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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第516回

判明した第3世代Ryzenの内部構造を大解説 AMD CPUロードマップ

2019年06月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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配線のために生産ラインを再構成までした
MCM周り

 MCM周りについてもいくつか説明があったので紹介しよう。下の画像がRyzen 3000シリーズの内部構成である。

Ryzen 3000シリーズの内部構成。画像には描かれていないが、各々のCCD内には、2つのCCXとSMUをつなぐインフィニティーファブリックがあり、ここからGMI2経由でI/Oチップレット側のインフィニティーファブリックにつながる構造になっていると理解するのが正しいと思われる

 連載496回で、「インフィニティーファブリックのコントローラーがI/Oチップレット側に移動すると、Zen 2内部の制御(それこそSenseMIなどがインフィニティーファブリックの上で実装されている)が遅くならないか?」というのが、CCXを8コアでないかと考えた最大の理由だったのだが、こちらにその回答が入っている。

 図中でSMU(System Management Unit)とあるのが、そのインフィニティーファブリックを利用したSenseMIを始めとするさまざまなシステム管理を司る部分である。つまり以下のことがわかる。

  • CCXは引き続き4コアベース
  • CCD(つまりCPUチップレット)全体の制御は、CCD内のSMUが行なう。同様にcIoD(つまりI/Oチップレット)の制御は、cIoD内のSMUが行なう

 構図としては連載496回で図解したZenベースのダイの内部ブロックに近いものになると考えられる。

 ちなみに一見すると簡単そうに見えるが、実際はI/Oチップレットが従来と同じ150μmピッチのボール状バンプ(メッキで形成した突起状の接続電極)なのに対し、7nmプロセスを使ったCPUチップレットではこれが130μmピッチに狭まったそうだ。

ここで150μmに広げたら、おそらくCPUチップレットのダイサイズが無駄に肥大化することになったと思われる。ダイサイズをギリギリまで抑えつつ、必要なピン数を維持するためには、バンプピッチを減らすしかなかったのだろう

 これを解決するために、従来のように配線に直接バンプを構成するのではなく、銅で柱を立て、その上にバンプを形成するという解決案を取ったそうである。

メリットとして“common die height after assembly”とあるのは、7nmプロセスのCPUチップレットのダイの厚みが12nmのI/Oチップレットの厚みと異なっており、これを銅(Cu)の高さで調整することで同じ厚みにすることで、ヒートシンクの設計を容易にしたとと思われる

 またこのRyzen 3000では既報の通りPCI Express Gen4をサポートするが、16GT/秒に達する信号速度に対応するために、パッケージの材質を改善して損失を減らす工夫が必要だったそうである。

16GT/秒のPCIe Gen4ですらこれなのだから、次に控えている32GT/秒のPCIe Gen5はさらに大変になりそうだ

 下の画像がそのパッケージ層の配線で、おそらくは一番信号線のレイヤーだと思われるが、中央下のI/Oチップレットとその上に2つ並ぶCPUチップレットの間を直結しているのがインフィニティーファブリックの配線、左側に出ているのがおそらくはDDR4、そしてI/Oチップレットの中央および右上から、パッケージの右側に出ているのがPCI Express Gen4の配線と思われる。

パッケージ層の配線。従来のRyzenでは10層基板を利用したが、Ryzen 3000シリーズではこれが12層に増えたそうだ

 実装もいろいろ大変だったそうで、生産ラインを再構成する必要があったというのも無理ないところである。

配線のために生産ラインを再構成。1×CCD構成の製品ラインと2×CCD構成の製品ラインを完全に分けるというのも現実問題として無駄が多くなって難しいわけで、どうしても1つの製品ラインでこれを実現する必要があったのだろう

 ということで、今回はCPU周りを深く掘り下げて解説した。全然性能やラインナップの話まで行けなかったのだが、このあたりはRadeon RX 5700シリーズ周りのまだ触れてない話題と併せて次週紹介する予定だ。

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