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DBICの横塚氏ら、3年間のDX支援活動で見えた「危機感の薄さ」「大企業病」を厳しく批判

日本の大企業は「デジタルイノベーションのまねごと」をしているだけ

2019年06月26日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 「(日本の大企業は)デジタルやITに対する関心が低く、世界の情勢にも関心がない。『危機感を持つ』以前の段階にある。これらのことに関心がなければ、デジタルトランスフォーメーションには踏み出せない。まずはこの『関心がない』状況をなんとかしなくてはならない」(DBIC 横塚氏)

 デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)は2019年6月21日、2019年度の事業計画についての記者説明会を開催した。その中でDBIC代表の横塚裕志氏は「日本の大手企業が置かれた立場は深刻だ」と警鐘を鳴らした。DBIC副代表である西野弘副代表も同様に、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を取り巻く実態を次のように厳しく批判している。

 「大手企業のなかに10年間いると“五感”を使わなくなり、上司を見て、競合他社を見るだけの“二感”で済ませようとするようになる。これでは何かを作り込む、新たなことに取り組むという発想は出てこない。デジタルイノベーション専門部隊を設置する企業も増えているが、その多くは数億円規模の予算を取っても、海外を視察し、シリコンバレーに拠点を作り、コンサルタントを雇い、PoCを実施して終わってしまう。PoCだけでDXをやった気になり、安心してしまうから、日本企業は“PoC症候群”に陥る」(西野氏)

デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)は「ソーシャルイノベーション・プラットフォーム」を目指す組織だ
デジタルビジネス・イノベーションセンター 代表の横塚裕志氏デジタルビジネス・イノベーションセンター 副代表の西野弘氏

「4D+S」で日本企業のDXとオープンイノベーションを支援していく

 DBICは、NPO法人のCeFIL(Center For Innovation Leaders)が2016年5月、デジタルトランスフォーメーションとオープンイノベーションを目指すプラットフォームの構築や、それを担う人材育成を目的に設立した新規事業部門だ。企業会員による年会費で運営されており、現在は製造や金融、エネルギー、物流などの大手企業やITベンダー、システムインテグレーターなど34社がメンバーとして参加している。

現在のDBICメンバー企業一覧(日本郵政グループ4社を個別にカウントすると34社になる)

 CeFILは、経団連の高度情報通信人材育成部会の機能を引き継ぎ、2009年7月に経団連の有志企業により設立されたNPO法人。初代理事長は元富士通社長の黒川博昭氏。2014年からは、東京海上火災保険の常務取締役や東京海上日動システムズの代表取締役社長を務め、2019年6月まで情報サービス産業協会(JISA)の会長を務めていた横塚裕志氏が理事長に就任している。経団連や企業、大学との連携により、社会と産業のシステムを変革する人材を育成し、日本の成長戦略を推進するための活動に取り組んでいる。横塚氏はCeFIL理事長とDBIC代表を兼務している。

 DBICでは2016年の設立以降、会員企業を対象として、デジタルイノベーションに関するセミナーやハッカソン、イノベーションキャンプなどを開催してきた。

 「1年目の活動では、とにかくできるものはやってみた。しかしその結果としてわかったのは、参加者の意識がデジタルイノベーションをやるところにまで至っていないということ。これではいくらやっても成果が得られない。そこで2年目からは『4D』をベースにしたプログラムに変更して活動を実施し、現在に至っている」(西野氏)

 「4D」とは、価値を創造できる組織への変革を進める「Digital Transformation」、生活者視点のプロブレムステートメントを描く「Design Thinking」、これがしたいと言える熱意を持つ「Discover Myself」、とにかくやってみる実践型学習の「Diving Program」の4つの頭文字を取ったものだ。2019年度からは、ここに社会課題をデザインの力で解決する「Social Innovation by Design」も加え、「4D+S」で活動を推進していく。

2019年度のDBICは“4D+S”のイノベーションモデルで日本の大企業が抱える課題の解消に挑む

「経営トップから現場まで危機感がない」「デジタルイノベーションのまねごと」

 2019年度のDBIC事業方針では、次のような提言が語られている。

 「日本の大手企業は『変化に対する危機感』が薄く、マインドセットが20世紀のままである。顧客の視点から考える能力がない、新規事業を立ち上げる能力がないという課題もある。たとえ本業が破壊されても生き残り、あるいは本業を破壊されても業容を拡大していくために、日本の企業は組織と人材を抜本的に変革する必要があるのではないか」

デジタルイノベーション推進において日本の大手企業が抱える3つの課題

 特に日本企業の「変化に対する危機感の薄さ」は、過去3年間のDBICの活動を通じて強く感じてきたという。

 「たとえば、トヨタ自動車の社員の99%は『トヨタは絶対に潰れない』と思っているのではないか。これが日本のすべての大手企業に共通する考え方であり、そこに間違いがある」と横塚氏は指摘する。自動運転のテクノロジーが実用化され本格的に普及すれば、自動車という製品の設計や機能だけでなく、その「使われ方」や「社会的価値」までもが大きく変化する。それによって自動車業界のビジネスモデルそのものが激変するだろう。これは、横塚氏の古巣である東京海上日動火災保険の属する保険業界であっても同じだ。

 「(損害保険会社の)収益の約6割は自動車保険だ。だが自動運転の時代になれば、自動車の台数も、自動車事故の数も減少するだろう。自動車保険の市場がシュリンクするのは明らかだが、それに代わる“メシの種”が見つかっていない」(横塚氏)

 もちろんこうした変化は特定の業界に限った話ではない。たとえば太陽光など自然エネルギーの時代になり、家庭の電力が無料になったときに電力会社のビジネスモデルはどう変化するのか。環境問題が世界的な課題となり、カーボンフリーのモデルが重要視されるようになるなかで、これまでのように電気を使う(使わせる)ことが電力会社の生き残り策になりうるのか、新たなビジネスモデルをどう模索していくのか、といった例を挙げる。

 「デジタルイノベーションは、企業が生き残るかどうかの問題。日本の企業もCDO(チーフデジタルオフィサー)を設置したり、専門部署を作ったりしているが、そこに課題を丸投げしたり、『他社がやっているから』という理由でITベンダーやシステムインテグレーターから提案を募り、PoCをやっただけで満足していたりするのが実態。ITベンダーやシステムインテグレーターの側も、自信がないからPoCでやめようとする。結果として、経営トップから現場まで危機感がないまま『デジタルイノベーションのまねごと』をしているにすぎない」(西野氏)

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