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英保守党党首選は一騎打ちに、どちらが当選でもブレグジット混迷は不可避

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ボリス・ジョンソン前外相
Photo:EPA=JIJI

決選投票は前外相vs現外相の一騎打ちに

 メイ英首相の後任となる英国の保守党の党首選は、得票が下位の立候補者を振り落とす投票を繰り返し、最終的にボリス・ジョンソン前外相とジェレミー・ハント外相の一騎打ちとなった。新首相がジョンソン氏、ハント氏どちらになってもブレグジットを巡って混迷が続くことは避けられない。

 両氏とも、EU(欧州連合)離脱後の2020年12月末の移行期間終了後(21年12月末までは延長できる)、アイルランドとの国境に物理的な壁を作らない方策が見つかるまで、英国全体が関税同盟に残るという、現在のEUと合意した離脱協定案にある安全策の見直しを求めるという点では一致する。

 英国とアイルランドの間に、関税の壁が復活した際に、物理的な税関のような施設を作らずにすむ方策は、現在のところ見つかっていない。現状では、英国は離脱後も関税同盟に残り続けることになる。それゆえ、英国のいわゆる強硬離脱派は、EUとの離脱協定案見直しを主張する。

 その進め方で両氏の考えが分かれる。ジョンソン氏は、10月末の離脱期限までに議会の合意が得られなくても、離脱するという合意なき離脱も辞さない姿勢だ。離脱協定案に盛り込まれたEUへの約390億ポンド(約5兆3000億円)の清算金について、支払いを保留する考えも示している。EUに対する交渉材料とするためとみられる。

 一方、16年の国民投票時には残留派だったハント氏は、EUと再交渉し、妥結のために必要であれば離脱期限の再延期も視野に入れている。

 英国のサーベーション社の22日付けの17年の選挙で保守党に投票した人を対象にした世論調査の結果を見ると、ジョンソン氏の支持率が45%、ハント氏が同36%とジョンソン氏がリードしている。ただ、2日前の世論調査結果と比べてジョンソン氏の支持率は10%低下し、ハント氏は6%上昇した。現時点ではジョンソン氏がリードしているが、足下の動きをみるとハント氏が追い上げている。

新首相に残された時間はわずか

 両氏のどちらが保守党党首になるにせよ、首相に就任するのは7月24日の党首選後だ。

 新首相就任までは、ブレグジット関連の議会での協議は進まない。それでは、その後、新首相は、EU離脱にむけて議会の合意をとりつけることができるのか。

 実は、そもそも新首相就任後、議会がブレグジットの問題を審議する時間は多くない。

 就任後7月25日からは、議会が夏休みに入ってしまうため、9月3日までは議会は開かれない。そして、9月4日に再開したあとは、13日までで再び休みに入る。これは主要政党の党大会が開催されるため。自由民主党、労働党、保守党の大会が開かれ、議会が再開するのは、10月9日である。

 離脱の期限は、10月31日だ。英国の議会は通常、月曜日から木曜日まで開かれる。通常のペースの場合、新首相就任後、10月31日までに議会の稼働日は20日しかない。もちろん、政府と議会が事態の非常性に鑑み、夏休み返上など臨時で審議をする可能性はないわけではない。

 ジョンソン氏が首相になった場合は、その可能性は低いだろう。合意なき離脱も厭わない。EUとの交渉において、議会の合意がとれないまま合意なき離脱となってしまう状態であることを逆手にとって望み、譲歩を引き出そうとする可能性が高い。加えて、議会が協議する内容を決めるのは政府である。議会の通常のスケジュールを変更してまで、離脱協定案の審議をするとは考えにくい。

 ハント氏が首相に就任した場合も、メイ首相の下での離脱案以上に強硬な案が出てくるとは考えられない。EUは離脱協定の再交渉には応じないという姿勢を変えていないからだ。議会の構成が変わっていない以上、合意を得るのは難しいだろう。

解散総選挙、国民再投票の可能性も

 では、やはり合意なき離脱となるのか。議会からは何も手を打てないのか。議会の奥の手は内閣不信任案とみられる。提出された場合、不信任案が成立する可能性は十分にある。

 現在、保守党と閣外協力の民主統一党を合わせた議席は322、対する野党は317。「保守党にも7名と少数ではあるが残留派の議員がいる」(田中理・第一生命経済研究所主席研究員)。合意なき離脱を回避するために、3名が造反して内閣不信任案に賛成すれば、成立する。不信任案が可決されれば、新首相は総選挙に打ってでるだろう。

 EU内では、離脱期限の延期にも反対する声が上がっている。しかし、国民の意思を問うための総選挙となれば期限の延期には応じざるを得ないだろう。合意なき離脱となれば加盟国であるアイルランドに大きな混乱をもたらすと予想されることも離脱期限の再延期の容認へとEUが動く理由となるだろう。

 総選挙となった場合、保守党は強硬離脱を訴え、欧州議会選挙で第1党となったブレグジット党へ流れた離脱支持票を取り戻そうとするだろう。ブレグジット党はもちろん強硬離脱をかかげる。

 労働党は関税同盟に残留するといった穏健な形の離脱と、その案と残留を選ぶかの国民党投票実施、自由民主党は二度目の国民投票をかかげて選挙戦を戦うことになると予想される。

 この選挙結果が英国のEU離脱の行方を左右する。保守党が単独過半数に至らなくともブレグジット党と組んで政権を担うとなれば、EUとの再交渉がありえないため、合意無き離脱の可能性は消えない。実味を帯びてくるだろう。労働党が中心の内閣となれば、国民再投票の可能性が大きくなる。

(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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