このページの本文へ

保険のプロが激白「新社会人たちよ、生命保険なんか入らなくていい」

2019年06月24日 06時00分更新

文● 島野美穂(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

若者たちが、新社会人としてのスタートを切って、約3ヵ月が経過した。新しい環境に少しずつ慣れるなか、給与明細を見て「税金とかいろいろ引かれて、手取りが少ない」と戸惑った人もいるのではないか。しかし、給与から引かれるお金についての理解を深めることで、生命保険関連の出費を大幅に抑えることができるという。保険コンサルタントの後田亨氏に、新社会人が知っておくべき保険の真実を聞いた。(清談社 島野美穂)

皆が入っている
「健康保険」はすごい!

新社会人が焦って民間の保険加入を検討する必要は全くありません。
親や営業マンに民間の保険加入を急かされても、ちょっと待って。まずは誰もが加入している公的な保障制度をよく理解してみよう Photo:PIXTA

 新社会人に、給与明細をあらためて確認してほしい理由を、後田氏はこう話す。

「新社会人のほとんどは、『民間の保険に入っていない状態=無保険状態』と思っているかもしれません。親や先輩も同じように認識していることが少なくないので、仕方がないと感じます。ただ、『健康保険』の保険料が給与から引かれているはずです。その保障内容はかなり強力です」

 健康保険には『高額療養費制度』があり、1ヵ月の医療費の自己負担額には上限が設定されている。年収約370万円以下の人であれば、5万7600円。仮に、手術を伴う入院で50万円くらいの費用が発生しても、6万円未満の負担で済むというわけだ。

 さらに、健康保険の対象になっている医療を受ける限り、病名は問われない。

「保険会社の商品開発に関わっている人のなかには、『がん保険や三大疾病特約など、病名を指定する商品が存在する理由がわからない』と言う人もいるのです。月額600万円の大きなお金がかかる場合であれば、民間の保険に頼るメリットもあるかもしれません。ただし、高額療養費制度を使って、6万円未満の負担で済むのであれば、自分で払うほうが賢いだろうという話です。保険会社からお金を受け取るには、毎月保険料を払い、保険会社の人件費・広告宣伝費・代理店手数料などまで負担することになりますからね」

新入社員たちもすでに
「長期休業補償保険」に入っている!?

 医療費が、健康保険でかなりの部分カバーできるということはわかった。とはいえ、病気やケガで長期間、仕事に就けなくなった場合はどうすればいいのだろうか。

「会社員は、健康保険に『傷病手当金』があります。これは、一定の条件を満たせば最長18ヵ月、標準報酬月額の3分の2に相当する額が給付されるというものです。民間の保険でいうと、『長期所得補償保険』や『就業不能保険』に加入しているようなものです」

 2016年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の給付実績では、加入者に対する受給者の割合は1%弱と推計できる。平均給付日数は、例えば傷病別で最も長い『精神および行動の障害』で、216.47日。病気やケガで仕事ができなくなったとしても、やはり、健康保険が役に立つのだ。

 若い世代では、国の年金制度に不安を感じている人も多いかもしれない。給与明細を見ると『厚生年金保険料』も引かれているが、「将来的に受け取れるかわからない年金を払うことは、損」と考えている人もいるのではないだろうか。貯蓄や運用について、後田氏は言う。

「国の年金制度に関しては、誤解や誤報が多いと感じています。現時点では、それほど心配する必要はないと私は思っています」

 しかし、大手生命保険会社のデータブックには、65歳以上の人口1人に対する15~64歳の人口の割合は、1995年に約4.7人だったのが、2015年では約2.2人。2050年では約1.3人と記されている。高齢者を支える人たちの人口が年々減っていることは紛れもない事実だが…。

「そういったデータも織り込み済みで年金の制度設計はなされています。若い世代が減少しているのと同時に、日本人の寿命は延びていて、今後、60歳以降も現役で働く人が増えることが予想されます。現役で働く人の年齢が上がるということは、すなわち、年金の受給開始年齢を遅らせる人が増えるということにつながるわけです」

保険で貯蓄・運用はダメ!
手数料が高くつくだけ

 あまり知られていないかもしれないが、年金の受給開始年齢は「自由選択制」で、70歳まで遅らせることが可能だ。その場合、65歳からの受給に比べ、年金額は42%増え、一生続く。このような仕組みは民間の貯蓄商品にはない。

 また、老後の生活を支えるだけでなく、現役の間に急死した際には『遺族年金』も給付される。これは民間の保険の、『死亡保険』の機能にあたる。

「例えば、死亡時までの平均年収が400万円で、子どもが1人いる世帯主の場合、子どもが高校を卒業するまで月額12万円が給付されます。子どもが3歳の時に亡くなるケースで試算すると、2000万円を超える保障があるということです。

 会社員は、優れた『医療保険』『長期所得補償保険』のみならず、それなりに手厚い『死亡保険』に入っているようなものなのだ。したがって、「新社会人が急いで検討すべき民間の保険はありません」と後田氏。

「親や先輩は、公的な保障制度(社会保険)」を十分に理解していないことが少なくありません。また営業マンは「民間の保険に早々に入る必要はない」などと言ってしまっては自分の首が締まるので、あらかじめ、消費者とは利益相反の関係です。したがって、周囲の人の言うことは真に受けないようにしてほしいです。特に、貯蓄商品には気をつけること。手数料が高く、貯蓄や運用に回るお金が少ない、不利な仕組みだからです」

 自分の周りにいる人のほとんどは、保険やお金の素人と思ったほうがいい。新社会人たちは安易にまねをしないで、まずは社会保険のことから、時間をかけて学んだほうがいいだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