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女性向け風俗は本当に「商売」として成り立つのか

2019年06月23日 06時00分更新

文● 有山千春(ダイヤモンド・オンライン

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女性用風俗…しばしばメディアでも紹介され、話には聞きますが、本当に存在して「商売」として成り立つのでしょうか。
Photo:PIXTA

最近、テレビの情報番組などで取り上げられることが多い「女性用風俗」。男性向け風俗業に比べ、「いかがわしさ」の印象はより一層強く、その話題性の高さに比べ、「本当に存在するのか」など存在自体さえ疑う声も多い。実際に事業として成り立っているのか、本当に需要があるのか、取材してみた。(フリーライター 有山千春)

女性用風俗の経営は
かなり難しい

 ホストクラブは一般化し、女性向けAVも市民権を得た昨今、テレビの情報番組や雑誌、書籍で取り上げられるなどじわじわとその存在感を知らしめている、「女性用風俗」――。つまり、女性客が利用する風俗店である。

 店舗数も増えており……といえど、女性用風俗の大手ポータルサイトに掲載されている店舗数は、現時点で全国約120店と、男性用のそれとは比べものにならぬほど小規模である。加えて、たとえテレビで女性芸能人らが「体験談」を語ったとしても、それだけでは払拭できぬほどの不安要素が強く、その「存在」こそ知ってはいても、足を踏み入れる勇気を持つ女性は多くはない。

 そこで今年に入り、事業の一環として女性用風俗店「レゴリス東京」をオープンした代表の今井さん(仮名)に話を聞いたところ、案の定、「いやあ、難しいですね」という答えが返ってきた。

「正直、一般認知度はまだまだです。週に何度か予約が入ればいいほうというのが現状。よく知人男性から、『当たりそうだね』と言われますが、実際はそう簡単にはいきません」と苦笑する。

“女性用風俗”というジャンルを、20年ほど前から知っていたという今井さん。なぜいま、オープンしたのか。

「仕事柄、若い男性と接する機会が多く、彼らの一番の悩みが、『女性に比べて、短期間で高額を稼げる副業が少ない』ことでした。それをなんとかできないかと考えていたところ、ここ最近、女性用風俗が増えていることが頭をよぎり、『若い男性の高額副業の場として、自分が女性用風俗を作ればよいのではないか』と思い、オープンに至りました」

 まずは、高額副業を欲している男性を人づてに紹介してもらうことから始まった。ただし、誰でも採用するわけではない。

 最も重要な採用基準は、「真面目で、誠実であること」だという。

「見るところは容姿だけではありません。面接していて、しゃべり方に誠実さがなかったり、僕と目を合わせなかったり、接客業に不向きそうな男性は、たとえイケメンでも採用しません」

 むしろ、容姿に自信がない男性であっても、誠実そうな人ならば、今井さんは積極的に採用している。

「“十人十色”という言葉があるように、女性の好みのタイプも多種多様。すべての女性が、シュッとしたイケメンが好きなわけではないですからね。興味があって面接に来て、『でも、容姿に自信がないから……』と躊躇(ちゅうちょ)する男性には、『あなたの顔が好みだという女性もいると思うから、引け目に感じる必要はない』と伝えています」

 あわせて「お客様に不快な思いをさせないこと」など、細かなルールに目を通してもらい、承諾書にサインをもらう。密室で男女が肌を合わせる仕事だから、とにかくルールは厳しくする必要がある。実際に、ルールを厳しくすることで、客だけではなくキャストをトラブル等から守ることにもなるという。

女性専用風俗に登録した
男性キャストの志望動機

 そうした採用基準をクリアし、登録にいたったキャストのShunさん(40代)は、本業は歴23年のベテランAV男優。20年前、AV男優になる前に男性週刊誌で組まれていた女性用風俗店の記事を読み、「こういう店があるんだ」と、飛び込みで求人電話をかけたことが、女性専用風俗との出合いだった。

「当時は今よりもっとアンダーグラウンドな世界でした」(Shunさん)

 また、「知人の紹介でこの店を知った」と話す福士蒼汰似のShuさん(20歳)は、勤務するにあたり当初は自身の年齢をネックに感じていた。

「お客様的に、20歳の僕なんかでいいのかなと。男性用風俗店には1度だけ行ったことがありますが、そのときに『ここまで真摯(しんし)にサービスしてくれるのか』と実感し、僕にこれができるのかな、と心配でしたね」(Shuさん)

