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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第517回

第3世代RyzenとNAVIで追加された新機能 AMD CPU/GPUロードマップ

2019年07月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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AMD製GPUで使える新機能

 さて、ここからはNAVIとは直接関係ない話である。今回のNAVIにあわせてRADEON Anti-Rag、FidelityFX、Radeon Image Sharpeningといった技術が発表された。これらは必ずしもNAVIだけでなく、従来のGCNベースの製品でも利用できるものであるが、これを順に説明したい。

遅延を軽減する技術
Anti-Rag

 まずRadeon Anti-Rag。ゲームでもなんでもそうだが、まずCPU側で処理を行ない、次いでGPU側で処理して出力する。しかし、マウスやキーボードの操作はCPU側で行なうため、原理的にその操作が画面に反映されるまで、多少のラグタイムが発生する。

入力デバイスの遅延を軽減するRadeon Anti-Rag。31%の根拠は後で出てくる。またDirectX 12は基本的にサポートされないことにも注意されたい

純技術的に言えば、GPUの処理時間が限りなく0になればラグタイムもなくなるわけだが、言うまでもなくそんなことはできない

 これそのものを根絶するのは難しい。それでもCPUとGPUの処理が同期していればまだラグは一定なのだが、昨今のゲームの場合CPUよりもGPUの処理が重い(GPUは常に100%近い負荷率で、一方CPUは数十%ということも珍しくない)結果、CPU側が前倒して処理することがしばしばあり、この場合ラグがさらに広がることになる。

もちろんそんなに何十フレームもCPU側で先行処理することはないのだが、数フレーム先行することはあり得る

 そこでAnti-Ragでは、強制的にCPU側の処理をGPU側にあわせる、つまりCPU側の処理をGPU側にあわせて待機させることで、ラグを一定にするという仕組みである。

この方式は当然ながら、CPUがボトルネックになっているケースでは利用できない

 下の画像がAnti-Ragを有効にしてどれだけラグタイムが削減できるかの例で、もともとラグタイムが少ないDOTA 2 Rebornなどでは効果が薄いが、ラグタイムが大きいApex LegendsやFortniteでは効果が大きく、平均31%ほどラグタイムが削減できるとする。確かにFPS系ゲームではこの機能は有用だろう。

ラグタイムは解像度でも変わってくる。GPUがボトルネックになりやすいシーンでは当然ラグタイムが大きめになる

 ただこのAnti-Rag、大原則としてCPUとGPUの処理が交互に行なわれることが前提になっている。これはDirectX 11までのゲームでは成立するのだが、DirectX 12ではCPU側から細かく描画制御をバンバン出すようになっており、基本的に常にCPUとGPUが同期して動作しているため、原理的にAnti-Ragが効果ない。というより、外部から制御できない。その一方でGCNベースのGPUでも可能であり、したがってRyzen 2000G/3000GなどのAPUでも利用可能なものとなっている。

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