先週に続き、COMPUTEXで判明した話ということで、今週はインテルである。中山智氏のレポート」で概略はご存知のとおりだと思うので、この記事はIce Lakeと10nmに話を絞り「インテルが語らなかったこと」を紹介したい。
Ice LakeはWhiskey Lakeの
2~2.5倍の性能
Ice LakeはTDP 9WのY SKUと15WのU SKUがまずは出荷される。このあたり、基調講演やニュースリリースでははっきりと書かれていないのだが、Product BriefによればIce Lake-Y / Ice Lake-U Iris Plus / Ice Lake-U UHDの3つのSKUがあり、下表の構成になっているようだ。
Ice Lakeの構成 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
Ice Lake-Y | Ice Lake-U Iris Plus | Ice Lake-U UHD | ||||
ベースクロック | 不明 | |||||
最大ターボクロック | 不明 | 不明(おそらく4.1GHz) | ||||
コア数 | 最大4 | |||||
ハイパースレッディング | 可能 | |||||
3次キャッシュ | 最大8MB | |||||
対応メモリー | DDR4-3200もしくはLPDDR4/x-3733×2 | |||||
GPU EU数 | 最大64 | 48/64 | 32 | |||
GPUクロック | 最大1.1GHz | |||||
TDP | 9W | 15W | 15W | |||
cTDP(最小) | N/A | 12W | 13W | |||
cTDP(最大) | 12W | 25W | 25W |
ちなみに実際のモデルナンバーはいまだに未公開で、ark.intel.comで検索しても、「そんな製品はない」と言われてしまうが、なにしろ基本SoCなのでBGAでの実装で、リテールマーケットに流しようがない。したがって、OEMメーカーにだけスペックが伝わっていれば十分なのかもしれない。
ちなみにCOMPUTEXの発表記事にあるように、DellのXPSシリーズにはCore i3-1005 G1/i5-1035 G1/i7-1065 G7といったプロセッサーが搭載されるそうで、思うにこれはIce Lake-U Iris Plusがベースの製品で、G7が64EU(Execution unit:実行ユニット)、G1が48EUだと思うが、確証はない。
さて、問題は性能である。なにしろ基調講演でもニュースリリースでも、AI処理性能とGPU性能しか話をしない。基本的な構成としては、Ice LakeではSunnyCoveアーキテクチャーを採用しており、キャッシュの大容量化に加えて内部バッファもいろいろ手が入っているのがわかる。新しいところでは、Intel Dynamic Tuning 2.0が搭載されたことが明らかになっている。
こうした新アーキテクチャにより、AIXpertを利用したベンチマークで、Whiskey Lake比で2~2.5倍の性能比になっている、という話は別に珍しくはない。
そもそもIce Lakeの世代ではAVX512ユニットが拡張され、VNNI(Vector Neural Network Instructions)が追加サポートされている。
VNNIはもともとはKnights Millに搭載された機械学習向けの拡張命令で、その後Cascade Lakeにも搭載されたもので、Cascade Lake-SPの場合はResNet-50をInt 8で使った場合Skylake-SP比で約2倍の処理性能になるとされていた。今回も同じ話であるが、伸び幅が2倍ではなく2.5倍なのは次に説明するメモリー帯域がより広いことが影響していると考えられる。
この連載の記事
-
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 - この連載の一覧へ