 彼のような懸念を持つキャストには、元ソープ嬢女性のほか、さまざまな業態の女性による講習会を開くことで少しずつ不安を解消してもらう。最近でも、「夏に向けローションマッサージ取り入れようと思い、ソープ嬢の方にローションで泡を作るテクニックを教えてもらった」と、今井さんは話す。

「うちの基本コースは、触られたくない箇所を聞くなどのカウンセリングを行うコミュニケーションタイムから始まり、事前シャワータイム、マッサージ、事後のシャワータイムです。このほか、有料オプションも用意しています。また、カフェや飲み屋、またはアミューズメントパークへキャストと一緒に行く『デートコース』も設定していますが、やはりメインはマッサージなので、実はいちばん参考にしているのは普通のマッサージ店の施術なんです」(今井さん)

 キャストがそろうと、ツイッターアカウントや公式HPを開設し、ポータルサイトに登録。あとは女性客が訪れるのを待つばかりだが……。

疑心暗鬼な女性客が多い
「本当にあるんですか?」と聞く人も

 冒頭の通り、そう容易にはいかなかった。

 ただ、「気になっている女性は、すごく多いのかもしれない」と今井さんが実感したのは、HPへのアクセスや問い合わせメールが、無視できないほどあったから。

 客がHPにたどり着く際の検索ワードは、「女性用風俗」。ちなみに、女性用風俗好きな女性たちの間では、「女性用風俗」を略した“女風”という言葉が定着しており、常連利用者は“女風ユーザー”と自称しているという。

 問い合わせ内容の中で大半を占めるのは、「本当にあるんですか?」だというが、一体どういうことか。

「『そもそも、おたくの店は、本当にあるんですか?ちゃんと営業しているんですか?』というまるで初歩的な問い合わせです。というのも、ポータルサイトに掲載されている風俗店でさえも、営業中と書かれた時間帯に電話をしてもまったくつながらなかったり、問い合わせメールにまったく返信がなかったりといったことが少なくないと、お客様からよく聞くんです」(今井さん)

 ネット上に情報はあるが、その存在すら疑わしい店が少なくないとなると、疑念が募るのも無理はない。

「ほかにも、『キャストはちゃんと来るのか?』とか、『ホテル代は自分で支払わなきゃいけないのか?』など、とにかく不安を感じているのが伝わります。こちらは素直に答えるしかないのですが、それでも何度も同じ質問を繰り返す方もいます。その不安感を例えるなら……昔は男性用風俗でクレジットカードを使用することに対し、“怖い”という感覚がありましたよね。今は当たり前に使用していますが、かつては『不正使用されるのでは』と勘ぐってしまういかがわしさがあった。そうした、昔の男性用風俗と同じようないかがわしさが、周回遅れで女性用風俗に漂っている、とイメージしていただければわかりやすいかと思います。だからこそ、いかに誠実にやっていくかが、この“女性用風俗ビジネス”のポイントですね」(今井さん)

 また、犯罪まがいのうわさがささやかれていることも、客がより「二の足」を踏む原因の1つとなっている。

「どうしたらお客様に気軽に来てもらえるかと考えて、『無料体験モニター』を募ろうと思ったんですよね。でもその矢先、こんな話を聞いてしまって……。無料体験モニターに来た女性が性的暴行に遭った……と」(今井さん)

 いつどの店で起きたことなのかは不明であり、単なる「作り話」の可能性もある。だが、そうした話がすべて腑(ふ)に落ちてしまうようないかがわしさが、女性用風俗にはまだ漂っているのだ。

「誠実にメールのやりとりをしたり、メディアに出て知名度を上げたりして、『真っ当に頑張っている人間がいる』ということを伝えるしか、今のところ方法はないですね」(今井さん)

女性客の年齢層は
幅広い

 そんな中、不安を乗り越え、訪れる女性客は、「年齢層もその動機も幅広い」と今井さんは言う。

「男性は『客は中年女性ばかりなのでは?』という偏見を持ちがちですが、まったくそんなことはありません。下は20代から上は50代まで、まんべんなくいらっしゃいます」(今井さん)

 現に「かなり年上の方ばかりなのかなと、ネガティブなイメージはあった」と話すShuさんも、現実とのギャップに驚いた。また、HPでAV男優であることを明かしているShunさんの元には、偏見にはまらない女性からの指名が顕著だった。

