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日本の若い女子特有!?現物とかけ離れた「盛り」顔が流行る理由

2019年07月04日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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スマートフォンのカメラや写真アプリなどデジタル技術の進展により、いまや写真を加工する「盛り」は当たり前になった。特に若い女の子の間では顕著だが、実物とあまりに違うことに違和感を覚える人も少なくないだろう。著書『「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版)があるメディア環境学博士の久保友香氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

自分らしくあるために
「盛る」女の子たち

「盛り」の努力を認めて欲しいと話す女の子は多いのです
「男性にモテたいのだろう」と思うのは早計。実は「盛る」女の子たちの大半がむしろ、男性の目など意識していない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 一般に「盛り」という言葉で思い浮かぶイメージといえば、目が大きくなる「プリクラ」や写真加工アプリといったところだろう。

 女の子たちは、当然かわいいと感じているようだが、男性や年配の人にとっては、過剰とも思える“デカ目加工”をした女性は別人にしか見えないため、違和感を抱く人も少なくないはずだ。

 この男女の認識のズレは、何が原因なのか。久保氏はこう分析する。

「2008年ごろから、プリクラ機が作る顔の『目が大きくなりすぎて別人すぎる』と話題になりましたが、それを利用する当の彼女たちの間では、あくまでも『盛れている』範囲内だと捉えられていました。それは、彼女たちはコミュニティー内の友人たちのデカ目の顔写真を見続けているので慣れがあります。盛り全般にいえることは、コミュニティーごとの基準があり、日々その基準が変化していくため、外部の人にはなかなか理解できないのが難しいところです」(久保氏、以下同)

 男性は「男にモテるために女の子は盛る」と勝手に思いがちだ。

 しかし、盛ることに熱心な女の子たちに話を聞くと、そういう子はほとんどいないのが実態だという。

「盛る理由として、彼女たちが口をそろえて言うのは『自分らしくありたい』ということ。コミュニティーの外にいる人には同じにしか見えないのですが、コミュニティー内の人同士には、それぞれ差異や個性が見えるわけです。この盛りがかわいいのかどうかは、わかる人にわかればいいというスタンス。盛りに一生懸命なことに、男性への意識は基本的にありません」

すっぴんの美しさよりも
「盛り」の努力を認めてほしい

 久保氏によると、盛りには、大きく3つの技術分野が関与しているという。

 第一は、ブログやSNSのようなインターネット上のコミュニケーション技術。第二は、自分を撮影して加工する、デジタルカメラ技術やデジタル画像処理技術。第三は、つけまつげやカラーコンタクトレンズなど生体を模倣するプラスチック成形技術だ。

 この3つの技術分野を「ソーシャルステージ」「セルフィーマシン」「プラスチックコスメ」と名付けて、あわせて「シンデレラテクノロジー」と久保氏は定義している。

 そして、現在の女の子たちの「盛り」の主戦場は、このシンデレラテクノロジーを駆使したインスタグラムだ。

「女の子たちは、『まねをされたい』願望がとても強い。『いいね』の数よりも、写真を『保存される』数をすごく気にします。この数を知るために、インスタグラムが公式に提供している分析ツール“インサイト”を使っている子も少なくありません。承認欲求といっても、『みんなに私のことを認めてもらいたい』というような感じではない。それよりも多くの人に発信することで、どこかにいる『私のことを認めてくれる』人とか『私と同じ感覚、世界観を持っている』人を探しているようです」

 女の子たちにとって「盛り」とは、かわいく見せることが大前提ではあるものの、美意識を共有できる友達探しやコミュニティーづくりのためのコミュニケーション手段のようだ。

 また、根源的にこの「盛り」は、日本の伝統文化も関係しているのではないかと、久保氏は指摘する。

「やはり、日本人に根強い、ものづくりの精神も深く関わっていると思っています。たとえば、フランスの女性は、加工しない、ナチュラルなままの自分に、もっと執着があると聞きます。しかし、日本の女の子に話を聞くと、すっぴんを褒められるよりも『盛り』の努力を褒めてくれる方がうれしいと話す子が多い。ものづくりの努力を評価し合うのです。日本の女の子たちは、『自分らしくありたい』と言いますが、最初から個性を表現するのではなく、まずは型を『守』り、それができたら『破』って個性を表し、さらに、それができたら『離』れて新しい型を作り、多くの人にまねされることを求めるという『守破離』の美意識があるように感じられます」

顔出しNG女子が増えて
“シーン盛り”がトレンドに

 盛りの流行は日々刻々と変化している。最新のトレンドとして、顔だけ盛るのではなく、ロケーションなども含む“シーン盛り”が人気だという。

「そもそも日本の女の子は自分の顔を公開することに抵抗があるので、顔を盛ることの目的には、顔を隠すこともありました。かつてガラケーのカメラは小さく、顔などの小さな範囲しか写すことができませんでしたが、スマホのカメラは広範囲をきれいに写すことができます。それにより、顔は見えないくらい小さくなるよう、シーン全体を撮影し、写真全体で盛るのがはやっています」

「そうすると遠く離れた場所から写真を撮ることになるので、“自撮り”よりも“他撮り”が主流になりつつあります。女子大生などの間では、カメラの腕前が良い男子学生、いわば“シャッターくん”と一緒に出かけて撮影してもらう子もいますが、誰にもそんな便利な人がいるわけではないので、人の集まるインスタ映えスポットに行き、近くにいる人に頼んで、連射撮影してもらったりするなど、試行錯誤しています」

 これからは自撮りでシーン盛りできるようになるくらい、デジタル技術も発展していくことは想像に難くない。

 ただ、ふと考えてみれば、自然美を尊ぶフランスなどの西洋の国よりも、努力や工夫次第で評価される日本の美意識の方が、もしかしたら平等といえるのではないだろうか。また、昔の日本人女性は、アメリカ人やフランス人といった欧米人のルックスに憧れを抱いていたが、現在は地理的にも近い韓国人や中国人になりたい女の子が増えているともいわれている。

「盛り」を理解することはなかなか難しいが、日本の若い女性特有の文化とはいえるのだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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