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昔は大人気だったオカルト番組が放送されなくなった理由

2019年07月02日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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超能力や心霊現象、UFOなど、現代の科学や常識を超越した現象やものを取り上げる「オカルト番組」。一時期は人気を誇っていたものの、ここ10年ほど、テレビではめっきり減ってしまっている。著書『オカルト番組はなぜ消えたのか』(青弓社)があるリサーチャーの高橋直子氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

1974年に生まれた
「オカルト番組」

ああああああ
インターネットの登場によって、オカルト番組への風当たりが強くなったことが、衰退の大きな理由です(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 まずオカルト番組とは、そもそもどのような内容の番組を指すのか。これはなかなか定義が難しいところだ。

 高橋氏は、「超能力(者)、霊能力(者)、超常現象、心霊・怪奇現象、未確認飛行物体(UFO)、未確認生命体(UMA)など、超自然的現象を企画の中心とする出し物とし、かつ、その真偽を積極的に曖昧にする傾向があるテレビ番組」のことだという。

 具体的には、ネッシーや雪男、80年代から90年代にかけて日本中を騒がせたノストラダムスの大予言、霊能力者・宜保愛子、00年代後半の「オーラの泉」が火付け役となったスピリチュアルブームなどが挙げられる。

 そのなかでも高橋氏は、オカルト番組というジャンルが成立したのは1974年だと分析する。

「実は60年代末ごろから、すでにオカルト番組が制作され始めていたのですが、当時は何がオカルトなのか、制作側、視聴者側に周知されていませんでした。しかし、70年代に入ってオカルトがブームとなり、74年はスプーン曲げのユリ・ゲラーに端を発する超能力がブームとなり、翌75年1月には日本民間放送連盟が放送基準を改正。新たに『催眠術、心霊術などを取り扱う場合は、児童および青少年に安易な模倣をさせないように特に注意する』と定めたのです」(高橋氏、以下同)

要するにテレビは、心霊術や念力などのオカルトを『安易な模倣を助長しないよう注意』して制作・放送することにしたわけだ。「この事実をもって、テレビ番組中の一ジャンルとしてオカルト番組が成立したと私は捉えています」と高橋氏は言う。

SNS上の炎上を
嫌がるテレビ局

 以来、オカルト番組は約30年以上もテレビで放送され続け、人気を集めてきた。ところが、「オーラの泉」(2005~2009年)あたりを最後に、ここ10年近くは、ほとんどテレビで“本気の”オカルト番組は見られなくなっている。高橋氏はその理由をこう指摘する。

「一般的によくいわれるのが、オウム真理教による一連の事件報道の影響。つまり、『オカルト番組が若者に対して、超能力などへの関心をあおり、あのような教団を生んだ要因になったのではないか』という批判によってオカルト番組が減少した、と。ですが、批判に対応したのなら、なぜオーラの泉が放送できたのか、説明がつきません」

 そこで考えられる要因は、スピリチュアルブームとSNSの普及だという。

「オカルト番組が成立した70年代当時、テレビと視聴者の間には、UFOにしろ超能力にしろ『ホント?ウソ?と目くじらを立てる』のではなく『現代最後のロマン』として楽しむ、という了解があるという見方がありました。そこから始まったオカルト番組は、虚実曖昧な演出を楽しむエンターテインメントとして放送されていたと思います。なぜなら、視聴者はツッコミを入れながらオカルト番組を楽しんでいるという前提があればこそ、放送局は娯楽を提供するという理由で放送できるからです」

「しかし、スピリチュアルブームを牽引した番組は、それまでのオカルト番組と違って、<感動>にコミットする視聴者を想定した構成になっていました。つまり、ツッコミを入れて楽しむという見方ができない。この変化は、視聴者をハマる/ハマらない、好き/嫌いに二分しましたし、ツッコミを入れながら楽しむという前提を突き崩すことになりました」

「2010年代に入って、オカルトがメインに取り上げられる番組がほぼなくなってしまったのは、視聴者がツッコミを入れながら楽しんでいるという前提で番組を制作することができなくなったからです。虚実曖昧な演出は、SNS上での炎上と、それによるスポンサー離れを引き起こしかねません。今は『やらせ』や『偽善』をすごく嫌がる視聴者が、特に若者を中心に多い。エンターテインメントとして受け入れられない状況がネットを介して顕在化したことは、テレビ局も無視できません」

 ネットが普及する以前は、オカルト番組の非科学的内容が問題視されることは少なく、わざわざクレームの電話をテレビ局にかける人も少数派だった。

 ただ、今はツイッターなどのSNSでは、匿名でありながら気軽に誰でも文句をつぶやくことができるため、瞬く間に拡散してしまうケースもあり得る。テレビ局としては、仮に視聴率を稼げるにしても、そのような危険を冒してまでオカルト番組を放送するわけにはいかないのだ。

テレビでは扱われなくても
世の中に蔓延し続けるオカルト

 現状では、少なくとも地上波の民放各局でオカルトを主題として取り上げている番組は絶滅危惧種といっていいだろう。明らかにCGで作られたフェイク映像を、確信犯のうえで放送する衝撃映像系の番組か、「信じるか信じないかはアナタ次第」と、完全にお笑いのネタとして扱っていた『やりすぎコージー』のようなバラエティーぐらいである。

 しかし、これからオカルト番組が復活する可能性も否定できないと、高橋氏は語る。

「拙書で『オカルト番組は消える』と書いたのは、これまでお話ししたように、オカルト番組の成立以来、放送を支えてきた前提が失われ、放送されなくなっている状況を捉えてのことです。オカルトと科学の間に位置する新しい番組が出てくる可能性はゼロではありません。あるいは、スピリチュアルブームがあったように、精神世界に関するものから新機軸が打ち出されれば、再び放送されることになるかもしれません。視聴者のリテラシーやクリティカル・シンキングの向上によってオカルト番組が放送されなくなったわけではないのです」

 オカルト番組が終わりを迎えつつあっても、世間にはオカルト的なものが拡散しているのは事実だ。オカルトを楽しむにしても、科学的検証をするにしても、オカルトに対するリテラシーが必要だろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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