怪しい売り方がフェアと言えるだろうか? 

 このような、組織委員会本位のチケットセールスに乗せられてはいけない。だからあえて「究極の助言」をしよう。

「セカンドチャンスはボイコットしよう!」

 ホイホイと、売り手の甘言にのってはいけない。何しろ、余ったチケットを定価で売ろうとしているのだから。

 日本代表が出るかどうかもわからない予選ラウンドのチケットに手を出す必要はない。堂々と、秋からの抽選販売に臨もう!

(作家・スポーツライター 小林信也)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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