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2億7000万ドル調達 スポーツビジネスにイノベーションを起こす総合格闘技ONE Championship

2019年06月20日 11時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ガチ鈴木/ASCII編集部
取材協力&聞き手●上野直彦 写真● 曽根田元

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上野 5年後に月1回開催が目標とのことですが、それ以外に日本でやろうと考えていることは?

 いくつかありますが、まずは基盤強化という点で修斗、パンクラスとの提携を最大活用したい。新しいコンテンツ開発、グラスルーツの拡大など、相乗効果を図る企画をしていきたいですね。

 次に、教育団体との協業もあります。今回、鹿屋体育大学と組んで、来場者の脳波を測定してどのような感情が動いているのかを研究することになりました。教育機関や大学の研究機関がONEというプラットフォームをうまく活用していただけることで社会への還元につながると考えています。これも、重要なイノベーションです。

 この他にも、メディア開発や商業的なスポンサーシップの提携なども強化していくことも考えています。例えば3月大会では、ソニーのスーパースローモーション機能を持つカメラを導入して高画質をスローモーションで見せました。このような技術開発につながるプラットフォームとしての提携も進めていきたいですね。様々な可能性が考えられます。

上野 日本における放映権はテレビ東京とAbemaTVと契約しており、AbemaTVはONEの大会を生中継していますね。

 3月の東京大会では4200万回とのことでした。同時に、エディ(エディ・アルバレスEddie Alvarez選手)、DJ(デメトリアス・ジョンソン;Demetrious Johnson選手)がONEデュー戦だったことやカードが充実していたこともあり、面白いぐらいにアメリカと日本でTwitterがバズりました。

 Twitter発信は各国の担当者が分担して行なっていますが、エディがデビュー戦で負けて、アメリカでバズりました。今度はUFC王者のDJが開始直後に若松(若松佑弥選手)に殴られて苦戦すると、さらにバズりました。最終的には、アメリカ、日本、シンガポール、オーストラリアでTwitter1位になりました。通常の放送とデジタルの連動が見事にうまくいきました。

上野 日本におけるスポーツビジネスという点で、どのような課題を感じていらっしゃいますか?

 アマチュアリズムがもたらす問題だが、ビジネスの仕組みがそれぞれの領域で確立されており共通性が少ない。歴史的に、そのスポーツ領域が生き延びるためにその中でルール化されてきたからですが、日大アメフトのタックルなど、ここ数年で明らかになった問題の原因もそこにあると思います。それを解決するためには、共通化が必要です。

 格闘技という点では、過去の不祥事により強い印象が今でも残っているのが現実です。先入観により入り口がブロックされている状態で、ONEとして一つ一つ本質を伝えることが大事だと思っています。

 この2つをしっかりやっていこうと思っています。パラダイムシフトが起きる条件が揃ってきており、スタートアップに共通したエネルギーを感じます。

上野 スポンサーシップのあり方はどうでしょうか?

 これまでのスポンサーシップのモデルは、ブランド露出のために看板をだすなど単面的でした。今後は目的を明確にしていく必要があるのではないでしょうか? スポンサーシップは、1)ブランド(イメージ強化、改善、認知の拡大)、2)ビジネス(売り上げ増)、3)ホスピタリティ(おもてなしや関係性の構築)、4)社会貢献(地域貢献や次世代貢献を含む)、5)社内(社員のモチベーション改善、離職率低下対策など)という5大原則で成り立っています。この5つの点から目標を明確にした上でスポンサー先と組む必要があります。スポンサーからパートナーに変化する必要があり、スポンサーされる側も考え方が変わると思います。

 ONEでは、26億人いる潜在のオーディエンスに対して企業がどこをどのようにターゲットしたいかによりパッケージをカスタム化しています。ギブ&テイク、Win-Winのシナリオを作るというところを進化させていかないと、成長はない。我々はそこを大切にしています。

上野 最後に、秦さんのビジョンや夢を教えてください。

 2つお話しすると、1つ目は、ビジネスとしてONEのモデルを日本に訴求して、格闘技界を活性化することです。そこでの優先順位はONEの定着とその延長としての格闘技全体の活性化です。それができたら、次はスポーツ界全体に寄与するようなモデルをどんどん広げていきたい。例えば、スポンサーシップの活用方法で最先端のことをしたり、選手の活用や試合の運営の仕方などもあります。ONEは色々なところに秘めたノウハウを持っているので、そういった要素を広げていきたい。

 2つ目として、最終的には社会への貢献だと思っています。日本は高齢化社会に入り、いじめや貧富などの問題もありますが、ONEの価値観、ヒーロー像というモデルを使って日本の社会に貢献したい。それがスポーツ本来の姿だと思います。

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