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日立で初の「外国人社長」誕生の公算、高まる期待と不安

文● ダイヤモンド編集部,千本木啓文(ダイヤモンド・オンライン

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初の外国人社長誕生なるか、日立で高まる期待と不安
日立の副社長に就任したアリステア・ドーマー氏。英国から東京に移住したメリットは「Brexitのニュースを毎晩テレビで見なくていいこと」だと語る 写真提供=日立製作所

日立製作所で初の外国人社長が誕生する公算が大きくなっている。人事の鍵を握る中西宏明会長は病気療養中ではあるのだが、同氏は入院前、外国人トップ誕生の方向性をかなり明確に示唆していた。社内では新社長への期待と不安が強まっている。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

 日立では早ければ4月にもトップ人事があると見られていた。当初はIoT(モノのインターネット)事業のキーマンである小島啓二副社長が本命視されていた。

 ところが、4月1日の役員人事で風向きが変わった。日立で初の外国人の副社長として、アリステア・ドーマー氏が抜擢されたからだ。

 ドーマー氏は英海軍出身で、鉄道事業での日立のライバル、仏アルストムを経て日立に入社。鉄道事業のビジネスユニットCEO(最高経営責任者)として海外売上高構成比8割のグローバルビジネスに育て上げた。

 日立本体の副社長就任を機に、鉄道事業のグローバル本社がある英国から東京都内に移り住み、鉄道事業とエレベーター事業を統括している。

 日立関係者によれば、ドーマー氏は英国人らしいユーモアのセンスと、英語が不得意な社員にも丁寧に接するジェントルな態度で「急激に人望を集めている」という。

 それに加えて、である。決定的だったのは中西氏が5月末に上梓した「社長の条件」という著書(冨山和彦・経営共創基盤CEOとの共著)だ。

 この書籍の対談の中で、中西氏は新卒一括採用とその後の均一的な人材育成システムの限界について持論を展開。その後、「内部から(役員に)昇格させようとすると、海外でM&A(企業の合併・買収)した会社の人材が多くなるんです。そこから引っ張ってきた人材は、実はけっこう使える。結果的に、(社長は)日本人じゃなくなってしまうんですが」と述べているのだ。

(社長は)という部分は本編集部記者が加筆したものだが、「対談当日の発言はもっと刺激的だったらしい」(日立関係者)というのだから、これで波紋を呼ばないわけがない。

最終的には実績次第

 なお、中西氏は同著の中で「前回、社長を選んだときには、1年間しか時間がなかったんです。ですから、完全なものができたとは正直言えず、反省も残りました」とも述べている。

 今回こそは、トップ人事を1年先送りして、十分に吟味する考えを示したものとも受け取れる。

 とはいえ、「ドーマー氏で決まり」とは言い切れないことも事実だ。

 戦況はドーマー氏と小島氏の一騎打ちではあるのだが、2人とも実績を上げるのが難しい事業を担当しており、手綱さばきを誤れば落馬も十分あり得るからだ。

 ドーマー氏が担当する鉄道事業は英国に工場があるため、同国の欧州連合(EU)離脱のリスクに悩まされてきた。

 それに加えて昨年は、ロンドン市交通局の鉄道車両の大型案件(2000億円規模)の受注を独シーメンスにさらわれ、泣きっ面に蜂の状態だった。

 現在、英国の車両工場は受注残の製造を終えようとしており、大口案件を獲得できなければ、雇用削減に着手せざるを得ないところまで追いつめられている。

 一方の小島氏も低迷する家電事業の再生という難題を背負う。

 2008年のリーマンショック後の経営危機から復活した日立だが、今後、持続的な成長軌道に乗れるかどうかは次期トップの経営手腕に掛かっている。

 候補者を最後まで競わせることで、終盤戦に入った次期社長レースを盛り上げる手法は、中西氏流の演出なのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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