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JDIが支援枠組み崩壊で再度崖っぷち、新スポンサー探しは時間との戦い

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記者会見するJDIの月崎社長ら
4月12日の記者会見でJDIの月崎社長らが発表した中台連合の枠組みは崩壊 Photo:JIJI

経営再建中の中小型液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)の金融支援の枠組みが決まらない。台湾・中国の企業連合は崩壊しつつあるが、新たなスポンサー探しには不透明感が漂う。交渉が長引けば、資金繰り懸念が再燃しかねない。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「TPKの離脱は大きな問題ではない」――。6月17日午後と翌18日朝の2回に分けて、ジャパンディスプレイ(JDI)への出資のために設立された「Suwaインベストメントルホールディングス」の名義で突如発表された声明文。18日の株主総会前の発表とあって株主の不安を打消す狙いが滲んだが、JDIの金融支援の枠組みが崩壊の危機に直面する中で、無理のある主張だった。

台湾勢離脱で資金不足に

 JDIは再び崖っぷちに立たされている。

 発端は6月14日夜。台中3社連合「Suwaコンソーシアム」で最大の投資家になる予定だった台湾の宸鴻光電科技(TPK)から出資を取りやめるとの通知がJDIに届いた。TPKに足並みを揃えてきた台湾勢の富邦グループも離脱は確実で、このままでは金融支援に大きな穴が開く。

 この非常事態に対し、JDIの交渉責任者である月崎義幸社長と菊岡稔常務執行役員は15~16日の土日を返上し、Suwaの取りまとめ役のウィンストン・リー氏と対応を協議した。

 結果、JDIが週明け17日朝に発表したのは、(1)代役として香港のアクティビストファンド(物言う株主)のオアシス・マネジントから約160億円の支援を得る、(2)それでも不足する分は中国の嘉実基金管理(ハーベストファンドマネジメント)グループのハーベスト・テックが負担する――という善後策だった。

 だが、いずれも「内部の機関決定は6月27日までに行う」としており、正式には何も決まっていないことも露呈した。

 JDIのある幹部は「本当に資金が得られるかどうかは27日になってみないとわからない」との本音を吐き、金融支援の枠組みが決まらない可能性を示唆した。

Suwa声明の信憑性

 こうした中で発表されたのが冒頭のSuwaの声明文だった。Suwaインベストメントホールディングスとは、前述のリー氏が資本金1ドルで設立した会社だ。関係者によると、声明の文面はリー氏が書いたもので、同氏の通訳を担当する人物から報道各社に送られた。

 声明文によると「Suwaは交渉のプロセスを経て、JDIの根本的な復活を果たすという重大な成功を遂げた」という仰々しい文章で始まり「JDIの市場価値は過小評価されている」と結んでいる。

 ここで「JDI復活」とする理由は(1)25億ドルの負債のほとんどを削減または転換、(2)大規模な資金不足に対処、(3)無能な経営チームの合理化を開始、(4)大口顧客や取引先から金融支援や注文を含むサポートを確保――などを列挙している。

 だが、いずれも根拠不明だ。

 確かにJDIでは、4月12日の台中連合の基本合意以来、筆頭株主のINCJ(旧産業革新機構)がリファイナンスの追加支援をまとめ、最大顧客である米アップルが貸出金の返済繰り延べの支援に合意し、月崎義幸社長の9月末退任を決めたという一連の発表はあったものの、これらすべてを「Suwaの成功」と主張し「JDIを復活させた」と強弁するのはいかにも苦しい。

 さらに、この声明文は「TPKと富邦の資金がなくても800億円以上の投資の約束(コミットメント)を取り付けている」とした上で「複数企業から出資の意向表明を受けている」などと記述しているが、株主総会前の不安打ち消しが狙いとみられ、どこまで具体的な交渉が進んでいるかは不明のままだ。

 声明文の中で唯一具体的な記述だったのが「60億ドル規模の有機EL工場を中国に建設する計画と資金調達について、浙江省の地方政府の支援を取り付けた」とする部分。だが、以前より浙江省の有機EL工場計画は中国の中央政府が難色を示していると伝えられる中で不自然な記述で、この部分は19日までに取り消された。

 今回の声明文は「あちこちに根拠不明の記述や不自然な部分があり、そのまま信じろというのは無理がある」(業界関係者)との受け止めが大半だ。むしろ、声明を発信したリー氏の焦りが滲むばかりで、周囲の不安を打ち消す効果は全くなかったようだ。

もはやSuwaの実体は1人か

 もはや、Suwaと名付けられた「器」の実体は、リー氏1人が支えているのは明らかだ。これまでに、中国の大手電子部品メーカーの欧菲科技(オーフィルムテック)、台湾系の自動車部品メーカーの敏実集団(ミンス・グループ)が離脱するなど次々と入れ替わり、ついにはTPKが参加を見送り、富邦も離脱寸前になった。

 最後にSuwaに残ったのが中国のハーベスト・テックだが、これもリー氏がマネージャーを名乗っている。事実、リー氏はSuwaの取りまとめ役とともにハーベストを代表する交渉役も兼ねてきた。

 ただ、ハーベスト・テックとは、中国最大級の資産運用会社のハーベストファンドマネジメント(本社:北京)の100%子会社で、上海を拠点とする社員11人の事務所に過ぎない。このためJDI内部からも「巨大なハーベストグループでリー氏がどれだけの権限を持ち、北京本社の機関決定にどこまで関与できるのか」(関係者)と疑いの声が高まっている。

 Suwaの枠組みが揺らぐ中で、JDIにとっては、Suwa以外の投資家との交渉が急務だ。17日朝の発表では、Suwaとは別の枠組みで、国内外の企業から出資の意向を受けていると発表したが、実際は株主総会前のアピールで、交渉はほとんど進んでいないのが実態のようだ。

 JDIが頼るのは、筆頭株主のINCJ、最大顧客のアップル、第2位株主であるシンガポールのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントで、既存の株主や顧客の追加支援に期待を寄せるが、いずれも厳しい交渉相手で、ここから追加の資金調達を実現するハードルは高い。

 7~8月には、米アップルのiPhoneの19年モデル用の液晶の量産で、材料費の購入などがかさむ。出資交渉が長引けば、資金繰り危機が再燃する恐れがあり、新たなスポンサー探しは時間との戦いになる。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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