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音も写すチェキ、価格120万円超…富士フイルム奇抜カメラ連発の意図

2019年06月18日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,土本匡孝(ダイヤモンド・オンライン

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富士フイルムの古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者)
新製品発表の場で、「革新的な商品を紹介し続ければデジカメ市場を伸ばす可能性がある」と語った富士フイルムの古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者) Photo by Masataka Tsuchimoto

 写真で“音”も写す――。

 光学メーカーの雄、富士フイルムの奇抜な発想に、業界関係者は「そう来たか」と感嘆の声を漏らした。

 1998年に発売し、「チェキ」の愛称で知られる富士フイルムのインスタントカメラ「instax(インスタックス)」シリーズに21日、新たに加わる「instax mini LiPlay(インスタックスミニリプレイ、市場想定価格1万7500円)」のことだ。

 チェキシリーズの製品特徴は、撮影したその場でプリントも楽しめること。2000年代にカメラ付き携帯電話が普及して「写メール」が流行ったことで一時期停滞したが、最近は「手軽にプリントできて新鮮」とデジタルネイティブな若者を中心に人気を回復。世界100ヵ国以上で販売されており、累計出荷台数は4500万台にものぼる。

 新製品では、カメラに備えた録音機能により最大10秒間の音声記録が可能。再生するために必要な情報はQRコード化し、撮影画像の隅にプリントする。そのQRコードをスマートフォン(スマホ)で読み込み音声記録を再生する。

「instax mini LiPlay」
富士フイルムが21日から販売する新時代チェキ「instax mini LiPlay」

 用途としては、例えば記念日に写真を贈る際にお祝いの気持ちを声でも伝えたり、海の写真と共に波の音を記録して情景まで思い浮かべられるようにしたり、だ。

「それならば動画ファイルをメール添付したり、SNSにアップしたりすれば事足りるのでは」というツッコミはあるが、富士フイルム担当者は「写真の現物感と、QRコードを読み込むワクワク感がある」とヒットへ自信を示す。

 いずれにせよ、インスタントカメラ市場に、革新的な新製品が投入され、市場が活気付くのは確かだろう。

 富士フイルムのカメララインナップの初級編がインスタントカメラだとしたら、ハイエンド向けは高級ミラーレスデジタルカメラ。カメラヒエラルキーの頂点故に波及効果は絶大で、メーカー各社は開発にしのぎを削っているが、ここでも富士フイルムは最近、業界関係者の度肝を抜く新製品を発表した。

お値段は軽自動車並み

 民生用で世界最大の1億200万画素――。

 既存の高級ミラーレスデジカメの約2倍の画素で、28日から市場に殴り込みをかけるのが、富士フイルムの自信作「FUJIFILM GFX100」。異次元の高画素は、同社光学・電子映像事業部の飯田年久事業部長が「やりすぎだという声も、あまりにもすごいぞという声もあるかもしれない」「神は細部に宿る」と、おどけるほどだ。

 例えば、大人数の集合写真でも一人ひとりの表情までもがはっきりと映り込む。また撮影用途として需要があるとは思えないが、お札を撮影して拡大すれば、「隠し文字」もはっきりと見えるほどだ。

FUJIFILM GFX100
富士フイルムが28日から販売する1億200万画素の「FUJIFILM GFX100」

 高画素が実現できた主要因は、ラージフォーマットと呼ばれる対角線の長さが55ミリのセンサー。他にも手振れ補正機構、4K動画撮影機能などを備え、本体の重量は1.3キロ。ずしりと重い。

 機能を追求すればこそだが、市場想定価格はなんと122万5000円。高級ミラーレスデジカメの競合であるソニー、キヤノン、ニコン、パナソニックの既存製品(いずれもセンサーの大きさはラージフォーマットより一回り小さいフルサイズ)の最高額が約50万円であることからも、その飛び抜けた価格設定が目を引く。

 飯田事業部長は「通常のカメラとしてはかなり高いが、何をもって高いと言うか。車でいえば軽自動車。それだけの価値が十分ある」とあくまでも強気だ。とはいえ、それほど市場ウケするものかと言えば大いに疑問で、富士フイルムも販売目標を明らかにしていない。

 ただし、「ハイエンド向けに強いイメージを富士フイルムが作れたのは確か」と市場調査会社BCNの道越一郎アナリスト。カメラヒエラルキーの頂点で存在感を増し、波及効果は計り知れない。

デジカメ市場落ち込みの本当の理由

 GFX100発表の場で、富士フイルムの古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者)は、「デジカメ市場落ち込みの本当の理由は、真の革新的商品がないからだ」と息巻いた。

 カメラ映像機器工業会によると、デジカメの総出荷数量は10年の1億2146万台をピークに下降線をたどり、18年は1942万台。総出荷金額で見ても08年の2兆1640億円をピークに下降し、近年は高級ミラーレスデジカメの登場で単価が上昇して底打ち感を見せるものの18年で7291億円だ。

 だが、「革新的な商品を紹介し続ければデジカメ市場を伸ばす可能性があると思う」と、GFX100を引き合いに出して古森会長兼CEOは自信満々だ。

 もちろん、何をもって革新的だと評価するかはカメラに対する思い入れや知識の程度によって各人さまざま。

 だが、これほどまでにスマホの普及でデジカメ市場が停滞する昨今、スマホとの差別化はもちろん、「素人にも分かり易く」既存カメラとの違いを新製品で打ち出すことは一つの解となろう。

 富士フイルムは業界に一石を投じた。次の一手はどう来るか。そして競合他社の打ち手にも注目が集まる。

(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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