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東電が「新電力」でも業界首位に、それでも手放しで喜べない理由

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東京電力ホールディングス
新旧で業界首位に立った東京電力ホールディングス。東電が仕掛ける業界再編への電力各社の警戒感は一層強まりそうだ Photo by Yasuo Katatae

 東京電力ホールディングス(HD)の小売事業会社である東電エナジーパートナー(EP)の子会社、テプコカスタマーサービス(TCS)が、大手電力会社以外の“新電力”プレーヤーで初めて首位を獲得した。巨大な人口を抱える首都圏エリアが地盤の東電は、大手電力会社の中で頂点に君臨する。つまり、東電は大手電力と新電力の“新旧”両分野で販売電力量がトップになったのだ。

 新電力とは、東電HDや関西電力をはじめとする従来の大手電力会社「旧一般電気事業者」以外で、電力小売り事業に参入したプレーヤーのことを指す。資源エネルギー庁がまとめた2019年2月の電力需要実績(販売電力量)で、TCSは初めて新電力のトップになった。

 もともとTCSは工場やビルの電気回りの保安業務を行っていたが、15年度から高圧、特別高圧の電力販売業務に本格参入した。全国で工場や公共施設、商業施設などの大口顧客を次々と獲得。参入からわずか4年弱で、600社以上ある新電力業界で一気に首位に上り詰めたのである。

 TCSの闘争心に火をつけたのは、16年4月に始まった電力小売全面自由化だ。東電はお膝元である首都圏で、さまざまな新電力に次々と顧客を奪われた。そこで、TCSは「19年度までに新電力業界トップに立つ」と目標を掲げ、東電エリア外で反撃に出るために全国で激しい価格競争を仕掛けて暴れ回った。

 特に17年度からは関西、東海、九州のエリアでシェアを拡大。「TCSの営業マンは人気ゲーム、ドラゴンクエストの強敵モンスター並みの存在で、遭遇したら負け」と同業他社が恐れるほどだった。

 TCSは原子力発電所の再稼働が進んだ関西電力、九州電力の再反撃を受けつつも電力需要を伸ばしている。今は、ターゲットを東北電力エリアに移している。

 昨年8月に行われた宮城県の仙台第3合同庁舎で使用する電気供給契約の一般競争入札では、TCSが2位より250万円低く提示した3300万円で落札した。

 対照的に、同年6月時点で首位だった独立系新電力F-Powerは、TCSや関電の反撃を受けた上、電力を調達する日本卸電力取引所(JEPX)の価格が猛暑の影響で高騰し、業績が悪化。第10期決算(17年7月~18年6月)で120億円の最終赤字を計上し、事業を縮小したため、首位から陥落した。

東電が東北電力エリアを攻める本当の理由

 ところで、なぜTCSは東北電力のエリアを攻めているのか。ある電力業界関係者は「東京ガス潰しだ」と解説する。

 東ガスは東電の最大のライバルだ。しかし双方とも首都圏が地盤。なぜ東北で東京ガス潰しなのか――。

 東ガスは首都圏で一般家庭向けの顧客180万件(今年3月末時点)を東電から奪い、エネ庁の2月のまとめでは新電力ランキングで3位に付けている。東電EPは首都圏で東ガスに反撃したいところだが、低価格とブランド力を生かした東ガスの戦略に苦戦している。

 そこで挑んだのが局所戦の勝負。東電は東北電の顧客を獲得することで、遠回しに東ガスに反撃しているというのが、業界関係者の見立てだ。というのも、東ガスは東北電力と密接な関係にある。北関東で高圧、特別高圧の電力小売りを行う東ガスと東北電の合弁会社「シナジアパワー」を設立している。

 東北電は“とばっちり”を受けたと憤慨している。

 というのも、東電HDは中期経営計画「新々総合特別事業計画」で、送配電や原子力事業で再編を進めると謳っていて、その“結婚相手”として、東北電に秋波を送っている。「一緒にやりませんか?と言っておきながら、うちの顧客を奪うとはどういう了見だ」(東北電関係者)と東電に不信感を抱いている。

 業界の間では、TCSが東北電エリアで攻めれば攻めるほど、新々総特で掲げた業界再編が遠のくという見方が出ている。

 しかし、別の業界関係者は「電力自由化でいかに顧客を奪うかで、業界再編の主導権を握れるかが決まる」と指摘する。つまり、東電の狙いは、東北電のエリアで一気にシェアを伸ばして東北電の体力を奪ったところで、再編に持ち込む戦略だと分析する。

 いずれにせよ、東電が仕掛ける業界再編への電力各社の警戒感が解けることはなさそうだ。

(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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