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「職場うつ予備軍」を逆に追い詰める、NGな励ましの言葉とは?

文● ダイヤモンド編集部,林 恭子(ダイヤモンド・オンライン

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職場うつ予備軍
良かれと思ってかけた「励まし」が、職場うつ予備軍の人たちを余計に追い込む可能性があります Photo:PIXTA

梅雨真っただ中、ジメジメした空気も影響して気分が落ち込んでいる人も少なくないだろう。また、4月から就職や転職、異動などで新たな環境に入った人であれば、ストレスを抱えきれなくなる時期かもしれない。そうした「うつ」とまではいかないが、「うつ予備軍」になりつつある人に対して、実は周囲がさらに気持ちを落ち込ませる対応をしていることがあるという。オンラインカウンセリングサービス「cotree(コトリー)」で、さまざまな人の悩み相談にのっている臨床心理士の徳田勇人さんに「うつ予備軍」の人たちへの適切な対応について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 林 恭子)

新しい環境になじめず
「無力感」「自責感」にさいなまれる人たち

――「6月病」という言葉を耳にするほど、この季節にもメンタルの不調を訴える方が増えていると聞きました。

 6月は、雨が続き気候が不安定な季節。気圧差により自律神経が乱れ、心身ともにバランスを崩しやすくなるのは確かです。

 また、この時期は就職や転職、部署異動などをして3ヵ月という方もいます。ゴールデンウイークの長期休暇を経て、精神的に糸が切れたようにガタッと崩れることもあり、また、新たな環境になかなかなじめない中で頑張った疲れが出てくるのもこの時期です。実際、仕事における環境変化でメンタルに変調をきたし、私たちのサービスを利用して相談する若いビジネスパーソン、特に30代の人が増えています。

 たとえ自分が望んでいた転職や異動であっても、慣れない業務が増える中で、対応しきれないことはよくあるでしょう。それに対して、無力感を覚え、自分を責めてしまう。そして自信を失ってしまっているという相談が実際に寄せられています。

 そのほか大きく環境が変化していない場合でも、上司や同僚、先輩、後輩、取引先などさまざまな人と関わることで精神的な負荷がかかっている方からの悩み相談もよくあります。例えば、パワハラ気味の上司がいる、うまくコミュニケーションがとれない同僚がいる。そのために仕事がうまくいかなくてストレスがたまっているといったお悩みです。

「安心して話して大丈夫」
対話を通じて“無力感”から解放する

――こうしたメンタルの不調を抱えた方たちには、どのように話を聞くことが大切ですか?

cotree徳田勇人
オンラインカウンセリングサービス「cotree(コトリー)」の臨床心理士・徳田勇人さん

 まず前提として、「何を話しても大丈夫だよ」という心理的な安心、安全を感じてもらう環境をつくることです。それによって、安心して何でも話してもらえるようになります。

 特に私たちのサービスを利用される方は、メンタル不調の初期段階で漠然とした悩みを持っているケースが多く、そういう人はまず話を聞いてほしいというニーズがあります。ですから、話を聞きながら「つらかったんですね」と共感し、受容的に関わるようにしています。

 また、先ほど述べたように、相談される方は「自分には能力がない」という無力感、自責感を持っていることが少なくありません。そこで、ご自身の能力と目の前で起きている問題を切り離して、俯瞰して問題を見られるようにしています。つまり、「自分に能力がないからそうした状況に陥っているわけではなく、誰でも状況が変われば大変だ」という点を明確にして、無力感と自責感から解放されるよう意識して声をかけるようにしています。そうした言葉が安心につながり、自信の回復につながります。

 思考を整理できるように、アシストすることも大切です。メンタル不調に陥る方は追い込まれて視野が狭くなるため、自分の考えを整理できなくなりがちです。

 思考を整理していないと話がいろいろと飛びがちなので、「今、複数のお話が出てきていますよね」「取り組まなければならないことがたくさんある状況ですか」というように、『メタ認知』という自分の思考を客観視するための作業を、一緒にすることも大切です。

 一連の流れを通じて、私のようなカウンセラーが相談者と対話し、介在することで、「あの出来事は自分でこう感じていたのだな」と省みることができて、ふに落ちるようになります。

 思考や問題が整理できた上で、今すぐに問題を解決したい方には、その方のペースにあわせてカウンセラーがアドバイスすることもあります。一方で、自分ではなかなか問題の解決策を考えることが難しい場合は、思考が整理された後に、自分はどうすれば「より良い自分でいられるのか」を一緒に探していきます。

「より良い自分」とは、漠然とした気持ちがすっきりすればいいのか、問題となっている人間関係をクリアにしたいのか、その人によって解決策も異なります。ただ、いずれにせよ、こちらが「ベスト」の状態を決めないことがカウンセリングでは重要です。何かの型にはめるのではなく、ご本人から引き出していくのです。

 今の世の中は、何が良くて、何がダメなのか白黒つけがちですが、それになかなか適応しきれない方が漠然と生きづらさを感じているように思います。それに対して、ありのままを受け止めてもらえるような場がカウンセリングです。

 カウンセリングは、誰かに寄りかかれている状況の中で、自分自身で問題を解決する力を身につけて、自律的に社会に適応してもらうことが目的です。例えば、「同じ状況でいつも落ち込んでいらっしゃいますね」など思考のパターンを一緒に見つけ、そのパターンに陥らないためにどんな対策ができるのか、具体的に考えていきます。

 ただ、私たちカウンセラーは必ずしも問題を解決しようとは思っていません。「こうしたらどうですか」という提案ばかりになると、それができない自分をネガティブに捉えて焦ってしまう方もいるからです。問題解決よりもありのままを受け止めて、安全に感じてもらえる場所を提供することが大切でしょう。

「気にすることないよ」の励ましが
さらに気分を落ち込ませる可能性も

――悩んでいる方はまず、身近な人に相談することが多いと思います。もし相談された際には、どのような点に気をつけるとよいでしょうか?

 先ほども述べたように、世間一般では「正しいか」「間違っているか」でジャッジを下される場面が多いと思います。ですが、メンタル不調に陥っている人に対して話すときは、そういうジャッジを下すのが正しいとはいえません。

 メンタル不調に陥っている方は、何かを相談したときに「それは間違っていると思うよ」「そんなことで悩むのはよくないよ」と否定されると非常に傷つきます。ただ、そうした反応があまりよいことでないのは、多くの方がご存じかもしれません。

 注意が必要なのは、悪気のない“励ましの言葉”をかけてしまうことです。「そんなこと気にすることないよ、全然大丈夫だよ」「もっと大変な人、知っているよ」というような言葉が典型です。

 こうした反応は、相談した人からすると、相談を真正面から聞いてもらえなかったと思えて、悩んでいる自分の否定につながります。元気なときならば気にならない言葉にも、メンタル不調のときには敏感になっているものなのです。

 繰り返しになりますが、メンタルの不調を抱えている人にはその状態を良しあしでジャッジをせずに、悩んでいる状態を受け入れてあげることが大切。つまり、「そんなふうに悩んでいるあなたも私は受け入れている」「あなたが悩んでいようがいまいが、味方だよ」と伝えてあげることが、何よりの励ましになるのではないでしょうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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