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JDI支援連合なおも不安定、米アップルと中国の投資ファンドが組む矛盾

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中国と香港の2社連合の枠組みが発表され、JDIの次期社長に就任する菊岡稔常務執行役員は「支援の確実性は高まった」と強調したが… Photo:JIJI

経営再建中の中小型液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)の金融支援の行方は依然として不透明だ。台湾・中国の3社連合の枠組みは崩壊し、新たに中国と香港の2社連合に組み替わったが、それも盤石ではない。水面下では新たな支援先探しが進む。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

 「お客様、取引先、株主に心配されたが、支援の確実性は高まったと思う」。

 6月28日夜、ジャパンディスプレイ(JDI)の菊岡稔・常務執行役員兼最高財務責任者(CFO)は、取材に集まった記者たちに、台湾・中国の3社の金融支援の枠組みが崩壊して中国・香港の2社の連合に代わったことについて、支援が前進したと繰り返し強調した。

 菊岡常務は10月1日付で次期社長に就任する予定だが、すでにJDIの実質的トップとして資金調達に奔走している。

アップル本社でぎりぎりの詰めも「確約なし」

 JDIが4月12日に、最大800億円の金融支援を受け入れることで基本合意した支援連合「Suwaコンソーシアム」の枠組みは、台湾の宸鴻光電科技(TPK)、台湾の富邦グループ、中国の嘉実基金管理(ハーベストファンドマネジメント)グループの台中3社だった。ところが6月に入って、TPKと富邦グループの2社が相次ぎ離脱した。

 これに代わるSuwaの枠組みとしてJDIが28日に発表したのが、(1)中国の投資ファンドである嘉実基金管理(ハーベストファンドマネジメント)グループから約520億円、(2)香港のアクティビストファンド(物言う株主)、オアシス・マネジントから約160億~190億円――という2社からの調達だ。両社とも内部で機関決定し、JDIは「コミットメントレター」を受領したという。

 関係者によると、ハーベストの520億円のうち約100億円は、米アップルがバックファイナンスの形式で負担する。アップルはもともと、取引先でもあるTPKに資金援助をする計画だったが、支援連合から離脱したことで、ハーベストが引き継ぐ。

 一方でJDIは、アップルの援助を含むハーベストの支援について「まだ確約を得ているものではなく、出資を確保できない可能性がある」とも発表している。

 菊岡常務は28日まで米国カリフォルニア州のアップル本社に出張し、JDIへの追加支援について詰めの交渉を行った。ぎりぎりの交渉でアップルが了承したのは26日になり、28日の発表時には正式な契約まで至っていない。

 さらにハーベストはJDIへの出資の条件として「中国政府からの介入がないこと」を挙げており、中国政府の判断についても、今なお不確定な要因が多い。

 オアシスもJDIへの出資について、(1)アップルからの製品購入量の中止や大幅な削減がないこと、(2)出資までに株価が30円を下回らないこと、(3)支援額の合計が600億円以上になること――など、さまざまな条件を付けた。

 28日の発表は、2社の金融支援が内部決定したとしながら、「確実ではない」ことを繰り返し強調する不安定さが目立つ内容となった。

Suwa連合に中国パネルメーカーの参加も

 もともとJDIが計画していた資金調達計画は最大800億円だ。これに対して、2社の金融支援が実現しても117億円足りない。このためJDIは、引き続き支援連合に参加する投資家を探していく方針を改めて示した。

 関係者によると、JDIと支援連合は、中国のTCL集団子会社の液晶パネルメーカーである華星光電(CSOT、チャイナスター)と協議を進めており、同じく中国パネルメーカーである維信諾(ビジョノックス)にも接触した。両社とも中国で有機ELパネル工場の増産計画があるが技術開発に難航しており、JDIの技術に関心を持つという。

 ハーベストはもともと、中国浙江省での有機EL工場を新たに建設する計画だったが、中国の中央政府が新規の工場建設に難色を示したことから、CSOTやビジョノックスなど中国勢の既存の有機EL工場を活用する方針に切り替えたもようだ。引き続きJDIの技術を中国の工場に移転することを再建計画の柱として検討する。

 ハーベストを中心に支援連合の中国主導が鮮明になれば、米中貿易戦争がネックになる。アップルとしては、2020年以降のiPhoneの有機ELパネルについて、韓国サムスン電子以外の調達先を確保するのがJDIの支援の狙いだが、中国の有機EL工場からでは調達は難しい。新たなJDI支援連合は、米アップルと中国ファンドが同居する矛盾を抱えながら、いまなお先行きが不透明だ。

Suwa連合以外の本命はエフィッシモか

 「Suwaのみならずいろいろな選択肢を考えている」。菊岡常務は、新たな支援連合も盤石ではないことを認めつつ、Suwaの枠組み以外の資金調達についても交渉していく方針を示した。ただ「それはあくまでバックアップ」とも述べ、中国・香港の支援連合と優先して交渉すると強調している。

 筆頭株主である官民ファンドINCJ(旧産業革新機構)は、Suwaによる金融支援が完了することを条件にJDIに追加支援を実施する。このためJDIにとっては、中国・香港連合の枠組みは、なんとしても死守しなければならないという事情がこの発言の背景にある。

 Suwa以外の交渉相手の本命としては、第2位株主であるシンガポールのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが浮上している。エフィッシモとは5月下旬まで200億~300億円の資金援助の交渉を進めながら決裂した経緯が明らかになっている。JDIの内部では、交渉再開に期待を寄せる声が根強い。

 JDIは9月末までに、アップル向けを中心とするモバイル事業の分社化を検討する。実は、これはエフィッシモのアイデアで始まった。最終的には「アップル事業の売却」で、車載事業とノンモバイル事業に集中してJDI再建を図る計画だとみられる。中国の工場でアップル向け有機ELを拡大するというSuwaの計画よりも、JDI内部のほか、株式市場や取引先など外部の評価が高まる可能性がある。

 シャープの戴正呉会長兼社長はメディアのインタビューや株主総会で、JDI支援の検討に前向きな姿勢を示している。仮に鴻海精密工業グループが乗り出してくれば、支援の枠組みは大きく変わる。

 今後JDIは、Suwaとの交渉を着実に進めることで、アップルやINCJの追加支援を引き出しながら、Suwaとは別の枠組みも模索するという複雑な利害調整が絡んだ交渉に臨む。4~6月期の業績は営業赤字が続く見通しだ。関係者によると、手元資金が危機的な水準まで落ち込むのは9月末が目途。交渉を急ぐ必要がある。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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