「メイン層は30~40代。『夫と長くセックスレスで辛い』など深刻に悩んでいらっしゃる方と、好奇心でいらっしゃる方が半々な印象です」(Shunさん)

 初めてついた客は、「40代半ばのお客様で、とにかく緊張した」とShunさんが言う一方、Shuさんの仕事の“初体験”は、人妻だった。

「他人の妻とこんなことをしていいの……!? と、とてつもなく緊張しましたが、寂しい一面をのぞかせていたので、『自分ができるところまで、きっちりやろう』と気持ちを切り替えました」(Shuさん)

 人妻の客は意外なほど多く、彼女たちは施術前のコミュニケーションタイムで、自身の悩みを吐露することがある。その際の会話が、のちの施術の満足度につながるという。

「おしゃべりは重要ですね。そこで満足してもらえないと、始まる前から萎(な)える一方だと思います」(Shuさん)

「おしゃべりも施術も、基本姿勢は“奉仕”。そういうことを『面倒くさい』『屈辱的だ』なんて思う男性は、この仕事は向かないかもしれません。それに、本当に体力と集中力を使う仕事で、いつも汗だくになることを覚悟しておかないと務まりません(笑)。なかには、そろそろタイムアップというところで、『もっと!』と後引くお客様も結構いますから」(Shunさん)

 ちなみに、仕事とはいえ、いやおうなしに下半身へ血は巡る。が、客から言われた意外な一言で、救われることもある。

「そんなとき、元風俗嬢のお客様に施術中、『そういう“生理現象”があったほうが、客もうれしいかもしれないよ』とアドバイスしてくれたことがありました。目からウロコでしたね」(Shuさん)

 物腰柔らかにしゃべる2人だが、初体験の客の中には現れたキャストに対し気後れする女性も多い。その原因は、“男性は、女性を選ぶもの”という古来よりの固定観念にあるのではないだろうか。

「男性が選び、女性が選ばれる。だから女性用風俗でも、男性キャストが“選ぶ”ような姿勢で接するのではないか、と不安に思う女性は当然いるかと思います。でも、うちはその辺りの意識を徹底しています。選ぶのはお客様であり、キャストであるあなたたちが選ばれる立場である、と」(今井さん)

これまで目立ったトラブルはないが…
リスクは高いビジネス

 これまでのところ、目立ったトラブルはない。

「何度も指名してくれて、会うたびに手土産をくれて、『あ、これは気に入られすぎているな』と思ったことはありますが、お客様も大人なので、それ以上のことはありません」(Shunさん)

 唯一、とある掲示板に「Aというキャストに、むりやり本番行為をされた」と書かれたが、当のAは登録したばかりの新人で、まだ一度も客についたことがなかった。事実無根だったのだが……。

「お客様と本番行為に及ぶことは当然厳禁ですが、そのあたりの不安は常につきまといます。もっとも気をつけなければならないところですね」(今井さん)

 本番を求める客には、「丁重に、心を害さないように、お断りする」(Shuさん)という。

 高いリスクを背負いつつも、キャスト的には「普通のアルバイト以上の額が入り、副業としてやるにはちょうどいい」(Shuさん)とする一方、経営的にはいまのところ、ハイリスク・ローリターンかもしれない。だが、今井さんは女性用風俗に、希望と将来性を見出す。

「エンターテインメントが好きなんですよね。そのエンタメ性を、お客様1人ひとりに提供したいと思っているんです。どんな男性と、どんな食事をして、どこでデートし、どんな風に癒やされ、誰にも言えない願望をどんなふうにかなえたいのか。ちょっとした好奇心を満たしたいのか、非日常のお姫様体験をしたいのか。そうやって、満足してくれる女性が少しずつでも増えればいいと思っています」

 そして忘れてはならないのが、女性だけではなく、ごくまれに男性の願望さえもかなえてくれることがあるのだ。

「施術中に『夫と電話しながらしていいですか』という人妻のお客様がいました。ちょっと驚きましたが、終了後、僕も旦那さまと電話で話すことに。すると、『僕はこれまで、数人の女性経験があるけど、妻は僕しか知らないんです。生涯ひとりで終えるなら……と、妻にいろいろと経験させてやりたかったから、僕が勧めたんです』とおっしゃっていましたね」(Shunさん)

 可能性未知数の性産業は今後、男性用風俗店並みの浸透力を見せるのか、果たして……。

◎取材協力:レゴリス東京


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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