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大人の発達障害にまつわる誤解、「ひょっとして自分も?」と不安続出

2019年07月03日 06時00分更新

文● 岩波 明(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

ここ数年、メディアでもよく取り上げられるようになった「大人の発達障害」や「うつ病」。しかし、これらの病気に関する偏ったイメージや誤解がまかり通ってしまい、「自分もそうなのでは?」と専門医の診察を受ける人が増えているのが現状です。そこで今回は、『最新医学からの検証 うつと発達障害』(青春出版社)から、病気の疑いがある方、ご家族、あるいは職場で当事者と関わりのある方などに向けて、発達障害やうつ病の正しい知識をわかりやすく解説します。

「大人の発達障害」は何歳ぐらいに発症するのか

 まず、「大人の発達障害」という言葉は、多くの誤解を生んでいます。第一に、発達障害は生まれつきのものであり、大人になってから発達障害になるわけではありません。ケアレスミスが多い、忘れ物が多いなど、何らかの症状はあっても、それが大きなトラブルに発展しない限りは、放置されることがほとんどでしょう。

 また、発達障害の症状そのものは、進行性のものではありません。長年にわたり、同じ状態が安定的に続くのが、発達障害の特徴です。しかし、子供の頃は目立たなかった症状が、大人になって就労し、ストレスの強い状態で「顕在化」することがみられます。

 特に職場での問題がクローズアップされ、ジャーナリズムも注目するようになり、「大人の発達障害」に関する記事が一気に増えて、専門外来への受診者も急増しているのです。つまり、「発達障害は、大人になったからといって、症状がなくなるわけではない」のです。本人がうまく対応していて目立たないだけなのです。

 発達障害やADHDについても、かつては児童期の病気と見なされていました。そのせいで、まだまだ「ADHDは子どもの病気」「大人になるにつれて、自然に多くが改善する」という誤解が多くみられます。確かに思春期以降に、一見すると症状が目立たなくなるケースもありますが、これは多くが本人の努力によるものです。

 しかし、多くのケースでは、大人になってからも何らかの症状が続き、生活に支障が出ています。例えば、会社において、普通なら考えられないようなケアレスミスをする、段取り下手でスケジューリングを守れない、突発的なことが起こると動揺してパニックを起こす、などがよくみられます。ADHD特有のこうした傾向が、周囲からは本人のやる気の欠如や、能力不足、不真面目さとして、否定的に評価されることもしばしば起きています。そのため、ADHDの当事者も自己否定的になりがちで、その結果、うつ病やパニック障害などの不安障害を二次的に起こすことも珍しくありません。

 このような二次障害に隠れてしまい、大人のADHDが正しく診断されないことは、現在でも珍しくないのです。

日本だけで推定患者数400万人以上!ADHDの特性とは

 そもそも「発達障害」とは、いくつかの疾患を含んだ疾患の総称です。発達障害という独立した疾患があるように語られることがありますが、それは誤った考え方です。あらためて整理してみると、発達障害とは、注意欠如多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害(ASD)、限局性学習障害(LD)などの疾患を全体的に指す言葉です。他にも、様々な疾患が含まれます。

 そのうち症例が多いのはADHDとASDであり、特に多いのはADHDです。両者に共通する症状はいくつかありますが、その原因や背景は異なるので見極める必要があります。

 特に、日本でも推定400万人以上の患者がいるとされているADHDの症状は、大きく分けると、「不注意」と「多動・衝動性」の2つです。まず、不注意の症状は、次のようなものです。

・注意、集中ができず、ケアレスミスが多い
・モノをなくしたり、置き忘れたりする
・片づけが苦手
・段取りが下手で、先延ばしにする
・約束を守れない

 また、多動・衝動性の症状は、以下の通りです。

・落ち着きがない、そわそわする
・一方的なおしゃべりや不用意な発言
・感情が高ぶりやすく、いらいらしやすい
・衝動買い、金銭管理が苦手

 一般的には、ADHDと聞くと、「多動」を思い浮かべる方が多いようです。しかし実際は、そこまで多動が目立つケースはほとんどありません。さらに、大人になると自分でコントロールをしようとするので、多動といっても「貧乏ゆすり」程度です。このため、思春期以降、ADHDにおいては不注意と衝動性が主な症状になります。ここでいう不注意とは、「忘れ物が多い、モノを置き忘れる、なくす、人の話を集中して聞けない、聞き漏らしが多い、片づけが苦手」、などの症状を含んでいます。ただし、自分が興味を持った特定の対象に対しては、過剰に集中することもあります。

 一方、衝動性の問題として一番多いのは、「つい、言わずもがなのことを口にしてしまう」、というものです。いわゆる「一言多い」ことが多く、それが人間関係を悪くします。たとえば友人に対する言葉で、「最近仕事を頑張ってるみたいだね。恋人にフラれたって聞いたけど、そのせい?」という発言を検討してみると、後半は明らかに余計な内容で、相手を傷つけてしまいます。

 ADHDには以上の特性があるために、日常生活において他にもさまざまな困難が生じます。例えば、約束をキャンセルしたくなる症状。日曜に「明日の19時に待ち合わせ」と決めても、月曜の日中にいろいろなことに関心が移り、変えたくなってしまうのです。いつも変化を求めていて、束縛されるのを嫌がる傾向があります。実際に約束を忘れてしまうことも多いので、人間関係が長続きしない一因になっています。

 他にも、視線を外した瞬間、忘れてしまうという症状もあります。見たことや聞いたことが、記憶に残らないのです(短期記憶が苦手です)。これが原因で、職場では指示漏れ、行き違い、「言った・言わない」が頻発します。数字についてもミスが多く、メモを見ながら注意して行っても電話番号を打ち間違えるといったケースもあります。

「ADHDなのに見落とされがちな人」はどんなタイプ?

 ADHDの主な症状は不注意と多動・衝動性ですが、多動が見られず不注意症状が優勢なケースは見落とされることがしばしばあります。ただ、ADHDの症状が重大な問題行動につながらない限りは、放置されることがほとんどです。

 ところが大人になると、職場における不適応という形でADHDの症状が顕在化することが、まれではありません。仕事上のプレッシャーやストレスは学生時代に経験がないレベルのものですし、ちょっとした不注意やミスも、仕事においては見逃してはもらえません。周囲から「ケアレスミスが多い」「指示をすぐに忘れる」「人の話をちゃんと聞いていない」などと指摘され、やる気がない人、能力がない人というレッテルを貼られることもあるのです。

 また、ADHDにほかの精神疾患が重なっている時、ADHDが見落とされたり、併存する精神疾患の治療が優先されたりすることもあります。ケスラーによって行われた疫学調査によると、ADHDの47.1%に不安障害(パニック障害など)、38.3%に気分障害(うつ病、躁うつ病など)、15.2%に物質使用障害(薬物依存など)が併存していました。

 ただし、こうした精神疾患も実はADHDがきっかけになって生じているものが大半です。ベースにあるADHDを見逃して、正確でない診断に基づいて治療を続けても、一向に症状は改善されず病院を転々とする、といったことになりかねません。このように、「発達障害」であることを見落とさないためにも、まずは「発達障害」に関する正しい理解を深めることが重要なのです。

 次回は、発達障害と「うつ」の関連、ADHDと同様に近年注目されてきている「ASD(自閉症スペクトラム障害)」の正しい知識について解説していきます。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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